内緒の観客席
今日はいい天気で、今は自習の時間だったから、私は庭園散策をしていた。他の子たちは駆け回って遊んでいるけど、私の今の気分はのんびりしたい気分だったので、1人で散策をしていた。
すると庭園に白い兎がいて、私は兎を追いかける決意をした。動物は可愛いし、もふもふしたもので癒されたい。私の意思を読み取ったのか、兎はぴょんと跳ねてかけていく。私もついていくと、その先にはお茶会が開かれていた。兎はお姉様の足元でぴょんぴょんはねていた。
「良かった。ちゃんとアンジュを連れてきてくれたのね。ありがとう。」
兎を抱えて撫でている彼女はロレッタお姉様だ。彼女は兎を使って私を呼んだのか。初等部の庭園から高等部に行けるんだ…。
「その兎は、ロレッタお姉様の子ですか?」
「…いいえ。私の聖女パワーで、動物たちとお話ができるの。」
羨ましい能力だとキラキラした目でロレッタお姉様を見ていると、ふわりと私の体が浮いた。何が起きているのかと慌てていると、私の体は椅子に腰かけるように降ろされた。これは誰の魔法だろうか。席の向かいには美しい美女…ルージュお姉様が優雅にケーキを食べていた。私が困惑しているとルージュお姉様は私をチラッと見た。
「…ロレッタは客人を立たせたままにするからな。せっかく来たんだ。たくさん食べていきなさい。」
ふっと笑うルージュお姉様はかっこいい…。魔王だったからかカリスマって感じがする。
「なかなか自分たちに会いに来てくれなかったから、呼んじゃったわ。今日から原作が始まるから、貴女に伝えようと思ったのよ。」
高等舎へ遊びにいく機会はなかったから、仕方のないことだと思う。それに原作がいつ始まるかも知らないし。知っていたとしても、聖女様と悪役令嬢が仲が良ければ物語は進まなそう。あ、でも、私もお茶会を知らなければ、この2人が仲が良いことは知らなかったのか。普段、2人は関わっていないのかも…。
「お話もしたいんですが…私、授業中なんですが…。」
「自習だろう?私たちも自習だ。たまにはサボっても良いだろう。」
「そうよ!だってこのあと原作の流れだし、自分の勇姿みてほしいわ!」
お姉様方に悪い道へと誘われている。美少女の言うことだし聞きたいけど、授業をサボるなんて…。先生やお兄様たちにバレたら怒られるかな。
…いや、お兄様たちは怒らないだろうな。私は生まれてから、お兄様たちに雷が落ちるように怒られたことはないし。ダメだよ、といった感じの注意は受けたことあるけど。
「大丈夫。姿や気配は私の魔道具で消せる。それに私が君と一緒にいたいんだ。……ダメか?」
美しい人に一緒にいたいと言われて、断れる人がいるのだろうか、私は断れない。いいよ、と返事をすると嬉しそうに表情を明るくさせていた。
「…まぁ、初等部の自習なんて、自由時間なんだから、怒られないわよ。それに可愛いアンジュなら可愛さで許される!」
ロレッタお姉様が何かブツブツと言っているが、ルージュお姉様に聞かなくて大丈夫と言われ、おとなしくケーキを食べた。自習時間に食べるケーキって美味しい…