03
ロレッタお姉様とお話をしながら歩いていると、セシルお兄様の姿が見えた。金色の髪に緑の瞳を持つお兄様は、おとぎ話の王子様のように優しそうな男の人だ。遠くからみてもカッコいい。
「アンジュ…良かった。初等部に向かうか考えていたところだよ。そちらは聖女様…ですか?」
セシルお兄様は穏やかな笑みでロレッタ姉様を見た。さすが攻略対象、ヒロインを落とす笑みを浮かべている。それに対してロレッタお姉様も、外向きの聖女スマイルを浮かべている。
「えぇ、ロレッタ・フローレンスと申しますわ。ロレッタとお呼びください。初等部の子が高等舎で迷子になっていたから、つい声をかけてしまって…。」
「私はセシル・クラークです。セシルと呼んでください。アンジュも心細いところに、聖女様のようなお優しい方に声をかけていただいて、救われたと思います。」
和やかムードで話が進んでいく。セシルお兄様は17歳、ロレッタお姉様は15歳。少し年齢差があるけど、穏やかに話が出来るのって素敵だよね。流石、天使の生まれ変わりと言われたセシルお兄様と、天から予言された聖女様だ。周りの一般生徒たちが、2人の笑顔を見て浄化され、涙を流していた。
「…ロレッタお姉様、今日はありがとうございました。」
「いいのよ。また高等舎に来ることがあれば、訪ねに来てくれると嬉しいわ。」
手を振って別れたけど、なかなか高等舎に行く機会なんてないしなぁ。ロレッタお姉様とルージュお姉様に聞きたいことはたくさんあるし、お茶会もしたいけど…。
うーん、と悩んでいたらセシルお兄様が抱きかかえてくれた。そして優しく頭を撫でて、私に聞いた。
「…家は男兄弟しかいないから、聖女様のような女性と話すのは緊張したかな?」
「…うん。少しだけ。でもね、また話したいなって思ってるよ。」
「それは良かった。アンジュはいい子だから、きっと聖女様と仲良くなれるよ。」
セシルお兄様の緑の瞳が優しげに細められ、美しい顔が私を優しく見つめていた。やはり、私のお兄様は天使のように美しいと思った。