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02

「ルージュ、貴女では子供を泣かせてしまうわ。」

 困っていたら、聖女様が助けてくれた。目線を合わせてにっこりと優しい笑顔で私を見た。ふわりと石鹸の香りがする優しそうなお姉様だ。


「…ちょっと待って。」

 そんな聖女様が突然、真剣な顔をして私を見た。何かおかしいところでもあるのかと不安になっていると、聖女様は私の手をとって、やや興奮気味に私に質問した。


「金髪に紫目…そしてこの天使のような可愛らしさ…貴女、アンジュ・クラーク?」

「そうです…。」

「あらあらあら、ゲームでは話は出ていたけど見ることが叶わなかった妹キャラ!!!話の通り可愛いわ!」

 聖女様に抱きつかれ、ドキドキしてしまう。憧れの女性に抱きつかれているドキドキなのか、危なさそうな人に出会ってしまったドキドキなのか、わからなくなってしまう。頭を撫でられ困っていると、悪役令嬢が聖女様の首根っこをつかみ、私から引き剥がした。なんという力業だろうか。


「ロレッタ、君は一度落ち着こう。いくら聖女補正でドン引かれないとはいえ…。」

 いえ、ドン引いていますとも。みんなの憧れの聖女様のイメージが崩れ去ったからね。私は身の安全のために、悪役令嬢の後ろに隠れることにした。


「…聖女補正が効いてない。君も転生者か?」

「普通なら何しても、聖女様は今日も神秘的だわってなるはずなのに…。よりによってルージュになつくなんてっ!!」

 聖女様が悔しそうに地面を叩いている。聖女と言うよりはチケット落選した敗者のような…。前世オタクだったんだろうな、この聖女様。見た目は優しそうで聖女様って感じなのに、残念なオタク感が出ている。


 戸惑っていると、私も席にかけるよう言われた。どうやら自己紹介をしようという流れのようだ。


「私はルージュ・カーデルマン。この世界では悪役令嬢で、前世はロレッタのライバル社で勤めていたオタクだった。」

「自分はロレッタ・フローレンス。この世界では聖女で、前世はルージュのライバル社で勤めていたオタクだったわ。自分たちは最初、勇者と魔王だったんだけど、その後も転生しては正義と悪として意見を対立させていたの。」

 うふふ、と笑うロレッタお姉様。その笑顔は聖女様だ。2人の前世も驚きだけど、最初が勇者と魔王って…。その後も転生を繰り返しているってことだよね。ロレッタお姉様は勇者と言われてもピンと来ないけど、ルージュお姉様は魔王と言われても問題なさそう。威厳があってかっこいい感じがする。


「…私はアンジュ・クラークです。前世は一般企業に勤めていて、オタクだったんですが、この世界のことは知らないです…。」

 お姉様たちに自己紹介をするのは緊張してしまい、少し小さい声になってしまったけれど、2人はきちんと聞いてくれた。優しい眼差しで見てくれて、怖いという気持ちは薄れていた。


「この世界を知らないとなると大変だったでしょう。アンジュのお兄さんたち3人とも攻略対象だし。」

 その事すら知らなかったけど、確かにお兄様たちは女性に人気があるし、キャラも濃いと思う。そもそも美形な家系だから、異性に好かれやすいのかと思っていたけど違ったようだ。攻略対象ということは、お姉様たちがお兄様たちと恋仲になることもあり得ると言うことだよね。もしそうなったら気まずいだろうなぁ。


「安心して。私たちは原作を守りつつ、友情エンドに持ち込みたいから。最悪、独り身でもロレッタと平和に話し合えればいい。」

「自分もよ。転生を繰り返したけれど、恋愛関係のイザコザって面倒だもの。友情が一番よ。」

 2人とも優しい笑顔を向けてくれた。友情が一番と言うことは、少なくとも面倒事を起こす気はないみたいだ。原作を知らないから詳しくはわからないけど、原作を守りつつ、恋愛をしない乙女ゲームってどんなものだろうか…。


「あら、そう言えば初等部の貴女がどうして高等舎に…?」

「あ、セシルお兄様を待っていたんだった。」

「…私たちは時間があるときに、ここで秘密のお茶会をしている。君もまたおいで。」

 ルージュお姉様が手を振って別れを告げると、私はロレッタお姉様に手を引かれた。どうやら人がいるところまで案内してくれるみたいだ。

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