8.学園の説明
体を撫でられている感覚で目を覚ますと、早めに起きたようで結衣は立体画面に流れるアニメを見ながら私を膝の上に乗せ撫でていた。
屋敷の中なら音を拡散型にしてアニメを見ていたが、秋山も寝ていたからかアニメの音声は許可型にされており今は結衣の耳元だけ聴こえるようになっているみたいだ。アニメの中では男女4人組は仲良く会話しながらどこかに歩いているようだった。日常物だろうか。
『では全員起きたようですので、説明を開始したいと思います』
秋山も目をこすりながらも起きたようで、妖精AIが空中に浮かび上がり話し始めた。アニメの映像は切り替わり、ラリエル魔術学園のルールと書かれたページが表示された。
『最初に一番重要なことですが、魔術学園アヴァロンの存在は機密事項であり。存在を世間に広めるような行為が認められた場合、および許可なく魔術を使用しての人の殺害は、拷問など非人道的な死刑になりますのでご注意してください』
この世界では秘匿されていたから屋敷でニュースなど見てた時に全然魔術の話がなかったのか。
「許可されたら殺されても何の罪にもならないの?」
と結衣がそこに疑問を持ったようで口を開いた。
『はい、世の中には生きる価値のない人間はいますから。ただ、どこでもいいというわけではなくコロシアムで1対1での殺し合いになります』
「……生きる価値のない人間って?」
『そうですね。劣等感から自分を磨き上げていこうとするのではなく、他人を引きずり下ろすような行為しか生まない非生産的人間の場合に許可されます。ただ、滅多に許可されることはありませんし、結局は1対1で戦うため。学園での集団でのいじめ防止と思ってくれて構いません。理解していただけたでしょうか?』
「そう……わかった」
『では次の説明に移ります。学園では寮となり、一人一人個室で生活してもらいます。毎月20万支給されますのでそれで食費や欲しいものなどがありましたらネットから好きに購入してください。 学園にいる間は学園専用のサイトでしか買ったものは届きませんので注意してください。中院 結衣様、こめかみに指を当てて試しに画面を起動してチェックしてみてください。もうすでに学園通販サイトがホームのアプリに追加されていると思います』
結衣は言われた通りこめかみに指を当て、もう一つの画面を出し。様々なアプリが並ぶ中、ドローンが段ボールを運んでいるようなアイコンをタップする。
サイトにはPCやゲーム、食品や楽器など様々なものが表示されていた。右上にすでに名前と20万と書かれた数字が入っているようで特に登録などをする必要もないようだ。結衣はこめかみを2回タップして画面を閉じる。
『そして学園では10年間、
中学:鼠、牛、虎
高校:兎、龍、蛇
大学:馬、羊、猿、鶏
と生活して行くのですが、原則として長期休暇以外学園がある島からは出ることが認められません。ただ島の中も娯楽施設がありますし、今人気の4感覚が楽しめる機器が置いてある施設も無料で利用できますので退屈はしないでしょう』
その後もAIは学園での食事方法など様々なことを伝えた。
『何か質問はありますか?』
「大丈夫、もう特にない」
『では、しばらく時間がかかりますので。またドラマやアニメなどをご覧になって時間までお待ちください』
とそこまで言うとAIが消え、先ほどまで見ていたアニメが続きから流れ始めた。しかし結衣は画面ではなく秋山の方向を見ていた
「秋山さんが来る意味ってあった?」
「……旦那様と明人様がお嬢様が一人だと不安になるだろうからって」
「そう……ごめんね。また戻らなくちゃいけないんだし」
「いえいえ、久しぶりにゆっくりテレビを見る時間が出来て私は嬉しいですよ」
そう微笑みながら言うと秋山もまたこめかみに指を当て、画面を表示させドラマか何かを見始めた。
「っふ、そっか……」
結衣もまたアニメを見始めた……さて、音も聴こえないアニメを見たところでどうしょうもないし。また寝るか……
結衣の膝の上で撫でられながら私は再び眠りについた。




