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3.彷徨う屍(別惑星と断定、太陽の描写を削除:2020/12/7)

 指が4本


 毛の色などは灰色か? 腹のほうはじゃっかん黄色いが……目の前にいるネズミと似ている配色と体。ネズミになってしまったのか? なぜ?


 今まで私はそんな話を聞いたことがない。例え、輪廻転生だとしても赤子から生まれるはずだ

だが、私の体は周りのネズミたちのサイズを見てもどう考えても同じくらい、大人である。


 それに先ほどまで全身に感じていた痛みも消えている。傷口のようなものも見えない。。あれは人間だった時の圧縮による幻肢痛? 残っていても不思議ではない……か?


 それにしても一体ここはいったいどこなんだ。木製の天井は斜面に三角になっているのでどこか家の屋根裏かなにか? 周囲は暗く物が散乱し、辺りはネズミの糞だらけ。


 ――影は操作できるのだろうか。



 私は自分の影に意識を集中させ、影を伸ばす。影は波紋のように広がり部屋のあちらこちらに転がる物体を覆い、認識出来なくさせた……普通に使える。そのまま続け、この屋根裏全体に影が伸びたところで私は異変に気づく。


 私の影は人間だったころ最後に見た草原の地平線までは明るくなければ伸びたはず。だがしかし、今この屋根裏のサイズで能力の1/20ぐらい。この家の屋根の広さはどれほどかは知らないが、落ちているコップの大きさからして普通の民家ぐらいの大きさ、横10mぐらいのサイズ。それを考慮すると私の影は半径200mぐらいしか伸びなくなってしまったようだ。


 ついでに付近のネズミは私の他に3匹ほどいることも影で分かった。


「キ!? キィー!!」


「キー!」


 突然足元が黒に覆われたせいでネズミは驚き、飛び跳ねまわっていた。影を元に戻すと、先ほどまで黒かったところを不思議に思ったのかネズミたちは足元を注意深く鼻をピクピクさせながら眺めていた。


 影の操作は距離以外に特に問題ないとして……召喚させてみるか。闇系統はファイヤーボールとか火炎放射みたいな魔法を扱うことはできない。できたとしても精々、骨を飛ばすぐらいだ。だから私は手っ取り早く戦力になる召喚を試してみる。


 ここは屋根裏だから昔に死んだネズミのアンデットぐらいは呼び出せると思う。左目に死体の眼球がない以上ここら辺に魂があるかどうかを確認することはできない。かといってここにいるネズミを殺して眼球を取るとしても衛生的に心配である。必要なければわざわざ自分の目をえぐり取ることはしない


 頭の中に魔法陣を思い浮かべ、その図形をそのまま視界の上に重ねる。そうすることで先ほどまで暗かった床に漆黒の魔法陣が浮かび上がって黒煙を舞い上がらせ、ネズミの型を取り始める。そして煙が消えた頃には魔法陣の上に1匹、目の焦点が合ってない以外は先ほど見たのと同じようなネズミが現れる。


 ……ふむ、召喚も特に問題なし。試しにアンデッドネズミの前脚と後ろ脚を操作してみたが、問題なく動くようだ。


 魔法陣を目の奥に戻すよう意識して消す。床の上から魔法陣は砂埃のように消え、当然召喚されたネズミもまた同じように消える。さて、魔法と魔術が無事使えることが分かったところで私が今どこにいるのかを確認しなくてはいけない。


 ここがバルリ帝国なのかどうかも気になる。先ほど影を伸ばした時に屋根の一部が壊れていて外の日差しが入っている箇所があった。その穴の場所に向かう。途中、何年も変化がないまま放置されていたのであろう、所々床が腐り落ち下が見える。覗いてみると下は何やら大きい人形が置かれていた。昔は何かを崇拝してたのだろうか。


 穴に付くと木材の隙間から屋根裏に差し込む光が木々の影を映し揺れ動く。


 ――嘘だ。そんな……ここは、ここはバルリ帝国でも何でもない。目に映りこんだ光景が信じられなかった。雲一つない青空、その真ん中には異色に光輝く球体が鎮座していた。


 あり得ない。そんなことはあり得ない。別の星のネズミになったということか? 一体どうゆうことだ。情報が足りない。情報が圧倒的に足りない。とにかく外に出なくては、見たところ周囲は森に囲まれ人工物はこの建物以外に見当たらない


「ミンミンミンミン」


 音が聞こえる……何の音なのだろうかと思っていると近くにあった一本の木に6本足の気持ち悪い昆虫のようなが引っ付いていた。何か攻撃してくるのかもしれないと警戒し、身構えたが……特に何もしてこない。鳴くだけで危険は特にないのだろうか。


 遠くに見える木々が奥にあるほど、合わせるかのように背が高くなっていた。ここは少し陥没しているのだろうかここにいたところ何も情報がない。私はそのまま自分の影の中に入り、2階の壁の中を通って地面付近の1階の壁に影を伸ばし降りる。振り返り、先ほどまでいた家を眺める。あちこちで木が腐り、穴だらけで今にも倒壊しそうなほどすごく古臭い木造建築の建物だった。


 そしてふと建物を見ていたら、視界の端に何やら白い箱状の物も持ち運んでいる昆虫が飛んでいくのが見える……あれもまたこの星での生物なのだろうか。他に情報もないので飛んでいる箱の物抱えている白い虫が飛んで行った方に向かって追いかけることにする。


 草をかき分けながら必死に追いかけるが白い昆虫は一向に休む気配も見させないスピードで、森の上を駆け抜けていく。


 細い(つる)や木の根など人間だったころは気にも留めなかったものたちが、今の私にはとても大きい障害物になってしまっている。


 必死に走ったが、結局はネズミの疾走。先程まで見えていた昆虫を見失ってしまった。


 もはや目的もなくなり、辺りは木々しか見えず最初の木造の家もどこにあるのかわからない。途方に暮れ、とりあえず虫が向かっていたほうに歩くがどこまで行っても森。たまに鳥のさえずりが聞こえるだけだ。 


 見たこともない木々に昆虫。それに空にある大きく光を放つ球体。すると遠くから小さい音が聴こえた


「……ザァーー…………」


 川が流れている音ということは水がある。そういえば随分走り回ったから喉が渇いてきている。その方角は向かってみると木々の間を縫うように小さな川が流れていた。トコトコと川に近づき水を飲もう頭を近づけたところで私は止まった。


 ……飲んでも問題ないのだろうか? まず第一に山から流れる水を飲んでこのネズミの体は生きていけるのだろうか? もしかしたら毒かもしれない。こんなことならあの家のネズミたちから1匹ぐらい毒味役として引きずってくるべきだったかもしれない。しかたない、川からある程度の距離が離れているところの土を掘ってそこから溢れ出る綺麗な水を飲もう。


 骨を飛ばす魔法陣を頭の中に思い浮かべ、空中に止まらせる。目に力を入れ発動に値する魔力を体から送り込む。すると魔法陣から次から次へと何かしらの動物の骨が飛び出し鋭い轟音を出しながら土に穴を開けた。……見たことがない生物の大型の骨までも混じっている。ここ付近で死んだ動物の骨だろう。


 飛び出しあちらこちらに飛び散った骨は魔法陣を消すと共に一緒に消え、先ほど開けた穴には濁った水が染み出る。それでもやはり不安は残る。まだ水も濁っているのでまず先に少しだけ前足をつけしばらく時間を置いた。


 前足の肌に異常も感じない。次に泥などが沈下してある上の透明で綺麗な水を少量、口に含み吐き出す。特に舌先にも刺激を感じない。もう一度口に少量の水を含み飲みこむ。そしてまたしばらく時間を開ける。流石にずっと川辺にいると骨にあった大型動物が襲ってくるかもしれないので近くの木に根の穴にしばらく身を隠し、休むことにする。


 目覚めたが体に腹痛やら何も異常がない。開けた穴に溜まった水を私はゴクゴクと飲む。体が水分を欲しているのが理由かも知れないが水がこんなに美味しいと感じたのは随分久しぶりだ。


 さて、水も飲んだことだし。とりあえずこの川沿いをそのまま歩いてくだるか。生物の生存には水は欠かせない。その常識が通用するか分からないが前の知識に従ってしばらく川沿いを歩くと見晴らしいい崖を見つけた


 良かった。これで地形が分かる。だがその安堵もすぐに終わった。そこから見えた光景は衝撃なものだった。

 

 空にはボロ家で見かけて追いかけていた白い昆虫が1匹どころか大量に空を飛び回り、おまけにその親玉のようなデカい昆虫まで色さまざまに飛んでいた。


 家もあるが見たこともない素材で建てられ、バルリ帝国の城とは比べ物にならないほど高い細長い建物まで立っていた。色鮮やかな絵が壁で動き回り、賑やかな音まで出していた。


 その建物の間に動くものを見つけ、目の魔法陣をズームさせ凝らして見ると人だった。特に私の星と変わったように見えない普通の人だった。よかった、人は存在する。……ただ、皆がなぜか何もない空間に向かって指をひらひらとさせていた。


 だがしかし、人……人がいることだけは助かった。建物もあるようなので知能も高いだろう。これで知的生命体すらいなかったら私はもう1度死ぬところだった。


 ふと見ると、私の立っているこの崖の下にも屋敷があり、しかも中々に大きい。私の世界で貴族が住むような屋敷のようだがこの星ではどうなのだろうか。


 そこに先ほど見た白い昆虫の1匹が何やら木製の箱のようなものを落としていき、しばらくしたら屋敷の中から使用人と思われる人が出てきてその箱を拾ってまた入っていった。この昆虫たちは使役されて荷物でも届けているのだろうか……


「……ぐぅ」


 腹の音が鳴り、自分が物凄く腹が減り始めていることに気づく。森の中で虫やら木の実やらはあったが、この星すら違うネズミの体では何が毒かどうかもわからない……うかつな物は口にしないほうがいいだろうと思っていたが、流石に限界である。


 森にある食べれるかわからないものより、人が食べている食べ物の方が安全であろう。となると、目の前の崖下の屋敷に行くしかないが……この世界ではネズミはどういった扱いを受けるのか分からない。


 神格化でもされない限りキーキー言ったところで食料はもらえないそうにないだろう。見渡してみるがネズミの像などといったものはあるようには思えない。


 もう忍び込み、食料を調達するしかない。そう決意して早急に影の中に入り、崖の中を通って崖下の地面近くに生えていた木の影から外に出た。そして屋敷の周辺に植えてある花壇の中に隠れた。これだけ大きな家ならば食堂ぐらいはあるだろう。そう思って花壇から飛び降り庭を通って屋敷に向かおうとしたが、突如目の前に光の壁が出現し、私の進む方向に塞がった。


 ――光系統の魔法使いがいたのか?! まさか同じ手で2回も死ぬことになるのか?


 急いで足元の影で地面と体を固定する。だが、しばらくたっても壁は前面にだけ展開されており、後ろには何もされていなかった。


 まさか……壁を回り込もうとしたが、動きに合わせて壁も移動し、どうやってもこの光の壁は私を奥に通らせる気がないようだ。侵入者に対して追い払うだけの魔術なのだろうか。

 試しにそこら辺にある石を咥えて壁の方に投げたが、石が当たる瞬間だけその部分の壁が消え、石だけが向こう側に落ちた。なら私も大丈夫なのだろうかとゆっくりと近づいたが鼻先の毛が壁に触れただけで一瞬にして消炭になる。


 地面の中を通って中に入ることもできなくはないが、最悪の場合中で出てきた瞬間光で消炭になる可能性すらあるからそれはできない。……もう諦めるしかないか。と思っていたところで、屋敷の中から小さい赤髪の女の子と付き添いの人と思われる紙袋を持ったメイドが出てきた。――ヤバい!


 庭の花でも見るつもりかもしれないが、私の目の前には今光の壁が出現していて目立っていてすぐに存在がバレてしまう。


 暇つぶし感覚で未知の魔法や攻撃をしてくる可能性だってある。逃げなくては……いや、このまま待って、反応を見ればこの世界のネズミに対する反応も分かる。


 幸いすぐそばに花壇から延びる花の影があるから、もしもの時はすぐに影に入り逃げられる。反応さえわかればこの後の立ち回りに大きな影響を与える。



 ……待つか。



 赤髪の少女はメイドの人と楽しそうに話しながら庭の方に歩いて来た。どうやら私の右前方にあるベンチに向かっているみたい。だが、このまま進めば間違いなく私のことが目に入る。そしてあと十メートルというところで赤髪の少女の目と私は目が合った。少女は目を見開いてきょとんとしていた。その隣のメイドは口に手を当てて驚いていた。



「縺�d繝シ繝シ繝シ�√€€繝阪ぜ繝滂シ�」


 少女は叫び声を上げ、メイドに後ろに回り袖につかまりながらこちらを指さしていた。


「縺薙s縺ェ縺ィ縺薙m縺セ縺ァ繝阪ぜ繝溘′譚・繧九→縺ッ迴阪@縺�〒縺吶�」


 掴まれたメイドのほうが少しばかり驚いている様子だったが、特に慌てていなかった。というか、この二人が何を話しているのかまる分からない。やはり別の星に来てしまった。


「荳∝コヲ縺�>讖滉シ壹〒縺吶@縲√け繝�く繝シ縺ァ繧ょキョ縺嶺ク翫£縺ヲ縺ソ縺溘i縺�°縺後〒縺吶°�溘€€繧医¥隕九◆繧牙庄諢帙>縺ァ縺吶h」


「縺九€∝庄諢帙>縺九b縺励l縺ェ縺�¢縺ゥ繝サ繝サ繝サ繝サ繝サ繝サ繝阪ぜ繝溘▲縺ヲ闖後′縺�▲縺ア縺�>縺ヲ蜊ア縺ェ縺�s縺ァ縺励g��」


「逶エ謗・隗ヲ繧峨↑縺代l縺ー蝠城。後↑縺�〒縺吶h縲ゅ€€謚輔£縺ヲ貂。縺帙�縺�>縺ョ縺ァ縺吶h��」


 何を話しているのか分からないが、先ほどの少女を見るにネズミはこの世界でもあまり歓迎されるべき生物ではないのは分かった。そしてメイドは紙袋の中に手を入れ何かを後ろの少女に渡したようだが『いい機会ですし、生物を殺すのも社会勉強ですよ』 とか言って何かを渡しているのかもしれない。


 この二人を殺すこともできるが、何も分からない現状では騒ぎを大きくする可能性もあるからやめた方がいいだろう。丁度二人とも注意が離れたし、私はそのすきに花壇の中に逃げ。影に入り屋敷を後にした。



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― 新着の感想 ―
[良い点] ネズミが主人公とは、聞いていたのですが。変わっていて独自性を感じました。 [気になる点] 聞き取れない語を、文字化けのように表現するのもありだと思うのですが。 あまりに乱発されますと、目が…
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