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10.5ショートエピソード(学生寮:地下レストラン)

「中院さんは何食べる?」


 レストランの個室に入った後、伊藤は浮かび上がるメニューの画面を楽しそうに見ながら聞く。個室に入ってくるまで学校な学生が騒いでいたが扉を閉めた途端、静かになった。防音の設定がされているわけか。その間に私は結衣に両手で掴まれ、隣にある座布団の上に置かれる。


「うーん、サラダでいいかな」


 中は木造風であり、香ばしい匂いがそこら中に漂っていた。個室のふすまにはどこだか分からない山の川が映っており時々鳥や動物が映り込む。


「っえ? 今日何も食べていないんでしょ?」


 伊藤は驚くように結衣に問いかける。


「うん」


「ほらっ、このコオロギコロッケ定食なんて絶対美味しいよ」


 伊藤はメニューを指さしながら結衣に詰め寄る。


「い、いや。大丈夫」


 そういえば、家でいた時は肉や魚ばかり食べていたがもしかして虫が苦手なのだろうか。


「え、もしかしてダイエットでもしてるの?」


「いや……していないけど」


「今は男の子が可愛くなりたいってダイエットブームだからって別に恥ずかしがらなくてもいいのに」


「いや、ちが、そんなんじゃない! ただ……」


 結衣は赤面し強く否定する。


「ただ?」


 伊藤が首を曲げ結衣の回答をにやにやしながら聞いた。


「虫は……ちょっと苦手」


「っえ、ちょっと待って、何その可愛い理由。今時食べれないの?」


 伊藤は片手で結衣にストップをかけ、もう片手で自身の体抱いてもう一度聞く。


「う、うん。だから……サラダにする」


 結衣がサラダを押して、メニューに注文しますかと注意文が出る。


「でも……サラダにも乗ってるよ? コオロギとかバッタ」


「――うそ」


 直ぐにいいえを押して、結衣は隣にあるサンプルボタンを押す。すると画面には色とりどりの野菜の上にころでもかとコオロギやバッタが素あげされた姿が乗っていた。


「っあ、後ろにじゃがいもコロッケとか虫が入ってないうどんとかあるから、それ食べる?」


「後ろ?」


 結衣はボタンを連打し、メニューが見える『はちのこ丼』『カイコの四川風炒め』『コオロギパウダー入りキツネうどん』


「じゃ、このかき揚げうどんにしようかな?」


「……そのかき揚げ、虫の足みたいのあるよ?」


 伊藤の言う通り、かき揚げには虫特有の折れ曲がったギザギザした足のようなものが見えた。


「――私は、もう食べなくていいかな……」


「もっと後ろにちゃんとあるから! ほらっちょっと高いけどトンカツ定食とか!」


「どうせみそ汁にも味が濃厚になるからって虫入ってるよ……」


「入ってないって、ほら甲殻類アレルギーのところチェックついてないでしょ」


結衣は伊藤を憐れむような眼で見る。


「虫は……海老とかカニじゃないよ?」


「いや、別に同じって言ってないし、そんな分かってるけどッ」


「大丈夫、そうゆうことにしといてあげる」


「っえ、何、私が間違ってる感じになってるの……」


 伊藤は微妙な顔をしながら結衣を見てそう呟く。


「私はかけうどんにする、伊藤さんは何にするの?」


「さっきのコオロギコロッケ定食にしようかなと思ってるんだけど……中院さんかけうどんでいいの? ちょっと質素すぎじゃない?」


「そう? いつもこれぐらいだから十分」


「一日何も食べてないのにそれだけって栄養絶対足りてない。シーフードサラダも頼むから一緒に食べよ」


「いや、いいよ」


「遠慮しなくてもいいよ。ちょうど私も油物ばかりだったし丁度いいから」

「でも……」


「いいからッ、お近づきの印として奢るから」


「あの違くて、魚もちょっと……ね」


 結衣が苦笑いしながら言い、伊藤は半目で結衣を見ていた。そういえば屋敷にいた時、魚が出た時は量が多いと思っていたがそうゆうことか。


「……それぐらい我慢して」


 躊躇なくメニューの注文ボタンを押して伊藤はシーフードサラダを注文。


「ぁぁ、苦手なのに」


結衣は伊藤を止めようと手を伸ばすけれど間に合わず、手から悲壮感を漂わせた。


「もう……好き嫌いは良くないよ?」


 伊藤が結衣の伸ばした手を持って元の場所に戻す。


「魚は臭いもん」


「シーフードサラダなんてシーチキンが乗ってるだけだから臭くないよ」


「っあ、シーチキンなの? なら大丈夫」


 結衣がそう言い終わるとドローンが丁度よく料理を運びこんでテーブルの上に皿を置いた。


「「――」」


 二人が無言で皿を見ていた。座布団の上ではよく見えないので結衣の服を掴んでよじ昇って肩までいく。そこには青魚やエビ、様々な魚の切り身が円を描くようにたっぷり乗っていたサラダがあった。


「これが……シーチキン……」


 箸で切り身を一つ掴み、結衣はそう言ってぺちっと落とす。


「……中院さん知らなかったの? 最近はこうゆうのもシーチキンって言っているよ。騙された?」


「シーチキン……」


 結衣はもう一度言って切り身を箸で掴み、落とす。


「……切り身は私が食べるよ」


 伊藤は切り身を全て自分の小皿に入れ、残った野菜を結衣に入れてあげた。

読んでくれてありがとうございます。12月31日に最新話を追加します。

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