其の七 心霊写真
初めましての人は初めまして。お久しぶりの方はお久しぶり。最近体調を崩してきつい思いをしている木下 太一です。そんなの知らねぇよと一蹴してどうぞ本編をお読み下さい。
『カシャカシャッ』
とシャッターが切れる小気味良い音連続して鳴る。
「……うん。こんなもんか。」
と俺は地元の高台から撮影した夕焼けをやっと納得した形でカメラに納めることができ、満足げに頷く。最近買い換えた望遠レンズを使ってみたが中々使い勝手が良い。中古だったからかやけに安かったし、かなり儲けた気分だ。鼻歌混じりに停めてある車に戻り、真っ直ぐに家へと向かい早速写真を現像する。
『うぃんうぃん……』
という聞きなれた音と共に写真が出てくるが様子がおかしい。
「……多くないか?」
一枚しか出してないはずなのに印刷機は既に15枚程その口から写真を吐き出している。
「おいおい、故障かぁ?やめてくれよな……。」
高かったんだから。と言いながら一応パソコンで設定ミスを確認するがそんな事はなさそうだ。首を傾げながら取り扱い説明書を取り出そうとするが、印刷機から
『ピーピー、もうすぐ赤のインクが切れます。変えて下さい。』
と機械的な音声が流れる。
「え?」
赤色のインクが?いよいよおかしい、赤のインクは昨日変えたばっかりだ。確かに夕焼けだし赤色は多く使うかもしれないけどそんなに早く切れるものか?と思い印刷機の方を見て驚いた。
「ちょ!いくらなんでも出しすぎだろ!」
既に受け止める部分に入りきらなかった紙が床に広がり始めている。慌てて印刷機の電源を切ろうとするが電源ボタンが反応しない。ならばと電源プラグを抜くが、なぜか印刷機は止まらない。とうとう
『ピーピー、もうすぐ紙が切れます新しく入れて下さい。』
とかなり入っていたはずの印刷用の紙が無くなりそうになる。いや、というかこんなに床に広がるくらい紙入ってたか?『カラカラカラ……』ともう紙がないのに印刷を続けようとする印刷機が最後に吐き出した一番上にある写真を表にしてみる。
「うぉ!」
思わずのけ反ってしまった。なぜならその写真は一面真っ赤だったからだ。まさかエラーが起きて赤色のインクで埋められたのか?と思いながら最初の方に印刷されたと思われる写真を表にしてみる。が、そこには間違いなく俺が撮影した写真が写っているだけだった。
「じゃ、じゃあ……」
と恐る恐る床に広がっている内の一枚をめくってみる。と、そこにはやはり真っ赤なインクが広がっていたのたが何やら紙の周りは不自然にインクが塗られてない。その後ろの色合いを見る限り俺が撮った写真の上から赤色のインクが塗られているようだ。
「……。」
嫌な予感がして他の写真を見るとやはりインクの広がり具合が先程の物と違う。震える手でもう4枚めくってみて、最後の写真で俺は
「ひぃ!?」
と悲鳴を挙げてしまう。それには画面全体にはっきりと宙に浮いた女の人が写っていたからだ。
「こ、これは……。」
心霊写真?と言い切らない内に写真の中の女が動く。『カタカタカタ……』と古い映画のコマが切り替わるように少しずつ顔が上がり、とうとうこちらを向く。
「……っ!」
その目は赤く光っており、真っ直ぐこっちを見つめていた。『カタカタカタ……』今度は女の右腕が上がり、こちらを指す。
「な……!ん……!」
だ……。と言い終わらない内に女の唇が動く。聞こえないはずなのに、写真のはずなのに、確かに声が聞こえる。
『う、し、ろ、の、し、ょ、う、め、ん、だ、ぁ、れ、だ、?』
『バッ!』と後ろを振り替えってすぐに後悔した。後ろには真っ黒な人影が立っていたのだ。その影は俺にその両手を伸ばし……
「うぉぉおおおお!?」
と叫んで俺はその写真を破り捨てると部屋の外へと逃げ出す。
「はぁ……はぁ……。」
と荒い息をしながら家のドアを背にしてふぅ……。と息を吐き、すっかり暗くなった空を見上げる。満天の星空を見つめながら
「明日お祓いしてもらうか……。」
と呟いた。
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「これは……ちょっと難しいですね……。」
と写真を見た近所の神主さんに言われる。
「え、何でですか?」
と俺が聞くと
「これはこの女性の生前の強い思いが現れた"悪霊"というのはわかるんですが……話を聞く限りこの女性は誰かを探してるようです。その人を探したほうが良いですね。」
と神主さんは残念そうに答える。続けて
「一通りお祓いや鎮めるための儀式はやりますが……あまり期待しないで下さい。」
と言った。
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「どうしたもんかね……。」
と俺は呟く。神主さんからは『まだ憑いてますね……少しは離れたでしょうが。』と言われ、一つおすすめだというところを紹介された。『星の山』という場所で、そこにいる神様に頼めば良いということだった。正直あんな経験をしたあとでもまだオカルト系は半信半疑であり、神様など言語道断である。が、今は信じて何とかしないといけない。いつまでも訳のわからない霊に憑かれるなど絶対に嫌だ。写真を見るとまた出てきそうで怖いので件の写真達は茶封筒に入れ込んだままである。その分厚い茶封筒を脇で抱えながら車の中でグルグルとこれからどうしようかと考えを巡らせる。休みは日曜日である今日までだし、幽霊に憑かれたままで会社になど行きたくない。結局今日中になんとかしないといけないのか……。だが神主さんが言っていた女性が探している人とは誰なのか……。そういえば。と俺は昨日の体験から一つの事を思い出す。
「あの女の霊……『後ろの正面だぁれだ?』って言ってたな……。」
子供の頃の遊びにそんなやつあったな……。一人真ん中に立って他のやつがグルグル周りを回って、一斉に『後ろの正面だぁれだ?』と言って真ん中の一人が自分の後ろにいる人を当てて、当てたらその人は周りにいき、当てられたやつが真ん中にいく。無論当てることが出来なければもう一度真ん中をやらされる。
「遊びたいのか?」
と思いすぐに考え直す。それだと誰かを探しているというのがおかしくなる。それなら……。と俺は少し今わかっていることを整理してみる。あの場所が『崖』だということ、『女性が何か強い思いを持っている』ということ、『誰かを探している』ということ、『後ろの正面だぁれだ?』そして……。
「あの黒い影……か。」
なんとなく嫌な予感がするが、今は気づかないふりをして車に乗り、神主さんから教えてもらった『星の山』へと向かう。それは案外近くにあった。こんなところに山があったのか、と驚きながら、少し肌寒い冬の昼下がり、ゼェゼェ言いながら山を登り、2時間程かけてようやく山頂にたどり着く。そこには古びた小さな祠が一つあり、その奥に落下防止用の柵が張ってあるのだが、祠と冊というのがどうにも合ってない。柵があるということは誰かがここを管理しているのだろうか?そんなことを考えながら、祠へと近づいてみる。すると
『何じゃ何じゃお主、まさか儂にその茶封筒の中身を押し付けようという訳じゃなかろうな?』
という山中に響くような不思議な声が響く。
「だ、誰だ!?」
またあの幽霊が何かしてくるのではないかと身構えるがそんな事はなく、
『おいおい、儂は幽霊などではないぞ、この山の神をやっておる者じゃ。失礼なやつじゃのぅ。用があるんじゃろ?まぁ、その茶封筒の中身については一切断らせてもらうがの。』
と声は案外フレンドリーに、しかし衝撃的な事を言う。
「そんな……貴方なら何とかしてくれるって聞いたのに……。」
と俺が言うと
『そうか、宛が外れて残念じゃったの、そいつは呪いの道具の類いじゃろ?悪いが儂も変な呪いを押し付けられたくない。ヒントをやるからお主で解決してくれ。』
と返される。
「そ、それなら貴方がやってくれよ、方法を知って……」
るんだろ?と言い終わらない内に
『アホか。』
と一刀両断される。
「あ……ほ……?え?」
と俺が困惑していると
『言ったじゃろう?そいつは呪いの道具じゃと、 "どういう経緯かは知らん" が、その只の写真じゃった物が呪いの道具へと変貌しておる。お主は別に呪術に詳しいわけじゃなかろう?』
と言われる。
「ま、まぁ……。」
と頷くと
『なら罠じゃな、誰かが……それも相当趣味の悪いやつの作った罠に引っ掛かったんじゃろう。同情はするがその変な呪いを貰うのはゴメンじゃ。』
とため息のような音を混じらせながらそう言う。
「じゃあどうすれば?」
と首を傾げると声はめんどくさそうにこう言う。
『じゃからヒントをやると言っとるじゃろう。その女性の霊は趣味の悪い誰かに利用されとるだけのようじゃし、何とか説得せい。』
「随分と適当ですね!?」
と俺が叫ぶと
『仕方なかろう。儂にも他人の写真を呪いの道具にするための方法などわからん。取り敢えずその女性の霊が成仏すれば呪いも消えるじゃろうて。』
と軽くあしらわれる。
「う、うーん、手掛かりがわかっただけまし……なのか?」
いや、むしろ『女性の霊を成仏させる。』という振り出しに戻ってる気がする。
『さて、そろそろ行ってくれんか?わざわざドラと木霊たちを避難させたんじゃからのぉ。』
と声が言うので
「ひ、避難?そんなにヤバイんですか?これ……。」
"どら"や"こだま"というのが何者かは知らないが神様が逃がすという状況はかなりやばいのではないか。
『さっきから言っておるがその呪いの道具は完全に"未知"じゃ。呪いがどんなものか、又どうやって写真が呪いの道具になったのかがわからん限り、不用意に何人も関わらない方が良い。』
と軽い調子で返され、少し安心したものの不安は拭えない。
「そ、そうなんですか……。それじゃあついでといってはなんてすが……。神様はこの呪いを仕掛けた人物に心当たりは?」
と尋ねると
『さぁの、趣味の悪いやつということだけはわかる。じゃがそれだけじゃ。歴史上に呪いを操る者は国内外問わず何十人もおった上に、現代まで影響を及ぼす者も少なくはなかった。それにそやつらは全員もうこの世にはおらん。あの世からこちらに干渉されとるのなら閻魔のやつの責任じゃがの……。ふむ、いっそ全てあやつに押し付ければ楽なのでは?日頃の鬱憤も晴らせるし一石二鳥……。』
と何だか(いるのかどうかもわからない)閻魔大王に申し訳ない展開に進もうとしているので
「あ、あの、それで女性の霊を成仏させるには具体的にどうすれば?」
と話を切り替える。
『そうじゃなぁ、その女性の未練を消せば良いのではないか?儂はどちらかというと呪いより加護が得意なので何とも言えんが……。儂にしてもその女性の霊がいつまでも誰かに利用されとるのは癪じゃ。さっさと解決せい。』
と言われ、続けて
『これ以上森から木霊を離すと森も木霊も危険じゃから取り敢えず今日のところは帰ってくれ。』
と半ば無理矢理森から追い出される。さっさと解決せい。など、かなり目茶苦茶のことを言われたが、確かにさっさと解決しないといけない。霊のついたまま会社に行き、会議中に呪いが発動し、有らぬ噂など立ってしまえば退職させられてしまうかもしれない。今のところあれ以来何も起こってはいないが……。そんなことを考えながら車を停めていた山の近くへと戻り、車のドアを開けようとした瞬間、後ろから嫌な気配を感じ、『バッ!』と振り替える。するとそこにはあの黒い人影がいて、少しずつこちらに歩いてきているのが見えた。それはゆっくりとした歩みだったが、もしかしたら昨日からずっと少しずつ歩いてきていたのかもしれない。しばらく固まっていたものの
『に、げ、て、。』
という言葉で我に帰る。急いで車に飛び乗り、急いで家に向かう。家の駐車場に車を止めると後ろを振り返らずに走って家のドアを開け、中へと逃げ込む。『バン!』と勢いよく扉を閉めて、
「ふぅ……。」
と壁に寄りかかって崩れ落ちる。手元にある写真の入っていた茶封筒を見てみるとのりで封をしていた茶封筒の口がスッパリとハサミを使ったかのように切られてしまっている。
「あの幽霊……。」
『逃げて』と言った。どういう事だ?もしかして俺を助けようとしていたのか?もしかしたらこの写真が茶封筒に入っている間は女性の霊も見えないがあの近づいてきている人影も見えないのか?
「……どっちを信じる?」
そもそもいつから封筒の口が切れていたのかわからないし、もしかしたらあの神様な声なんかも女性の霊が見せている幻なのかもしれない。そうなると女性の霊が俺を人影から助けようとしているのか人影が俺を女性の霊から助けようとしているのかわからない。目を瞑りながら色々と考えたが
「あぁ、くそ!何でこうなったんだよ!」
意味がわからず、むしゃくしゃして『ゴン!』と床を叩く。すると
「ニャーゴ。」
と猫の鳴き声が聞こえる。ふと目を開けると目の前には
『チリンチリン♪』
と首に掛けた軽快な鈴の音を響かせる黒猫がいた。その首には鈴だけでなく、年代物の首飾りのような物も掛けてある。
「ね、猫?一体どこから……。」
呪いの一環だろうかと警戒したが、この猫から嫌な気配は感じない。猫はテクテクと俺の手元にある茶封筒へと歩いてくるとその右前足を器用に使い、中にある写真を引っ張り出す。
「お、おい、危ないぞ。」
と猫を写真から離そうとしてその猫の尾が二つに分かれており、その先に青い鬼火のようなものがちらついているのに気づく。
「化け猫……?」
と呟く俺を無視し、化け猫は
「……そうか、実に君らしい……。」
と喋る。
「しゃべっ!喋った!?」
と俺が動揺していると化け猫は
「名乗り遅れた。私はリストリゴーヌ。見ての通り猫又だ。まぁ、化け猫でも構わないが……。」
と冷静に自己紹介する。唖然とする俺に対しリストリゴーヌと名乗った化け猫は
「貴方はこの写真の呪いに悩まされている。違うか?」
と尋ねてくる。
「ま、まぁ、その通りだが……あの幽霊の事を知ってるのか?」
と俺が言うと
「もちろん知っている。でなければこんなにでしゃばらない。それともう一つ……。」
とリストリゴーヌは勿体ぶってから次のように続ける。
「あの人影についても知っている。」
「ほ、本当か!?」
と俺が食いつくと
「あぁ、本当だ。が、それについて言及は出来ない。すまないな。」
と言われる。が、俺が気になるのはそこではない。
「何とか出来るのか?」
俺が必死に聞くと
「出来る。だが、少し協力してもらうぞ。」
とリストリゴーヌは答える。
「上等だ。どんなことでも協力してやる。」
と俺が返すとリストリゴーヌは
「ありがとう。ではまず、少し怖い思いをしてもらうが良いか?」
と言う。
「怖い思い?」
「あぁ、一度写真を見つめてくれ、それであの人影は出現する。後は任せてくれればいい。」
とリストリゴーヌは自信たっぷりにそう言う。
「そうか……信じて良いんだよな?」
と俺が尋ねると
「あぁ、存分に信じてくれ。くれぐれも写真に飲まれないようにな。」
とリストリゴーヌは言う。
「飲まれたらどうなるんだよ。」
と聞くと
「……知らない方が良いだろう。結果を知っていると怖さが増す物もある……。知らぬが仏だ。」
とはぐらかされる。その忠告にゴクリと喉をならしながら意を決して写真を手に取る。そして一瞬、写真を視界に入れた途端、
ゴゥ!
という強風の吹くような音と共に黒い風が辺りを舞う。
「う、ぉぉおおお!?」
そして目の前に広がる何かの映像。初めに一人の女性と家族と黒猫がどこかで楽しそうにお菓子を食べている映像。それが何枚か続いて燃える家のような場所と立ち尽くす女性。カシャリ。と燃える家がアップになり、そこで黒猫が燃えているのが見える。そしてそれが見えると同時に何か黒い感情が流れ込んでくる。
これは……悲しいとかそんなのよりも、憎悪?まさか女の幽霊がこの女性で、誰かに家を焼かれて……その人間を探している?いや、それだとあの人影の説明がつかない。そしてあの黒猫は……!
「っ!……危なぇ。」
もう少しで引きずり込まれる所だった。はっ。として辺りを見渡してみると、写真は全て消えており、代わりに全身の透けた女性が嬉しそうにリストリゴーヌを抱いている。そしてこちらに気づくと愛おしそうにリストリゴーヌの頭を撫でるとそっと地面に置き、こちらを向いて優しく笑い、その唇を動かす。
『あ、り、が、と、う。』
そう言って女性はスゥー。と薄れていく。完全に消えて無くなると、リストリゴーヌが
「……さて、君は何かしら見たはずだ。その説明をすることも出来るが……。」
と話しを切り出す。が、俺は
「いや、あれよりもこの呪いの事を教えてくれよ。」
と言う。なんとなくあの話しは聞かない方が良いような気がしたからだ。
「そうだろうな、わかった。一つずつ、話していこう。」
そう言うとリストリゴーヌは少しずつ話し始める。
「まず、君が見たあの女性の霊は私の"飼い主"であり、家族であった女性の物だ。詳しくは言えないが、彼女は家を焼かれ、憎悪を募らせて"感情が死んだ"。それを誰かが利用し、彼女の死んだ感情の一つである『優しさ』を使い、この呪いを作った。目的は……恐らく誰かを復活させるためだろう。あの人影に追い付かれると誰かにとってかわられてしまうようになっていたらしいからな。」
とリストリゴーヌが少し間を空けたので
「らしいって……。誰かから聞いたのか?」
と俺が尋ねると
「あぁ、彼女から聞いた……。」
とリストリゴーヌは答える。
「彼女って言うと、あの女性の霊から?」
と俺が聞くと
「あぁ、そうだ。良かったな、利用されたのが彼女の『優しさ』で、『怒り』なんかを利用されていたら問答無用で殺されていたかもしれないぞ。」
とリストリゴーヌは真剣な声色で言う。俺はゴクリと喉を鳴らし、
「っていうか、感情だけで人の体を乗っ取るような呪いを作れるあの女性って何者だよ。」
と言う。それを聞いたリストリゴーヌは少し黙り混んで
「そうだな、君はここまで深く関わってしまった……教えるのが道理だろう。」
と言う。そしてこう続けた。
「彼女の名前はRegina delle streghe。日本語で、『魔女王』と呼ばれる。今も尚生き続ける。史上最強の魔女だ。」
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「え?神様は呪いの事全部知ってたんですか?」
とドラが驚いたように神様に言う。
『まぁの。魔女王のことも気づいておった。』
と神様がさも当たり前というように返すと
「じゃあなんであの人を助けなかったんですか?」
とドラが不服そうに言う。すると神様は
『リストリゴーヌが動いておるのは知っておったし、任せておこうかと思っての。じゃがお主たちを逃がしたのは妥当な判断じゃと思っておるぞ?何しろあれは関わる人数が増えれば増える程関わった者を巻き込んで強力になっていく物じゃったからの。まさに知らぬが仏というわけじゃ。』
と言う。それを聞いたドラは
「それはそうと神様……。」
と神様の祠の方に向き直る。
『ん?どうしたんじゃ?』
と畏まるドラに神様が不思議そうに言うと
「知らぬが仏って、上手いこと言ったつもりなんでしょうけどあんまり上手くありませんよ。」
とドラが言う。神様はなんとなく気の抜けた声で
『ほっとけ。』
と返した。
ここまでお読み頂きありがとうございます。ようやくストーリーが進みました。そうです。やっとです。もう一生進まないかと言うほどスローペースでしたが進んでホッとしております。それではまた次回お会いしましょう。※更新は不定期です。