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白銀のヒーローソウル【WEB版】  作者: 鴨山 兄助
第四章:実家と盗賊王と眩き巨人
110/127

Page101:勇気! 黒白のコンビネーション

 サン=テグジュペリの街。

 爆煙が立ち込めるなか、レイ達はウァレフォルと激しい戦闘をしていた。


「次はコレだァ!」


 魔力を帯びた獅子の爪がアリスに向けられる。


「アリス!」


 近くにいたレイは咄嗟に魔力障壁を展開。

 ウァレフォルの爪をなんとか防いでみせた。


「大丈夫か、アリス?」

「うん。問題なし」


 アリスは無事だが、魔力障壁はそうともいかない。

 固有魔法で強化されている筈の魔力障壁だが、ウァレフォルのパワーの前には完全に機能していなかった。

 瞬く間にひびが入り、砕けてしまう魔力障壁。

 それでも回避する隙くらいはできたので、レイとアリスは攻撃を避けた。


「ハハハ! こんな壁じゃあ時間稼ぎくらいしかできねェぜ!」

「じゃあ今度はこっちから攻めてやる!」


 そう言うとレイはコンパスブラスターのグリップを操作した。


形態変化(モードチェンジ)棒術形態(ロッドモード)!」


 ウァレフォルの身体は硬く、再生能力が高い。加えて攻撃力もある。

 なのでレイは、ある程度の距離を保って戦える棒術形態を選んだ。


「どらァァァァァァ!」


 コンパスブラスターを振るって、ウァレフォルに攻撃を仕掛けるレイ。

 しかしウァレフォルもそう簡単にはダメージを受けない。

 襲いかかるコンパスブラスターを、ウァレフォルは獅子の爪で次々にいなしていった。


「ハハハ、遅ェ遅ェ! そんなんじゃアクビが出るぞ!」

「どらァ! そうかい。じゃあ目ェ覚まさせてやるよ!」


 レイは仮面の下で不敵に笑う。

 戦う相手はレイ一人ではない。ウァレフォルがそれに気づいた時には、一瞬遅かった。


「後ろかッ!」

「ブレイズ・ファング!」


 炎の牙を生やしたフレイアの籠手。

 その一撃が、ウァレフォルの背中を襲った。

 業火の牙が背中を抉る。

 凄まじい激痛に、ウァレフォルも苦悶の声を漏らしてしまった。


「グゥッ! テメー!」

「アンタの相手はアタシ達全員よ!」

「そういう事だ。油断は禁物だぜ」

「そうか。いいだろう……俺様も本気でテメーらと遊んでやる」


 ウァレフォルは蠍の尻尾を激しく振るう。

 尾の先には毒がある。フレイアは咄嗟に距離を取った。


「一人づつなんてケチな事は言わねェ。まとめて全員ぶっ殺してやる!」


 そう言うとウァレフォルは蝙蝠の羽を羽ばたかせて、空へと飛んだ。


「アイツ、上から攻撃する気か!」

「その通りだァ!」


 レイ達から距離を取り、獅子の爪に魔力を溜めていくウァレフォル。

 そして数秒の後、ウァレフォルは地上に向けて斬撃を放ってきた。


「うわッ!?」

「キャッ!」


 レイとオリーブが、斬撃を間一髪で回避する。

 それはフレイアとアリスも同じ。

 しかし空中という攻撃の届かない位置から繰り出される、ウァレフォルの斬撃は止まらなかった。


「まだまだいくぞォ!」


――斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬!!!――


 雨霰のように連続で繰り出される斬撃。

 レイは魔力障壁を展開し、アリスと共に防御。

 オリーブは固有魔法使って防御力を強化。

 そしてフレイアは刹那の見切りで回避していった。


「クッソ。障壁が持たねーぞ」

「あの距離じゃ、アリスの魔法も届かない」


 体力のあるフレイアはともかく、オリーブの固有魔法はそう長くは保たない。

 仮にコンパスブラスターを銃撃形態(ガンモード)にして反撃を試みても、ウァレフォルに大ダメージを与えられる可能性は低い。

 このままではジリ貧。いや、致命傷を負わされるのも時間の問題である。

 何か策はないか。レイは思考を高速で巡らせていた。


「ハハハ! 怯えろ怯えろ! そして死ねェ!」


 ウァレフォルの攻撃が激しくなってくる。

 全力を出して展開しているレイの魔力障壁も限界が近い。

 オリーブの魔法もそろそろ時間切れだ。


「クソッ! どうすれば」


 レイが強い焦りを覚えた次の瞬間。


――弾ッ! 弾ッ! 弾ッ!――


 三発の魔力弾が、ウァレフォルの身体に当たった。


「あーん? 誰だ?」


 一旦攻撃を中断して、魔力弾の出先に目をやるウァレフォル。

 レイ達も防御体制解いて、ウァレフォル同じ方向を見た。

 そこに居たのは二挺の銃型魔武具(まぶんぐ)を手にした、白髪の少女。


「マリーちゃん!」

「オリーブさん、みなさん。お待たせしましたわ」


 ウァレフォル攻撃したのはマリーであった。

 レイは思わず呆気に取られてしまう。


「マリー、お前まだ戦えないだろ!」

「戦えるかどうか。自分の道は自分で決めますわ」

「いや、ローレライのダメージが」

「ローレライも協力してくださってます」

『ピィピィ!』


 白い獣魂栞(ソウルマーク)からローレライの気合いが入った声が聞こえる。

 どうやら本当に戦うつもりらしい。

 マリーは真っ直ぐとウァレフォルに視線を刺す。


「貴方がウァレフォルですね?」

「そういう嬢ちゃんはサン=テグジュペリの娘か。まさか獲物から来てくれるとはなァ」

「貴方のような下品者の獲物になど、なるつもりはありませんわ」

「ほう? じゃあ何故ここに来た」

「わたくしの故郷を、領民を……そして何より、わたくしの仲間を傷つけられました! 貴方を討つ理由は、それで十分です!」

「ハハハ、面白れェ! 新しい玩具になってくれるって訳か」


 空中で嘲笑を上げるウァレフォル。

 マリーは静かに、自分の中で怒りを燃やした。


「オリーブさん! 受け取ってください!」


 マリーは持ってきたイレイザーパウンドを、オリーブに投げる。


「よっと。これ、私のイレイザーパウンド」

「屋敷から持ってまいりましたわ」


 オリーブの元に歩み寄りながら、マリーが簡単に説明する。


「オリーブさん。あの賊を討つために、力を貸していただけませんか?」

「もちろん! マリーちゃんの故郷に酷いことしたもん!」

「ありがとうございます。オリーブさん」

「オイオイ、俺達を忘れるなよ」

「レイに同じく」

「アタシもアイツを倒すつもりだからね!」


 レイ、アリス、フレイアもマリーに協力の意志を示す。

 それを聞いたマリーは優しく微笑み「ありがとうございます」と言った。

 そして再び、マリーは空中のウァレフォルを見る。


「サン=テグジュペリでの蛮行の数々、償う覚悟はよろしくて?」

「俺様の罪は誰にも裁けねェよ。俺様は盗賊王だ!」

「貴方のような王など、貴族として認める訳にはまいりませんわ! 行きますわよ、ローレライ!」

『ピィ!』


 マリーはグリモリーダーと白い獣魂栞を取り出す。


「Code:ホワイト、解放!」


 呪文を唱え、獣魂栞をグリモリーダーに挿入する。

 そしてマリーは十字架を操作した。


「クロス・モーフィング!」


 魔装、変身。

 マリーの全身に白色の魔力が纏わられ、アンダースーツとローブを形成していく。

 そして最後にフルフェイスメットを形成して、変身完了だ。


「ウァレフォル、貴方をここで討ちます」

「ほざけ。ゲーティアの悪魔に勝てると思うな」

「では試してみますか、ミスター?」


 マリーは二挺の銃型魔武具、クーゲルシュライバーを取り出す。

 そして固有魔法の発動を宣言し、ウァレフォルに向かって連射し始めた。


――弾ッ! 弾ッ! 弾ッ! 弾ッ!――


「ハハハ! 当たらねェ、当たらねェ!」


 次々に撃たれる魔力弾。

 ウァレフォルはそのことごとく容易に回避していく。


「クソッ! アイツの機動力は高すぎる!」

「心配無用ですわレイさん」

「そう言うならもうちょっと狙って撃てよ!」

「ですから、心配無用です。全て狙い通りですわ」


 マリーの撃った魔力弾。

 それらはウァレフォルに当たらず、空中で魔水球(スフィア)と化して滞空していた。

 それに気づかず、ウァレフォルは嘲笑しながら回避し続ける。

 気づけば空中には、無数の魔水球が設置されいた。


「オイオイオイ、射撃は上手じゃないのかァ?」

「そんな事はありませんはミスター。もう貴方は、わたくしの射程圏内です」

「なに?」


 訝しげな顔をするウァレフォル。

 それを気にせずマリーは、オリーブにアイコンタクトをした。


「そーれ!」


 マリーの思惑を感じ取ったオリーブ。

 彼女はイレイザーパウンドの重量を上げて、空中のウァレフォル目掛けて思いっきり投擲した。


「当たるわけねェだろ!」


 当然ウァレフォルは回避する。

 しかしその回避先には、魔水球が設置されていた。


「言った筈です。既にわたくしの射程圏内だと」


 魔水球に触れたウァレフォル。

 次の瞬間、魔水球が破裂し、巨大な牙となってウァレフォルを襲った。


「な、なんだァ!?」

「固有魔法【水球設置(すきゅうせっち)】。罠を張るのは、わたくし達の得意技なのですわ」


 水の牙に蝙蝠の羽を貫かれるウァレフォル。

 急いで攻撃から逃れるも、空中にはまだ無数の魔水球がある。


「落としなさい! ヴァッサー・パイチェ!」


 魔水球から放たれる無数の水の鞭。

 それらはウァレフォルの動きを拘束した上で、苛烈な攻撃を加えていった。


「ぬォォォォォォォォォォォォ!」


 苦悶の声を上げて、地面に叩き落とされるウァレフォル。

 自分が舐めていた貴族の娘に落とされた。その事実が、ウァレフォルのプライドを酷く傷つけた。


「テ、テメー……楽に死ねると思うなよ」


 起き上がって殺意を放つウァレフォル。

 全身から魔力を放出し、何がなんでもマリーを殺すという意志を示していた。


「引き裂いて、頭から喰らってやる!」


 駆け出すウァレフォル。

 しかしマリーは冷静に動かなかった。

 この後の展開予測できていたからだ。


「マリーちゃん!」


 オリーブが二人の間に割って入る。

 それがウァレフォルの怒りに、更なる火をつけた。

 

「邪魔だァァァ!」

「邪魔なのはあなたです!」


 オリーブは拳に力を込める。

 接近同時に、オリーブはウァレフォルの腹部に渾身のパンチを叩き込んだ。

 短い声を漏らし、動きを止めるウァレフォル。

 だが直後に、その顔は不敵に歪んだ。


「邪魔だって言っただろ」


 ウァレフォルの蠍の尻尾。

 それがオリーブに向かって刺された。

 猛毒の尻尾で殺す。ウァレフォルはそれが成功したと思った。

 しかし、尻尾の針はオリーブの肉体に届かなかった。


――パキン!――


 短い音を立てて、針が折れてしまったのだ。


「なんだと!?」

「固有魔法【剛力硬化(ごうりきこうか)】。こんな攻撃なら全然効きません!」


 一瞬の動揺が隙になった。

 オリーブはウァレフォルの尻尾を握って、力任せに振り回した。


「飛んでけー!」


 ブチリッ!

 蠍の尻尾が千切れる共に、ウァレフォルは後方の壁に強く叩きつけられた。

 強いダメージを受けて、ウァレフォルは上手く動けないでいる。


「マリーちゃん!」

「分かってますわ。一緒に行きますわよ!」


 マリーはクーゲルに、オリーブはイレイザーパウンドに獣魂栞を挿し込んだ。


「「インクチャージ!」」


 マリーのクーゲルシュライバーに大量の水属性魔力が集まっていく。

 そしてオリーブのイレイザーパウンドにも、黒色の魔力が集まっていった。


「こんの、クソ(アマ)ァ……!」

「ッ! 今だ、いけ二人とも!」


 レイの叫びに合わせて、オリーブはウァレフォルに向けて駆け出す。

 そしてマリーはクーゲルとシュライバーの引き金を引いた。


「シュトゥルーム・ゲヴリュール!」

「タイタン・スマッシャー!」


 凄まじい螺旋水流の超砲撃。

 そして強力無慈悲な力の一撃。

 その両方を、ウァレフォルは真正面から食らってしまった。


「グォォォォォォォォォォォォォォォ!!!」


 凄まじい攻撃の二重奏。

 それらがもたらす破壊力は伊達ではない。

 遠距離射撃のマリーは問題無しであったが、近距離技のオリーブは、反動で吹き飛ばされしまった。


「キャッ」

「オリーブさん、大丈夫ですか!?」

「うん。へいき」


 慌ててオリーブの元に駆け寄るマリー。

 レイ達も後に続いた。


「二人ともスッゴい攻撃だったね〜」

「俺らの活躍持ってかれちまったな」

「ふふ、ごめんあそばせ」

「えへへ、頑張った」


 マリーもオリーブも、自然に明るく振る舞う。

 そこに嘘も偽りも無い。

 レイは二人が恐怖を乗り越えた事を強く実感した。


「オリーブ。傷を治すからじっとしてて」

「ありがとうございます」


 特にダメージを受けているオリーブに、アリスが治癒魔法をかける。

 これでひと段落ついたか。

 レイ達がそう思った直後、瓦礫の中から獅子の腕が伸びてきた。


「舐め、るなよ……これしきの……これしきのことでよォ」


 聞こえてきたのはウァレフォルの声。

 まだ生きていたのだ。

 レイ達は急いで戦闘体制に入る。


「オイオイ。ゲーティアの悪魔は頑丈過ぎだろ」

「なんで一発でやられてくれないの!?」


 ガミジンの時もそうであった。

 レイとフレイアは思わず文句を言ってしまう。

 

「この俺様を……盗賊王を、舐めるなァァァ!」


 ボロボロの身体を再生させて、ウァレフォルは瓦礫の中から復活をしてきた。

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