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白銀のヒーローソウル【WEB版】  作者: 鴨山 兄助
第四章:実家と盗賊王と眩き巨人
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Page94:ハグレ操獣者

 森の奥から飛び出てくるのは、狼、熊、飛竜といった魔獣の数々。

 それを従えているのは、当然盗賊たちだ。


「テメェら、よくも仲間を!」

「ただで済むと思うなよ!」

「わーお。典型的な小悪党のセリフだな」


 レイが僅かばかり関心していると、盗賊たちはボロボロのグリモリーダーを取り出した。


「「「クロス・モーフィング!」」」


 盗賊たちは見た目地味な魔装に身を包む。

 操獣者(そうじゅうしゃ)へと変身したわけだが、あまり強そうには見えなかった。


「なんか、見た目シンプルすぎない?」


 フレイアも思わず疑問を口にしてしまう。

 だがレイにはおおよその見当はついていた。


「多分どっかで奪ってきたグリモリーダーをそのまま流用してるんだろ。基本的にグリモリーダーは所有者の専用器になるよう設定されているからな」

「あっそっか。本来の所有者じゃないから、基本装備しか出ないんだ」

「そうだ。だから地味なんだよアイツら」


 何度も地味と言われて黙っている盗賊ではない。

 盗賊たちは各々の魔武具(まぶんぐ)を取り出し、レイ達に襲い掛かった。


「舐めてんじゃねーぞ! ガキがぁぁぁ!」

「遅い」


 剣型魔武具を振り下ろしてくる盗賊。

 だが今のレイからすれば、脅威ではない。

 軽々と剣を躱し、レイはコンパスブラスター(剣撃形態(ソードモード))の峰を叩き込んだ。


「グフッ。て、てめぇ」

「変身するなら魔本の整備くらいちゃんとしとけ。もう魔装が破けてるじゃねーか」

「うるせぇぇぇ!」

「インクチャージ」


 激高する盗賊を無視して、レイはコンパスブラスターのグリップに獣魂栞(ソウルマーク)を挿入する。

 そのまま逆手持ちに変え、コンパスブラスターの峰を叩き込んだ。


銀牙一閃(ぎんがいっせん)


 やる気のない声で、最小威力の必殺技。

 しかしその性質故、盗賊の体内には破壊エネルギーが侵入。

 次々に内側で炸裂していった。

 喰らった盗賊は、短い声をあげて、その場に倒れこんだ。

 当然変身も強制解除である。


「な、なんだコイツら」

「変身してるのに、一瞬で!?」


 仲間が一瞬で倒された異に驚いたのか、盗賊たちの間に動揺が走る。

 できればこのまま自首して欲しいと思うレイだったが、そう上手くもいかない。


「お、おめぇら! 数で押し切れ!」


 やはり先ほどの盗賊たち同様、退くという選択肢は捨てているようであった。

 残っている盗賊は約十人。いずれもハグレ操獣者である。

 盗賊たちはいっせいに襲い掛かってきた。

 

「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」」

「数が多いわね。アリス」

「うん。まかされた」


 フレイアに言われて、一番前に出るアリス。

 その右手には、ミントグリーンの魔力が溜まっていた。


「まずはそのチビから相手かァ!?」

「コンフュージョン・カーテン」


 舐めてかかる盗賊たちに、アリスは淡々と右手に溜めた魔力を散布する。

 強力な幻覚魔法が込められた霧。それをまともに受けた盗賊たちは身動きが取れなくなった。


「な、なんだこれ!?」

「身体が、動かねえ」


 混乱する盗賊たちを放置して、アリスはフレイアに話しかける。


「じゃあフレイア。後はおねがい」

「オッケー! ブレイズ・ファング!」


 フレイアは右手の籠手に炎を溜めて、盗賊たちを次々に殴り飛ばしていった。

 当然身動きが取れない盗賊たち。

 回避する事もできず、全員大きな的となって吹き飛ばされていった。

 変身が強制解除され、気絶する盗賊たち。

 レイは逃げられないように、全員をマジックワイヤーで縛っておいた。


「さて、洞窟方面に行くか」

「そうね」

「うん」


 レイ達は盗賊たちが来た方向。洞窟方面へと駆け出した。

 当然その道中にもハグレ操獣者たちが襲い掛かってくる。


「銀牙一閃!」

「エンチャントナイトメア」

「ブレイズ・ファング!」


 ハグレ操獣者を軽々と倒していくレイ達。

 そうこうしている内に森を抜け、洞窟の入り口前まで到達した。

 

「ここが賊のアジトってやつか?」


 軽く見渡しただけでもよろしくない物が見える。

 どこからか略奪したであろう宝石や金に鉄。

 そして縄で縛られ身動きが取れない女と子供。


「うわぁ。今時人攫いとか趣味悪~」

「同意だな。悪趣味すぎる」


 フレイアとレイが仮面の下で顔をしかめていると、門番をしていた盗賊がこちらに気が付いた。


「ちっ、ここまで来やがったか!」

「馬鹿にしやがって」

「悪いけど、アンタたちも戦闘不能になってもらうから」


 ファルコンセイバーを構えながら、フレイアが言う。

 だが門番の盗賊は落ち着いたものだ。


「馬鹿言え! やられるのはそっちだ!」

「俺たちはお頭から褒美を貰っている」


 そう言うと門番の盗賊二人は、一つの小瓶を取り出した。

 小瓶の中にはどす黒い粘液が見える。


「アイツら、まさか!?」


 レイが驚愕する。

 だが門番の盗賊たちは止まらない。

 小瓶の蓋を開けて、その中身を飲んだ。

 見る見る二人の盗賊は目つきが変わってくる。


「レイ、あれって」

「間違いなく魔僕呪だ。最悪、敵味方関係なく攻撃してくるぞ」

「それは最悪ね。アリス! 捕まってる人たちを守って!」

「りょーかい」

「レイはアタシと一緒に、あのバカ二人を倒すよ!」

「了解だ、リーダー!」


 レイも腹に気合を入れる。

 門番の盗賊二人はグリモリーダーを取り出し、変身した。


「「クロス・モーフィング!」」


 二体の蛇型魔獣の力で変身した盗賊たち。

 先ほどまでのハグレ操獣者とは明らかに違う。

 魔装がきちんとしたものだ。


「「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」


 興奮した様相で、二人のハグレ操獣者が攻撃を仕掛けてきた。

 一人は腕から生やした刃でレイに襲い掛かってくる。

 レイはそれを寸前で躱しながら、コンパスブラスターを操作した。


形態変化(モードチェンジ)銃撃形態(ガンモード)!」


 銃撃形態にしたコンパスブラスターに、レイは魔力を込める。


――弾ッ弾ッ弾ッ!――


 三発の魔力弾がハグレ操獣者の身体に命中する。

 しかし魔装に少し傷をつけた程度で、大打撃には至っていない。


「無駄ァ!」

「危ねっ!?」


 ハグレ操獣者の腕から生えた刃。そこから紫色の液体が飛び散った。

 地面に落ちた液体が、煙を上げて土を溶かす。

 強酸性の毒だ。


『レイ、敵の攻撃に当たるなよ』

「言われなくてもそうする!」


 ではどうするべきか。

 近接戦では毒刃の餌食だ。

 中距離でも、毒液を飛ばされてしまう。

 迂闊に距離を取りすぎて、捕まって人たちを狙われるわけにもいかない。


「(だったら、こうだ!)」


 レイは銃撃形態のコンパスブラスターでハグレ操獣者の足元を狙撃した。

 何度も何度も撃ち続ける。

 そうすれば砂埃が舞い散って、ハグレ操獣者の視界を一時的に奪うことに成功した。


「野郎ッ! 逃げる気か!?」


 砂埃がが消える。ハグレ操獣者の眼前にレイの姿はない。

 逃げたのか。だが無駄な事だ。

 ハグレ操獣者は蛇型魔獣特有の熱探知で居場所を探した。


「ん? 上?」


 ハグレ操獣者が真上を向く。

 そこには、脚力強化で高く跳躍しているレイの姿があった。

 コンパスブラスターには、獣魂栞を挿入済みだ。


「出力上昇、流星銀弾(りゅうせいぎんだん)!」


 狙いを瞬時に定めて、高出力の魔力弾を撃つ。

 ハグレ操獣者は咄嗟に防御態勢を取ろうとしたが、無駄であった。

 体の前に出した両腕の刃に魔力弾は着弾。大爆発を起こして、刃を粉々に砕いた。

 その衝撃で尻から落ちるハグレ操獣者。

 同時に着地したレイは、コンパスブラスターを剣撃形態にする。

 そのまま駆け寄り、怯んでいるハグレ操獣者のグリモリーダーを破壊した。


「あ、あぁ……」


 変身を強制解除され、おびえる盗賊。

 レイはコンパスブラスターの切っ先を突きつけ「まだやるか?」と聞く。

 すると盗賊は強い恐怖を感じたのか、その場で失禁し気を失ってしまった。


「そんなに怖がるなよ。まぁ縛るの楽だからいいけど」


 レイはマジックワイヤーで盗賊を手早く縛り上げる。

 さて、フレイアの方はというと。


「ブレイズ・ファング!」

「グアぁぁぁぁぁぁ!」


 右手の籠手に大量の炎を溜めて、ハグレ操獣者を殴り飛ばしていた。

 そのハグレ操獣者の腕にはやはり毒刃が見える。が、すでに壊れた後だ。

 おそらくフレイアが力任せに壊したのだろう。


「フレイア、大丈夫か?」

「ん? 楽勝だったけど」

「そうじゃなくて毒とかだよ」

「えっ、アイツ毒持ってたの!?」


 どうやら気づいてすらいなかったらしい。

 これなら大丈夫だろうと、レイは安堵した。


 さて、これで入口前は静かになった。

 レイとフレイアは捕らえられていた人々の元に行く。


「アリス。捕まってた人たちは?」

「大丈夫。レイは?」

「俺は大丈夫だし、フレイアもだ」


 アリスがナイフで女性や子供を縛っていた縄を切る。

 これで全員解放された。


「あの、ありがとうございます」

「いいのいいの。放っておけなかっただけだから」

「現在地はわかりますか?」


 レイの問いに首を横に振る女性と子供たち。

 恐らく遠い地から連れ去られたのだろう。


「ここに放置するのも危険だな。アリス、この人たちをサン=テグジュペリの街に連れて行ってくれないか」

「うん。レイとフレイアはどうするの?」

「アタシたちは当然」

「洞窟の中へカチコミだ」

「わかった。危なかったら逃げてね」


 アリスはその場で融合召喚術を発動。

 鎧装獣カーバンクルとなって、捕らわれていた人たちを背に乗せ、街へと連れて行った。

 それを見送るレイとフレイア。

 戦力は減ったが、まだ洞窟の中にも捕らわれた人たちが居るかもしれない。


「さて、アタシたちも行こっか」

「そうだな」


 レイとフレイアは魔武具を握る力を強め、洞窟の中へと入っていった。

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