9 勇者、迷宮に挑む
今回は勇者四人組が主役です。主人公はちょっとお休み。
私たちが召喚されて一年経った。
今まで色々なことがあったよ。晃君は今元気にしてるかな。会いたいな。
勇者として修行して相当強くなった。特に佳山君がすごい。この前なんて迷宮のボスを一人で倒しちゃったんだから驚いたよ。
そして今はこれから魔王軍と戦うにあたって必要になってくることを学ぶ。
「まず、魔族国家ラハイトルはこの大陸の北にあります。」
私たちがいるミンハット帝国は大陸の南にあり、魔王軍との最前線にいる。他国には物資を送ってもらったりしているから何とか耐えているが、ここ一ヶ月で魔王軍の襲撃がさらに激しくなってる。だから早めに私たちを最前線に送らないと突破される恐れがあるとのこと。
「そこで勇者様たちには寒さに耐える訓練をしてもらうんですが、この王都近くにはある迷宮があります。その中は氷の洞窟となっており、訓練には最適だと思いましたので、その迷宮を攻略してもらいます。」
「なるほど。それなら相当準備しないとだな。」
「はい。三日後に出発いたしますので、急ぎ目の準備をお願いします。」
「あぁ、わかった。早速準備を始めよう。何が必要か教えてくてないか?」
「まず、普通の迷宮探索に必要な食料や水、そして寒さ対策の防寒着、松明は木に布を巻いたものを用意しましょう。これくらいですかね。」
「わかった。早速準備に取り掛かろう。」
さ、私も準備を始めるか。
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三日が経った。
馬車で魔力操作の練習をしてたら迷宮の前に着いた。
「つきましたね。私が送れるのはここまでです。」
「あぁ、ありがとう。それじゃあ行こうか。」
「うん。」
「おう。」
みんなが入っていったからそれに続く。
メンバーは勇者四人のみだ。
最近では佳山君が騎士団長との模擬戦で勝ったことが衝撃的だった。まさか一年でここまで強くなるなんてね。
「敵が来たぞ!」
「ぐおぉぉぉ!」
「ホワイトベアーね。力は強いけど遅いからスピードで圧倒しながら戦おうね。」
この前北の魔物図鑑を見たことがあった。その時に得た知識だ。
「わかった。速人、左から回り込め。俺は右から行く。零と楓は援護に努めてくれ。」
「「おう!(はい!)」」
返事したら前衛の二人が走り出した。
あっという間にホワイトベアーの側面にいき、相手は混乱してる。そこに詠唱の終わった楓が魔法を放った。
「フローラルフレイム!」
その瞬間花のような形のした美しい炎がホワイトベアーを襲う。
そして、
「アンフローズン!」
速人くんが炎と氷を纏った右手で殴った。
ドガン!
「ホーリーソード!」
佳山君が光で眩しい剣を天に掲げ振り下ろした。
「ぐおぉぉぉ!」
ホワイトベアーは血を噴射しながら後ろに倒れた。
回復役の私は出番なしかぁ。
なんか悲しいなぁ。
「さ、先に進むぞ!」
よし!いざっていうときは頑張らなきゃ!
「ボスだな。」
「あぁ、さて!やるか!」
迷宮は下りで、5階層ごとにボスがいる。
今はボス前のでっかい扉の前にいる。
ガラガラガラ
扉を開けた先には一匹のすごくでかい猪がいた。
ズルッ!ズルッ!
「ぶるるる!」
「さて!正面は俺が担当する!速人は後ろに回って攻撃することを意識しろ!二人は左右に分かれて各自担当を全うしてくれ。」
「ウィスピード!」
私は無詠唱で魔法を唱えた。
「お?体が軽く、」
「身体強化魔法を付与しました。あまり長くは続かないので気を付けてください!」
「おうよ!さて行くぜ猪!ハイホーリーブレード!」
佳山君の持っていた剣を光が包み大きくなった。それを一気に振りおろ押した。
「ぶひぃぃぃ!」
「ライトニングステップ!」
速人君がそういった瞬間足に電気が生まれて動きが速くなった。
「くらえ!渾身のアッパー!」
「ぶひぃぃぃぃ!」
猪が上に飛んで行った。
そこに、
「フレアクリスタル!」
詠唱の終わった楓が上位火魔法を放った。
「ふごぉぉぉ。」
そういって猪は絶命した。
「まぁ楽勝だな。」
「まだまだこれからね!」
私ももっと頑張らないと。
それからは順調で、10階層と15階層のボスは難なく倒し今、19階層にいる。
「まずい!」
「きぃぃぃぃ!」
体長2メートルはある蝙蝠に襲われてる。それも3匹。
「ハイヒーリング!」
私は全体治癒魔法を使った。
「たすかった!デッドブレイカー!」
名前は物騒だがれっきとした光魔法だ。
「「「きぃぃぃぃ!」」」
3匹一斉に仕留めた。
「さすが厚喜!」
「すごいよ佳山君。」
「途中の回復が無かったらきつかったかもな。ありがとう。」
たまに出るこのスマイルがウザいの。すごく。
そのまま歩いていたらボス部屋の扉を見つけた。
「ふぅ…」
「頑張るかぁ!」
ガラガラガラ
そこにいたのは4本の剣を持った身長2メートルくらいの骸骨だった。
ピン!
私たちが部屋に入ると骸骨の眼が光り、部屋のロウソクに火が灯った。そして骸骨が動き出しこっちに迫ってきた。
「こいつは強そうだな。速人!二人であいつの正面を止める!楓は魔法で援護。零は身体強化魔法などの補助に回ってくれ。」
「「「おう!(うん!)」」」
まず、佳山君と前田君が骸骨の前に立った。
その瞬間、
「フレアクリスタル!」
詠唱の終わった楓が魔法を放った。
ガキン
だが、骸骨が剣で容易く切り落としたのだ。
「なっ!」
さらに剣が佳山君に襲い掛かる。
「くっ!」
受け流す形で斜めに剣を構えたが、どんどん体制を崩していき、受け止める形になってしまった。
そこに骸骨の追撃で横から剣を振ってきた。
「厚喜ッ!」
「危ないっ!」
とっさに速人君が助けた。
ドガン
地面に当たった剣が大きな音を立て、周りに煙を出した。
「何もみえない!佳山君!無事?」
「あぁ、なんとかな。だが、この骸骨、相当きついぞ!」
前が見えるようになってきた。
「時間を稼いで!私が一発でかいのをお見舞いするから!」
と、楓がこぶしを握りながら言った。
「わかった。さぁ行くぞ!」
あれから三分くらいずっと耐えてる。私は二人の回復を、二人はずっと敵の剣を捌いてる。
「もういいよ!下がって!」
詠唱が終わった楓が叫んだ。
「おう!」
全員が下がったところを見計らって、
「フレイムエクスプロージョン!」
楓が魔法を放った。
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