第2話 拳法と陰陽道のハッピーターン(2)
「あ~あw」
香は、憂鬱であった。
ギブスを嵌めて、右手を吊っているせいで、色々な身支度にも苦労している。
何よりも練習できないのがツラかった。
「後2か月で、選考会が始まっちゃう。」
今度こそ、県大会に行ってやる。
そう決めて、始めてすぐの、このアクシデント。
仕方無いとはいえ、イライラすることではある。
「ん?」
既に暗くなった空に、校舎の屋上が、
街の灯をバックライトにして浮かび上がっている。
見ると、1組の男女が屋上にいる。
「こんな時間に、何やってるんだろ?」
じーっとみていたら、いきなり男の首が、上にすっ飛んで血が吹きあがった!
『ウソっ!?』
びっくりして見ていたら、相手の女性と目が合った。
『マズいっ!』
香はダッシュで後ろへ逃げる!
びっくりしたことに、女性は5階の屋上から飛び降りて追って来る!
『ウッソおー!?』
体育館の裏を抜けて中庭入る辺りで、首に『チリッ☆』とした感触があった。
慌てて前転する。
「チッW」
見ると、植え込みの木に、何か鋭いものが刺さっていた。
これは戦うしかない。
覚悟を決めて、女性と相対する。
「アナタ、勘が良いわね。」
見ると、3年のバッジを付けている。
「さっき、人を殺したでしょ。」
香は言ってみた。
「それがなにか?」
信じられない。
人を殺して、この態度!?
「見たならアナタ、死になさい。」
何かが飛んでくる。
ギブスのせいでうまく動かない。
助けて!
そう思ったら、『キンッ☆』という音がして、何かが落ちた。
「チッ、結界が張ってあるね。」
女性はそう言うと、何かの武器を取り出した。
「これで死になさい。」
すごいスピードで突っ込んできた。
足がもつれて動かない。
死ぬっ!
そう思った瞬間、何かが女性を弾き飛ばした!
女性はビックリして、
「アナタ、一体何者!?」
見ると何かの物体が2体、香を護るように立っている。
「どの道、殺すだけだけどね。」
目にも止まらない速さで動いた女性は、香を守っていた何かを切り倒す。
ヒラヒラと2枚の護符が、切れて落ちてきた。
「フフン。土御門か。」
女性は、武器を構えて、
「今度こそ、死にな!」
突っ込んでくる女性!
死ぬっ!
そう思った瞬間、女性が横にすっ飛んで行った。
「間に合ったぁ~。」
見上げると、巌示が立っていた。
「ガンジぃ~!」
『フンッ!』
巌示は、左手にスポーツバッグを持って、少林寺拳法基本の構えをとる。
女は4本のクナイを投げてきた。
全てスポーツバッグで弾き飛ばす。
接近戦になる。
巌示は容赦なく、女の顔に身体に、打撃を与える。
よろけたところで、右腕を関節技でロックして、力任せにへし折り、引きちぎる。
「ガンジ! ちょっとやり過ぎ!」
慌てて香が叫ぶ。
巌示はその声にも構わず、顔を持つと『ゴキッ☆』と引きちぎる。
「コイツは『傀儡』だ。」
よく見ると、デッサンで使う関節人形みたいな人形である。
巌示は空を見ている。
「本体は~っと。」
巌示は、おもむろに弓矢を取り出す。
「弓道部から借りてきた。」
矢の先を香に見せて、
「カオリ、矢の先を少しナメて。」
香がナメると、矢を弓に番えて、
「この矢は『返し矢』なり。香に祟る者に祟れ。」
『ヒョウ☆』と射った。
「ねぇ、ガンジ、」
香が何か言おうとすると、ガンジは、
「シッ!」
人差し指を口に置く。
しばらくして、
「よし!」
遠くから、何かの悲鳴が聞こえた。
「しばらく悪さはできないだろう。」
香は、屋上の犯行現場に行こうとすると、
「行ってもムダ。証拠なんか無い。かえってオレ達が犯人にされちまう。」
巌示はスタスタと帰り始める。
香は、慌てて巌示の後を追った。
一緒に下校する途中に、色々聞いてみる。
「さっきの3年生、何者?」
巌示は、
「ああ、多分『播磨陰陽師』の系統じゃないかな。針みたいなクナイ使ってたし。」
「播磨陰陽師? クナイ?」
「うーん。それはね・・・」
軽く説明をする。
「・・で、何で私を狙って来た訳?」
香が尋ねる。
「そりゃ、目撃者だからだろ?」
巌示は、
「傀儡の顔は、犯人の顔。だから、面は割れている。
おまけに、さっきオレが返し矢でケガさせたから、犯人特定は容易。」
「仕返ししてこない?」
「さあて。・・・あ、腕大丈夫?」
「うん。・・・ありがとう。」
香の事故といい、今回の殺人といい、この学校で、何かが起こっている。
「メンドいことだなw」
巌示は心の中で、一人ゴチた。
香の家に近づいてきた。
近くに公園があって、香が「少し寄っていこう」と言う。
公園に入ると、香がこっちを向いて、
「ねぇ、ガンジ。」
「ん?」
「さっきは、ありがとう。」
「ん。」
「それでなんだけど、・・・さっきの『お礼』、何がいい?」
「お礼?」
「そう。助けてくれたお礼。」
巌示は突然閃き、そして言った。
「キ・キしゅちて欲ちい!」・・・噛んだw
ハッとした香であったが、決心して、
「わ・判った!」
香は覚悟を決めて、ガンジに顔を近づける。
見ると、巌示が目を閉じて、ムニュッ♡と唇を突き出している。
「うわ! キモっW」
元々ゴツい顔の巌示だ。
ムニュッ♡とした顔は、どうみても、どこぞのモンスターである。
香は吊っていた手を外し、両手で巌示の顔を『ゴキッ☆』と横に向けると、
頬にキスした。
「ありがと♡」
巌示は大きくガッカリする。
しまったー!
『どこに』を言ってなかったw
でも巌示は満足する。
『イヨッシャーーー!!』
叫んで、ガッツポーズをとる!
「ウルセー!!」
窓から怒鳴られて、2人は大急ぎで公園を後にした。




