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その男、未経験につき  作者: 三久
第1扉 陰陽事始め
3/25

第2話 拳法と陰陽道のハッピーターン(2)



「あ~あw」

かおりは、憂鬱ゆううつであった。


ギブスをめて、右手を吊っているせいで、色々な身支度にも苦労している。

何よりも練習できないのがツラかった。


「後2か月で、選考会が始まっちゃう。」


今度こそ、県大会に行ってやる。

そう決めて、始めてすぐの、このアクシデント。

仕方無いとはいえ、イライラすることではある。



「ん?」

既に暗くなった空に、校舎の屋上が、

街のあかりをバックライトにして浮かび上がっている。


見ると、1組の男女が屋上にいる。

「こんな時間に、何やってるんだろ?」

じーっとみていたら、いきなり男の首が、上にすっ飛んで血が吹きあがった!

『ウソっ!?』


びっくりして見ていたら、相手の女性と目が合った。

『マズいっ!』

香はダッシュで後ろへ逃げる!


びっくりしたことに、女性は5階の屋上から飛び降りて追って来る!

『ウッソおー!?』



体育館の裏を抜けて中庭入る辺りで、首に『チリッ☆』とした感触があった。

慌てて前転する。


「チッW」

見ると、植え込みの木に、何か鋭いものが刺さっていた。


これは戦うしかない。

覚悟を決めて、女性と相対する。



「アナタ、勘が良いわね。」

見ると、3年のバッジを付けている。


「さっき、人を殺したでしょ。」

香は言ってみた。

「それがなにか?」

信じられない。

人を殺して、この態度!?


「見たならアナタ、死になさい。」

何かが飛んでくる。


ギブスのせいでうまく動かない。

助けて!

そう思ったら、『キンッ☆』という音がして、何かが落ちた。



「チッ、結界が張ってあるね。」

女性はそう言うと、何かの武器を取り出した。

「これで死になさい。」

すごいスピードで突っ込んできた。


足がもつれて動かない。

死ぬっ!

そう思った瞬間、何かが女性を弾き飛ばした!


女性はビックリして、

「アナタ、一体何者!?」

見ると何かの物体が2体、香を護るように立っている。


「どの道、殺すだけだけどね。」

目にも止まらない速さで動いた女性は、香を守っていた何かを切り倒す。

ヒラヒラと2枚の護符が、切れて落ちてきた。


「フフン。土御門つちみかどか。」


女性は、武器を構えて、

「今度こそ、死にな!」

突っ込んでくる女性!


死ぬっ!

そう思った瞬間、女性が横にすっ飛んで行った。


「間に合ったぁ~。」

見上げると、巌示が立っていた。

「ガンジぃ~!」




『フンッ!』

巌示は、左手にスポーツバッグを持って、少林寺拳法基本の構えをとる。


女は4本のクナイを投げてきた。

全てスポーツバッグで弾き飛ばす。


接近戦になる。

巌示は容赦なく、女の顔に身体に、打撃を与える。

よろけたところで、右腕を関節技でロックして、力任せにへし折り、引きちぎる。


「ガンジ! ちょっとやり過ぎ!」

慌てて香が叫ぶ。

巌示はその声にも構わず、顔を持つと『ゴキッ☆』と引きちぎる。


「コイツは『傀儡くぐつ』だ。」

よく見ると、デッサンで使う関節人形みたいな人形である。


巌示は空を見ている。

「本体は~っと。」

巌示は、おもむろに弓矢を取り出す。

「弓道部から借りてきた。」

矢の先を香に見せて、

「カオリ、矢の先を少しナメて。」


香がナメると、矢を弓につがえて、

「この矢は『返し矢』なり。香にたたる者に祟れ。」

『ヒョウ☆』と射った。


「ねぇ、ガンジ、」

香が何か言おうとすると、ガンジは、

「シッ!」

人差し指を口に置く。


しばらくして、

「よし!」


遠くから、何かの悲鳴が聞こえた。

「しばらく悪さはできないだろう。」



香は、屋上の犯行現場に行こうとすると、

「行ってもムダ。証拠なんか無い。かえってオレ達が犯人にされちまう。」

巌示はスタスタと帰り始める。

香は、慌てて巌示の後を追った。



一緒に下校する途中に、色々聞いてみる。

「さっきの3年生、何者?」


巌示は、

「ああ、多分『播磨陰陽師』の系統じゃないかな。針みたいなクナイ使ってたし。」

「播磨陰陽師? クナイ?」

「うーん。それはね・・・」

軽く説明をする。


「・・で、何で私を狙って来た訳?」

香が尋ねる。

「そりゃ、目撃者だからだろ?」


巌示は、

「傀儡の顔は、犯人の顔。だから、面は割れている。

おまけに、さっきオレが返し矢でケガさせたから、犯人特定は容易。」

「仕返ししてこない?」

「さあて。・・・あ、腕大丈夫?」

「うん。・・・ありがとう。」


香の事故といい、今回の殺人といい、この学校で、何かが起こっている。

「メンドいことだなw」

巌示は心の中で、一人ゴチた。




香の家に近づいてきた。

近くに公園があって、香が「少し寄っていこう」と言う。


公園に入ると、香がこっちを向いて、

「ねぇ、ガンジ。」


「ん?」

「さっきは、ありがとう。」

「ん。」


「それでなんだけど、・・・さっきの『お礼』、何がいい?」

「お礼?」

「そう。助けてくれたお礼。」


巌示は突然閃ひらめき、そして言った。

「キ・キしゅちて欲ちい!」・・・噛んだw


ハッとした香であったが、決心して、

「わ・判った!」

香は覚悟を決めて、ガンジに顔を近づける。



見ると、巌示が目を閉じて、ムニュッ♡と唇を突き出している。

「うわ! キモっW」


元々ゴツい顔の巌示だ。

ムニュッ♡とした顔は、どうみても、どこぞのモンスターである。


香は吊っていた手を外し、両手で巌示の顔を『ゴキッ☆』と横に向けると、

ほほにキスした。

「ありがと♡」


巌示は大きくガッカリする。

しまったー! 

『どこに』を言ってなかったw


でも巌示は満足する。

『イヨッシャーーー!!』

叫んで、ガッツポーズをとる!


「ウルセー!!」

窓から怒鳴られて、2人は大急ぎで公園を後にした。




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