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その男、未経験につき  作者: 三久
第2扉 闇に潜むモノ
24/25

第23話 林間学校の怪・約束の日



谷間から下ってくると、青い霧が徐々に濃くなってくる。

まったりと濃い霧は乳白色で、全体が青い燐光を放っている。

オレは、

「ここからは基本無言で。何かあるなら小さい声で。」

井上さんへ、ソッと耳打ちする。

コクンと頷いた井上さんは、静かに霧の中を進む。




谷間からの道は、最初にきもだめしに使った(やしろ)の横を通る。


社の周りは、妙に静かだった。

オレは社に用事があったし、

社に閉じ込められたノリリン達の様子が気になる。

中の様子を見ようと思うが、井上さんを連れて行くかどうか迷う。


「井上さん、今から社の中入るけど、ここで待ってる?」

井上さんはプルプルプルと首を横に振る。

「もしガンジ君に何かあったら、私だけじゃ、耐えられない。」

一緒に付いてくと言う。

だろうなぁ。



周りをチェック。

同級生ゾンビの気配は無い。

オレ達は、社の裏手から、表の扉へ回り込むことにした。


社の後ろの林から、本殿へと近づく。

縁の下へ潜り込み、隠れて正面へと移動する。


様子を見て、階段を登り、正面の扉に到着する。

扉に触り、引くと開いた。

中に入り、スマホのLEDを点ける。


中には誰もいない。

正面にはホコリのかぶった祭壇があり、奥にご本尊の入る(やしろ)が見えた。



社に一歩踏み込むと突然、

祭壇の後ろからゾンビのノリリン他、6名の同級生ゾンビが現れた!


オレはとっさに構え、社から出ようとするが、

井上さんは突っ立ったまま、ブルブルと震えて動けない。


「井上さん!」

オレは彼女の前に出て、ノリリン他を蹴り飛ばす。

済まん、ノリリン!


ノリリン達は、やはり痛みなど感じないのか、そのまま起き上がってくる。

オレはゾンビのスキを見計らい、途中で書いた呪符をノリリン達の額に貼り付ける。

そう、キョンシーみたいな感じでだ。


呪符を貼られたゾンビは、電池が切れた人形みたいに、次々に床へと倒れる。



6人全員が床に倒れると、オレ達は社のスミッコの方に並べて横たえる。

「よし。」


オレは額に出た大量の汗を、体操服で拭うと、

「井上さん、奥の社の扉を開けて、中身を取り出して。」


井上さんは、祭壇わきを通り、奥の社へ向かう。


社の扉を開けると、内陣にある木箱と袋に包まれた何かが置いてあった。

井上さんはそれを取り出し、オレのところへと持ってくる。



オレがこの神社へとやってきたのは、洞窟の祠にあった石を取り出す際、

ここの神社と霊的な、妙な交信があったからである。

おそらく何かあるだろうと考え、それは本殿にあるだろう。

思惑はズバリ当たりだったわけである。


井上さんはオレの傍らに座って、

「ガンジ君、大丈夫?」

立ち回りで大汗をかいたオレを心配したらしい。

オレは

「大丈夫。ノリリン達を蹴り飛ばすのは、さすがにキツかったけど。」

ニッと笑う。


そんな話をしていると、嫌な気配が少しずつ強くなる。

井上さんも感じたようだ。

「いこう。」

立ち上がって社を出る。



外の霧は、増々濃くなり、青い燐光も強くなっているようだ。

「井上さん、山に戻ろう。」

オレ達は道を戻って、全体を見渡せる山の頂上へと戻った。




頂上へと戻ると隠れられる場所を探し、

周囲に灯りが漏れないようにして、スマホのLEDをつける。

スマホを見ると受信は圏外、時刻は23:30になっていた。


風をしのげる場所なので、温かい。

井上さんは、大太刀周りが続いたのでお疲れのようだ。

ウツウツと居眠りを始める。

オレは居眠りする井上さんをそのままに、月明かりの下で箱を開ける。




小諸村由緒(こもろむらゆいしょ)(こよみ)


木箱の中には、古文書が1冊。

そして袋に入った短刀が一振り。


短刀は、抜いてみるとサビだらけである。


寝ている井上さんに短刀は預けて、古文書を開いて読み始める。



「某年某日、小諸村にて怪異あり。

全身鱗(うろこ)に覆われた幼児現る。


追い返すも、村付近にて(たたず)む姿あり。

その後、牛男、蛇女他、次々に怪異の者現る。


庄屋、代官に連絡し、村総出にて退治を行う。


次年、村が大水。翌年、干ばつとなる。

飢餓・疫病による死者多数。


社にて吉凶を占うも『殺された怪異の者の祟り』が妨げとなり、

更に不幸は続くという。


代官に相談すると、とある高僧現(あらわ)る。

異形の者の塚を作り、加持祈祷の上、鎮魂の石を置く。


高僧曰く、

「毎年供え物と祈りをすべし。

もし、何らかの事態で習慣が途絶える時、

30年経た後、『祟り』があるであろう。」


忘れることなく子々孫々に伝えるべしと、ここに記す。


某年某日 庄屋 某。」


ざっと、こんな感じの内容が書かれていた。



「・・何か解った?」

井上さん、起きたらしい。


オレは井上さんに、

「ヒントになるかなという程度には。」

井上さん、メガネの奥の目をクリクリッとさせて、

「うーん。迷う回答w」


スマホを見ると、時刻はとうに深夜を過ぎている。

オレは

「井上さん、短刀貸して。」

彼女は膝の上に何か乗っているに気づいたようだ。

オレに短刀を渡す。



オレは錆びた短刀を持つと鞘を開き、赤錆に覆われた刀身を露わにする。

「ノウマクサンマンダ バサラダンセンダ マカロ・・・ 」

不動明王の真言を唱える。


最初、何か異音がしている感じだった。

少し音が大きくなって、錆びた刀身から錆がポロポロと落ちてゆく。

徐々に表面が輝いてくる。


(ウン)!!』

オレが唱え終わる直前に刀身は輝くと、錆がとれて、きれいな短刀に戻る。



オレは短刀を鞘へと戻し、再び井上さんへと渡す。

「井上さん、これ、井上さん用の武器。

この短刀を使って、いざとなったら、それでゾンビを刺すんだ。

『除霊の刀』だから、刺しても悪霊が消えるだけで、人には害はない。」


オレは、もう一度、鞘を開いて短刀を取り出し、自分の腕を刺す。

スウと刀身はオレの腕の中に入り、何もなかったかのように出てくる。

腹や胸を刺して、同様なことを証明する。


井上さん、かなりビビって預かった。




そろそろ頃合いである。

「じゃ、井上さん。行こう。」


おそらく事態をこのまま放置していたら、

オレ達は、いつまで経っても現世へと戻れない。

ずっとこの暗闇の中をさまようだろう。

物語の決着が必要であった。


井上さんはビビリながらも差し出したオレの手を握り、起き上がる。

ひとつ頷くとオレを見て

「行きましょう。」

決意に溢れた良い目である。



頂上から道を下りながら、最後の注意を行う。

「井上さんは、とにかくゾンビに噛みつかれないようにしてね。

オレ、ゾンビになった井上さんを蹴り飛ばせる自信がない。」


井上さんは、手をつないでいるオレを見て、

「則武君は、できても?」


オレはニヤッと笑って、

「ノリリンや他の連中は大丈夫。でも、女子は、かなり抵抗があるw」


「だよねぇ。」

少し嬉しそうな感じの声で答えた。




オレ達が泊まっているバンガローが見えてきた。

オレは頭の中で解決する順序を確認する。

「よし。」


オレは立ち止まり、井上さんを見て言った。

「それでは謎解きを始めよう。」



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