第20話 林間学校の怪・怪異の芽
「みなさん揃いましたかー?」
『ハーイ。』
「では運転手さん、よろしくお願いします。」
担任の忍先生が一礼した。
1年生は、今日から2泊3日の林間学校である。
巌示のクラスは1-B。
バスが走り出して少しして、
「ガンジぃー、一杯やろうゼ!」
則武から他のメンバー3人へ、『缶』とカキピーが回ってきた。
「お疲れ様っス!!」
『プシュ☆』
缶を開けて、冷えた○○を、グイッといく。
「クーーーッ! この1杯がウマい!」
「コラっ! あなた方、いい加減にしなさい!」
忍先生に怒られる。
「センセーイ。これ『ノンアルコールビール』だも~ん♪」
ノリリンがニヤニヤ笑って言った。
「紛らわしいモノは、ダメって言ったでしょ!」
忍先生が腰に手を当てて、頬をふくらませる。
忍先生は、男子生徒から人気がある。
小柄なナイスバディに禁欲的な眼鏡を掛け、キュートな眼差しの先生である。
本人は一生懸命『年上な』ことを強調するのだが、仕草の1つ1つが可愛くて、
逆にそれが『イイ♡』と、みんなに言われている。
「ガンジ君、こういう時は、アナタがダメって言わないと。」
先生は、オレを見て文句を言う。
先生の、鈴が鳴るようなコロコロした声を聞いていると、ヘンな気分になってくる。
「ハイ、先生。気をつけます! 」
「あ、このヤロ、ガンジ。お前だけ良い子しやがってw」
3人に小突かれる。
片道3時間の旅。
その間にトランプやったり、居眠りしたり。
「気持ち悪い」と言って、寝てるヤツもいる。
ダム湖の横を通って、目的地に着いた。
「俺達のバンガローは~・・」
ノリリンが、先週配られたプリント用紙を見ながら、止まる場所を探してくれる。
「23・24・25。ここだ。」
トンガリ屋根の、小さな丸太小屋。
中に入ると小じんまりしたワンルームで、奥に2段ベッドが2つと、
手前に小さいキッチン、横にトイレが付いている。
「林間学校って言っても、テント張る訳じゃ無いのか。」
オレが言うと、ノリリンが、
「オマエ、前もってプリント見てこいよなw」
注意された。
バンガロー群から1段下がったところにあるグラウンドにみんな集合して、
学年主任の先生から生活に関する注意を受ける。
昼食後、1日目のカリキュラムが始まった。
森林観察は、女子の班と合同で動く。
森林組合のおじいちゃんが、色々と教えてくれる。
「このキノコはな、・・」
「この木はな、・・」
好きなヤツはフムフムとしっかり聞くし、興味ないヤツは、女子と喋ったりしている。
オレは修行の関係で、ここらへんは詳しい。
「ンー?」
ちょっとした谷間を通る時、視線を感じた。
人の視線ではない。
何かいるな。
気持ちの良い視線ではないが、危急なものではない。
相手にわかって憑依されると厄介なので、そのままみんなと移動する。
夕食後の片付けが済むと、後は自由時間だった。
まだ寝るには間がある。
オレ達はバンガローの中で、意味もなく騒いで遊んでいた。
「ガンジぃ~。」
短パンと体操服姿の香が、他の女子とやって来る。
今回は、同じクラスながら、別々の班での行動だ。
別に寂しいという訳じゃないけど、夜に見る香の姿に少しドキッとする。
「ちょっと相談があってさ。」
香が、「ほら。」と一緒に来た女子を紹介する。
「1-Cの井上さん。ちょっと話を聞いてあげて。」
井上さんは、少し小柄のぽっちゃりさんだ。
ぽっちゃりなのはいいんだけど、かなーり豊かな胸を持ってらして、
ユサユサするところがオレ的には悩ましい女の子だ。
オレは告白タイムかなと、少し期待した。
井上さんは、ペコッとお辞儀をした後、
「えと、ガンジさん。『視線』、気が付きました?」
キョトンとした後、アッと気が付き、
「井上さん『も』、気がついたの?」
多分、森の谷間で感じた、例の視線だ。
「はい。」
そう言った後、
「あれって、人の視線じゃないですよね?」
オレはニヤニヤしていた顔を引き締めた。
「チョ・・こっちへ。」
井上さんを引っ張って、人が少ない場所に移動する。
井上さんは、年の割には可愛い感じのする、少し大きめのメガネをズリ上げて、
「森林観察で谷間を通った時、感じました。」
オレと同じだな。
「井上さん、視線の先は見た?」
「いいえ。なんかイヤな感じがして。」
・・よし。
「少し待っててよ。」
そう言って、日程のプリントを取り出し、『メモ』っていう箇所を定規で破く。
適当な大きさに切って『霊符』を2枚作る。
『厭鎮凶悪之鬼符』
陰陽で使う呪符で、悪霊を近寄らせない働きをする。
「これ持ってて。」
香と井上さん、二人に渡す。
「ガンジ、これだけで大丈夫?」
香が少し心配そうな顔をして言う。
「うーん。とりあえずは悪いことするかどうかも判らないから様子見。
井上さんも、イヤな気配感じても無視して。目線合わせちゃ、ダメだよ。」
井上さんは、コクッと頷く。
これで終わりかなと思ったら、今度は香が、
「今度は私。ちょっと来て。」
3人で、香のバンガローへ行く。
香のバンガローには、人がいない。
入ると同時に「うわw」と声が出た。
井上さんが、
「ガンジさんもわかります?」
部屋自体は清潔でキチンと整えられている。
ただし、雰囲気が異様だった。
「私は気にならないけど、他の3人がイヤがって、
他のバンガローに、遊びに出ちゃった。」
香が言った。
「何でしょう、この異様な雰囲気?」
井上さんが聞いてくる。
「うーん、・・・」
何か良くない雰囲気のモノが、頭上2mくらいのところに凝り固まっている。
「取り敢えずだけど、天井近くまであげて、動かないように固定しておくかな。」
オレは、また護符を書き、四方にそれを貼る。
ブツブツと呪文を唱え、良くない雰囲気のものを天井付近に移動させた。
香には、
「マズいと思ったら、他のバンガローに移動しろ。」
と言っておく。
そういえば、1つ忘れ物があった。
「香、まだいい?」
「まだいいよ。」
「じゃ、もう一度来て。」
井上さんとはここで別れて、香と2人でオレのバンガローに戻る。
バッグから紐の付いたお守りを出して、
「さっき書いた霊符出して。」
霊符も一緒に畳んで御札の中に入れて、香に渡す。
「これ、カッコ悪いけど、ネックレスにして首からかけて。
少なくとも霊障関係なら、防げるはず。」
香は、じっとオレを見て、
「作ってくれたの?」
オレは苦笑しながら
「最近お前、色々あるからな。」
香はその場で着けて、
「ありがと。」
そして、ポツリと、
「何もないといいね。」
オレは手を自分の腰に当てたまま、
「大丈夫さ。」
まあ、大事にはならないだろう。
『あと15分で消灯。各自、自分のバンガローへ戻れ。』
放送がある。
香をバンガローへ送った後、オレは他の3人と悪さをしつつ、寝てしまった。
ひさびさのガンジ君です。
こっちはこっちで進めてますので、気を長くしてお待ち下さい。
ははは^^;




