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その男、未経験につき  作者: 三久
第1扉 陰陽事始め
20/25

第19話 慰霊祭



これは『第11話・鏡の奥からやって来るモノ』発生中のサイドストーリー。



巌示が家に帰ると、玄関で父が

「急に本山から連絡が入って、出かけないといけなくなった。

お前、代わりに読経(どきょう)あげておけ。 

あ、朝の勤行(ごんぎょう)も頼む。」

そう言って、入れ替わりに出て行った。




夕食も済み、一段落した所で、巌示は本堂へおもむく。



ロウソクを灯し香に火を着けた後、数珠を鳴らして読経を始める。


「観自在菩薩 行深般若波羅蜜多時、照見五蘊皆空、度一切苦厄。

舎利子。色不異空、空不異色、色即是空、空即是色・・・」

(さあ、絢爛たる菩薩の世界に(おもむ)こう。

世界は言葉で出来ている。

苦しみも悲しみも言葉によって規定され、それぞれの思いが込められている。

思うから悩むのであって、思わなければ悩まない。

世の中ってそんなものなのさ・・・)



どんどん巌示は没我になってゆく。

自ら唱える経のリズムが、自らのバイオリズムとシンクロして、心地よい。


巌示にとって、お経はラップである。

誰もいないときは適当なリズムをつけて、好きなように唱えている。


「・・無眼界、乃至、無意識界。

無無明・亦無無明尽、乃至、無老死、亦無老死尽・・・」

(未来を『正確に』予測するなんて、誰にも出来ないことだ。

未来をなんとかしようとするから、悩むことになる。

死ぬかもしれない・貧乏になるかもしれない・病気になるかもしれない

予測できない未来を悩むから苦しいのさ・・・)


無我の境地を漂っていると、

『ポンッ☆』

かたわらに子狐が表れた。


巌示はこころの目で狐を見る。

先だって(しき)にした、(くだ)の子狐である。


狐は何か言いたそうに顔を傾ける。


巌示は滔々(とうとう)と読経をあげている。

「・・三藐三菩提。故知、般若波羅蜜多、是大神呪、是大明呪、是無上呪・・」




気がつくと、子狐の後ろに子犬がいる。

さらに子猫、子狸と、動物が表れてくる。

大勢の動物が、次々に巌示の後ろにあらわれて、仏に頭を垂れる。


とうとう後ろに、果てしがない動物の大集団ができた。



振り向いだ巌示は

「供養してほしいのか?」

子狐はコクンとうなづいた。


巌示はしばし考え、

「一切の形成されたものは無常であると明らかな智慧(ちえ)をもって観るときに、

ひとは苦から(いと)い離れる。これが清浄への道である・・・」

と、法句経(ほっくきょう)を唱え始める。


巌示は煩悩からの解脱(げだつ)を解き、清浄への道を説く。




いつしか法句経は、現世にさ迷う魂を天上へと導く真言へと変わる。

「ノウマクサンマンダ ボダナン アラハチカタ シャサナウナン ダ・・・」


神鳥たる迦楼羅(かるら)が降りてきて、次々と動物を咥え、飛び立ってゆく。



気がつくと、大勢いた動物達もすっかり消え、子狐だけが残っている。


「お前は行かないのか?」

巌示が尋ねると、

子狐はイヤイヤと首を振って、巌示の膝の上に乗って丸くなった。


巌示は子狐の背中を撫で、合掌し、読経を終了した。




翌日。

学校から帰ると玄関で父が、巌示を不思議そうな顔で見た。

「お前、本堂で何かやったか?」


聞けば本堂の縁側に次々と鳥や狸、犬や猫がやって来て、

木の実や花、木の葉を置いていったという。


巌示はニヤッと笑い、

(ほとけ)功徳(くどく)でございましょう。」


合掌して座敷へと上がった。



とりあえず、一区切り付きました。

お盆までに間に合った。

アイデア練りながらコツコツ書きます。

気長にヨロシクです。


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