第10話 憑いてきちゃった(2)
まずは状況把握から始めよう。
「斎藤さん、質問。」
「?」
「まず最初に、弟君が捨てた『置物』って探した?」
斎藤さんは、ポケットをゴソゴソして、
「今、持ってます。」
テッシュに包んだ、小さいモノを取り出す。
開けてみると、普通の陶器のキツネだった。
「よく見つけたね。」
「ひょっとしたら、これが原因かもと思って、一所懸命探しました。」
まず1つクリア。
「次は、弟君に会おうかな。会える?」
「今から?」
「マズい?」
「ううん、大丈夫。」
香とオレと斎藤さん。3人で斎藤さんの自宅へ向かう。
斎藤さんの自宅は、なんとなくシンとしていた。
「お邪魔します。」
2階に上がって、弟君の部屋へ行く。
斎藤さんがノックしても出ないので、勝手に入る。
部屋の中は、グチャグチャだった。
弟君は、部屋の隅でうずくまっている。
『ウーーーッ、ウーーーーッ』
斎藤さんが名前を呼ぶと、こちらを振り返った。
顔が醜く歪んでいる。
「ガンジっ! キツネが憑いてるかも!」
香がビックリして叫ぶ。
「落ち着け。あれはただの思い込みだ。」
オレは弟君に近づき、小さなキツネの置物を見せる。
「これが欲しかったんだろ?」
ビックリした顔で置物を見て、それからオレを見た。
「これ、今から、お兄ちゃんがお稲荷さんへ返してきてあげる。心配いらないよ。」
ニッコリ笑って言う。
じっとオレを見つめて、それからボロボロ涙をこぼし始める。
「さて、1つ解決。これからお稲荷さんへ向かう。」
オレは立ち上がって、
「斎藤さん、香。来るよね?」
一緒に部屋を出た。
「え!? え!?」
香はビックリしている。
「歩きながら、説明してやるよ。」
お稲荷さんまでの短い道のりを歩く。
「弟君は、良心の呵責というヤツで、ヒステリーに陥ったのさ。」
「良心の呵責?」
「そう。
『怖い、でも意気地無しじゃない。やっちゃった、でも僕は悪くない。』
そんな良心との葛藤があって、ごまかすために、ああなったのさ。無意識にだけど。」
正確には逃避行動だけど、そこまで説明する必要はない。
「で、次はこっち。これは意外だったけど、ホンモノだ。」
オレは陶器のキツネを見せる。
「え!?」
「憑いてる♪」
「えーーーっ!!」
お稲荷さんの鳥居前に着く。
入り口に小さい電灯があるだけで、奥は真っ暗だ。
「さて、と。」
斎藤さんが、フラッシュライトを点けた。
しばらく奥に進むと、件の稲荷神社がある。
オレは置物をおき、
「中臣の太祝詞言い祓え、贖う命も誰が為に汝。」
置物の中から、小指ほどの小さなキツネが飛び出した。
「ちょっと目を閉じて。」
2人の目を閉じさせて、オレは、まぶたの上に手を載せ、呪文を唱える。
2人は目を開いてビックリする。
「小さいキツネ!」
キツネは嬉しそうに、空中をクルクル回っている。
「さて、オマエが望んだ通りに戻してやった。次はオレの番だ。」
キツネは空中に、チョコンと座っている。
「神火清明 神水清明 神風清明。 管よ、我に従え。」
九字を切ると、キツネはヒュルヒュルと回りながら、
オレの懐へと飛び込んだ。
「おしまい。」
「えーっ、もう!?」
オレはスタスタと帰る。
翌日、改めて斎藤さんがお礼にやって来た。
帰り際に、『他言無用』と釘を差しておいたので、
弟君は、医者に通って治ったことになっている。
「両親が、改めてお礼がしたいって言ってるけど。」
オレは斎藤さんを見て、
「それなら弟君に、『危ないことは、やっちゃダメ』って言っておいて。
弟君、あの手のことには引っかかりやすい体質かもしれないから。」
「え!? そうなの?」
「ハッキリはしないけどね。」
今度何かあっても知らないからねと言って、改めて釘を刺しておいた。
香がバツの悪そうな顔をして、やって来る。
「ガンジ~w」
オレは香に、
「カオリ~、オマ、いい加減にしろよな。
あの手のヤツは、本来ならお金取って解決するものなんだ。
オレはまだ修行中だからタダにしたけど、イカサマ除霊師だって仕事でやってんだから、
オレが中途で介入しちゃ、ダメなの。」
香はオレを拝んで、
「ゴメン。ホントーにゴメン。」
・・・コイツ、またやるなw
今回は、小さくて便利そうな『管』が手に入った。
まあ、良しとしましょうか。
巌示は則武と一緒に、トレーニングルームへと向かう。
今度こそ130kgを上げるつもりだった。
取り敢えず、ここまで。
続きみたい人、すいません。
しばらくしたら、また出します。
よろしくです。




