第9話 憑いてきちゃった(1)
「ガンジ、もう10kg上げるか?」
「今日はイけそうかも。」
巌示は、ベンチプレス130kgに挑もうとしている。
今までの自己最高は120kg
イけるか!?
ぐっと持ち上げる。
胸に降ろして、
『フンッ!!!』
あ、クソ!
則武が手を添えて、元に戻す。
「ムリかw」
ここらへんが、壁かな。
只今『ベンチプレス同好会』活動中。
週3で道場行ってるので、部活はムリ。
で、同好会に入っている。
道場は夜7時からなので、余裕である。
アームカールをやっていると、香がやって来た。
「ガンジ、ちょっと。」
何だろうと思い、ついて行く。
廊下に出ると、1人の女子がいた。
「1ーDの斎藤さん。」
彼女がペコッと挨拶した後、香が話し始める。
「どうも斎藤さんの弟さんが、タチの悪い『モノ』を連れてきちゃったみたいなの。」
オレが怪訝な顔をして香を見ると、耳に顔を寄せてきて、
「ゴメン。除霊のこと話しちゃった。」
カオリぃー、オマエ喋り過ぎw
「カオリが『ガンジ君ならいけると思う』って言うから、お願いします!」
オマエら、絶対オレのこと、便利屋だと思ってるよな。
練習終わってからということで、話を終わる。
同、放課後。
一応話だけは聞いてみる。
斎藤さんの弟君は、小学3年。
ご多分に漏れず、『勇気ある心』を人に見せないといけない年頃だ。
大人になっても、ずーっと、こじらせてる人もいるがw
ある日、『肝試し』をしようということになった。
場所は、お稲荷さんの神社。
そこはオレも知っているのだが、
色々な大きさのキツネの置物が、いっぱい奉納されている。
夕暮れ時に、そこへ出かけて、置物を1つ持って返ったら『勇気の証明』だ。
弟君他、5人は、神社の入り口までやってきた。
すでに辺りは薄暗くなっている。
全員心細かっただろう。
でも、それを言ったら『意気地なし』だ。
意地でも言えない。
ジャンケンで順番を決める。
弟君は、ラストになっちゃった。
みんな順番で鳥居の奥へ入る。
次々に帰ってきて、得意そうに置物を見せる。
弟君の順番になった時、すでにかなり暗かった。
「もう帰らないと。」
弟君が言うと、みんなは指差して
『意気地無しー!』
弟君
「違うよ!」
意地になって奥へ走る。
辺りは、ほぼ真っ暗で、よく見えない。
その中で一番奥の社まで行って、そこらにあった置物を掴んだ。
『持って行かないで。』
どこからか声が聞こえた。
弟君はビビったんだが、手が離れない。
別の置物でも良かったんだが、
それを手放して、次を持つという心の余裕は無かった。
そのまま置物を持つと、一目散に入り口まで戻る。
入り口まで戻ると、
『どうだ!』
得意げに、みんなに見せる。
『持ってかないでと言ったのに。』
今度は全員に聞こえた。
「ウワワワワワーーーーーーーッツツツ!!!」
みんなビックリして、一目散に逃げる!
弟君も慌てて帰宅したんだが、
帰って気がつくと、キツネの置物を、そのまま持ってきてしまっていた。
置物は気持ち悪いので、そこら辺に投げ捨てた。
その日以来、弟君がおかしい。
何か見えると言って騒ぎ、何か聞こえると言って、部屋に逃げ込む。
言っても聞こえないのか、ガタガタ震えている。
心配した両親が医者に見せたんだが、
「神経症ですね。」と言って、鎮静剤をくれただけだった。
医者は信用できないと思った両親と斎藤さんは、
原因を探るべく色々聞き込みして、肝試しだったと判る。
「キツネが憑いたのかも。」
お母さんがそう言うと、
「バカな!」
お父さんは否定するが、自信は無かった。
一応、キツネなら油揚げということで、
件の社に持っていって、お供えしたんだが、良くはならなかった。
幾つか医者を変えても良くならない。
心配した祖母が、霊媒師という人に見せると、
『悪霊が憑いている! 』
と騒ぎ出した。
すぐ除霊しないと、大変なことになると言う。
ただし、除霊金100万円。
近所の人達からも『呪われた家』と言われて、付き合いも少なくなり、
もう、どうしたら良いのかわからない状態だそうだ。
確かに斎藤さんの顔色は悪く、透き通るような肌になっている。
「ガンジ、なんとかならない?」
香が言った。
内容がかなりシリアスだったし、知らない人なので、断わろうかと思ったんだけど、
香の顔を見ると、それも言えなくなってしまった。
オレは、しばし考えて、この件を受けてみることにした。
やっと2話書けました。
少し間が空きますが、小勘弁を。
中々スタイルが決まりません。




