最後の会話。
「まだ、君の優しさに触れたかった。君の傍に居たかった。これからも、ずっと、一緒に居たかった。だから、ごめんね。」
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「冬子ぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
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目が覚めた。何か悪い夢を見ていたみたいだ。どんな夢を見ていたのかは思い出せない。
同じ道を通り学校に向かう。今朝見た夢はまだ思い出せない。そうこうしていると、学校に着いた。
上履きに履き替え、階段を上り教室へ・・・といつもなら向かうところだが今日は昨日出し忘れた課題を出すために職員室に寄っていかないといけない。面倒だ。
失礼しまーすとお馴染みの挨拶をして先生を探すように辺りを見渡す。先生を見つけたものの、タイミング悪く、誰かと話しているようだった。
僕は近づいていく。先生と話していた相手は、僕がよく知る人物だった。
「最近の調子はどうだ?」
「だ、大丈夫です。前と比べると大分楽になりました。」
「そうか。それはよかった。困ったことがあったら何でも言えよ。」
「はい。ありがとうございます。失礼します。」
会話が聞こえてきた。話していた相手は冬子だった。先生と話すときもちゃんとしてるなーと感心していたら冬子が振り返って出口に向かう。僕には気づかなかったみたいだ。そんな冬子の後姿はどこか、悲しくて、寂しそうだった。
僕は課題を先生に出して、教室へ向かう。
すると、廊下で冬子と美空が何か話をしていた。その時の冬子の顔は、さっきと打って変わって楽しそうだった。
僕は二人に何の挨拶もせず教室に入り、鞄を机に置いて椅子に座り一息つく。そしてまた今朝の夢について思い出そうとしてみる。
が・・・気になる。さっきから美空がこっちを見てニヤニヤしている。それが妙に気持ち悪い。冬子との話の中で僕の話をしているのだろうか。しかし冬子は、笑うどころか何故か顔が赤くなっている。
僕には、まったく分からなかった。
帰り道、いつものように道に転がっている小石を蹴りながら帰る。
今朝見た夢はなんだったんだろう。冬子が先生と話していた内容はどういう意味なんだろう。なぜあの時、顔を赤くしていたんだろう。考えても考えても答えはどれも出なかった。
翌日。またいつもの道を通り学校に向かう。今日はなんだか風が気持ちいい。
学校に着いて教室へ入ると、そこに冬子の姿はなかった。どうやら休みだったらしい。
放課後、僕は先生に冬子の家に連絡を届けてほしいと言われ、教室に一人残り冬子の机の中のものを整理していた。なぜ僕が頼まれたのかは分からないが、冬子と関わりを持っているのはこのクラスでは僕ぐらいだったからだろう。特にそこに特別な意味はなかったと思う。
そんなことを考えながら整理をしていると、一冊のノートを見つけた。
そのノートには日記とだけ書かれていた。
読みたい。でも勝手に読むのは・・・と自分の中で葛藤を繰り返した。結局、あまりいい気はしないが読むことにした。
「この学校に転校してきて初日。サラッと自己紹介もできたし、ここではうまくやれそう。まさか初日から二人の人と会話をするなんて思っていなかったけど。何より一番自分自身に驚いた。私がまさか恋をするなんて。」
いやいやいや、驚いたのは僕の方だ。冬子に好きな人がいたなんて。僕は開いた閉じなかった。
そして、さらに下の行へ目をやると。
「初めて席に座るあなたを見た時、私は人生で感じたことのない胸の鼓動を覚えました。あれはきっと、私にとっての初恋だったんです。」
誰なんだ。冬子は誰に恋をしたんだ。それが気になって気になって仕方なかった。これを読んでいたらその相手が分かるかもしれない。僕はそう思うと自然と次のページにめくるような動作をした。
めくったページには衝撃的な一言が書かれていた。
「窓の外を眺めるあなたに恋をしてしまった。」
それって・・もしかして・・・。
お読みいただき、ありがとうございます。
更新が遅くなってしまい申し訳ありません。
いろいろと片付いたので近日中はこれまでのペースで更新したいと思います。