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君が笑った日  作者: そらまる
2/7

最初の会話。



「初めて席に座るあなたを見た時、私は人生で感じたことのない胸の鼓動を覚えました。あれはきっと、私にとっての初恋だったんです。」






僕は依然として自己紹介をする転校生の村上冬子を見つめている。

髪は黒髪でボブヘアー。身長もさほど高くはない。小柄で可愛らしい感じであった。

僕は誰かに恋心を寄せたことがなかったからか、落ち着きがなくなってしまい、ずっと胸の鼓動が聞こえていた。

自己紹介が終わり、村上冬子は席につく。と同時に僕の鼓動も少しずつ収まっていった。

席につく道のりまでも僕は一瞬たりとも逃さずにじっと見つめていた。

「可愛い」

僕の口から小さな声で漏れてしまったが、周りのクラスメイトは気づいていないようだったので、安心した。

チャイムが鳴ると同時にまたドアの方から僕の名前を呼ぶ甲高い声が聞こえてくる。

「真司ー!!」

全く、どんなスピードで廊下を走ってきたのだろう。今どきの男はこういう女の子がタイプなのだろうか。

僕は、ゆっくりと立って面倒くさそうに美空の方に向かう。

「転校生ってどの子?」

美空は興味津々で僕の面倒くささに気づくどころか僕がドアにつく前に聞いてきた。

「反対側のドアの近くの席に座ってる子だよ。」

「あー、あの子か!えっ、めっちゃ可愛いじゃん!!!」

当たり前だ。可愛いに決まっている。だって僕が一目惚れをした人なんだから。

村上冬子は、黙々と本を読んでいた。まだ転校して来て初日だからだろうか。いや、その割には半分くらい読み終えてるし、何より本屋で付けてもらえるようなカバーじゃなくてちゃんとしたやつをつけていた。この子は、あまり友達と話したりはせずに本を読んでいるタイプなんだなと確信した。

何故かわからないが、それが嬉しかった。

「私ちょっと挨拶してくるよ!」

「ちょ、ま、待てよ!」

僕の言葉なんて聞く耳も持たずに今度は反対側のドアから顔を出す。

「こーんにちわ!私は美空!このクラスじゃないんだけど、よろしくね!」

美空は軽い挨拶をしたが、村上冬子は驚いてた。無理もない。あまり人と話さずに本を読んでいるタイプの人間が突然見ず知らずの人に話しかけられたら驚くに決まってる。

美空はそんなことにも気づかずこう続ける。

「名前なんて言うの?」

驚きを隠せない村上冬子だったが、恐る恐る自己紹介をまた始める。

「む、村上冬子って言います…。」

「冬子ちゃんね!わかった!よろしく!」

完全に会話のペースは美空が握っていた。僕も、美空以外の人と話す時はあんな感じだ。

また、何故か嬉しく感じる。

「あっ、ちょっと待ってね!私このクラスに幼なじみがいてね、そいつ連れてくる!」

ん?美空の幼なじみ?このクラス?


僕じゃないか。


ついさっき初めてあった人と?人生で初めて恋をした相手と?いやいやいや、面と向かって話すことなんてできない。

と、そんなことを汲み取ってくれるわけもなく、僕は美空に手を引っ張られ反対側のドアまで引きずられた。

僕は村上冬子を目の前にし、収まっていた胸の鼓動がまた早くなった。ドキドキしていた。

僕は美空に早く自己紹介してと急かされた。普段なら絶対にしないが、今回ばかりは、勇気を出して、自己紹介をしてみる。

「さ、佐々木真司です。よろひっ…よろしくお願い。」



これが、僕と君との最初の会話。

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