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朴訥な人

「初めまして加瀬・・・昭三です」


緊張から名前が出ないのか

相当なうろたえ様だ。


父親は農家のお父さんと言う感じだな。

朴訥な人に思える。年齢の割には大きい。

175㎝はあるだろう。身長は父親ゆずりかな。

酒は強そうだが、大舞台は立てないタイプだな。


となりの母のほうが上手だ。

さすがバツ1と思ったら失礼かな?

でもこの人が離婚歴あり のおかげでオレはこうして居る。


「お初にお目にかかります。恭子の母でございます」


なんとなく、女将のように見えた。

物腰、しゃべる雰囲気は母親似、身長が父親似なのかな。


オレはいつかTVで見た、修行僧のように深々と土下座をした。


父親の緊張が酷くて世間話がなかなか進まない。

母親として、夫を差し置いて話すのもどうか?

迷っているように見えた。


加瀬恭子はオレの横、少し離れた所にいた。

正座で下を見たままフリーズしている。

髪が長くなって表情がわからないから貞子のようだ。


しかたない、1番リラックスしているオレから話をふることにした。


自分はこういう経歴の人間です。

52歳でバツ1、しかも離婚してまだ1年経っていない。

年齢と離婚歴がマイナス要素となって彼女にアタックできなかった。

今回話し合い、彼女が橋渡しをするので正式に挨拶をということで

こうして、お邪魔しました。私は娘さんと一緒になりたいと思っています。

ご両親のお心をお聞かせいただきたい。


両親に挨拶ってこんな感じだったかな?

なんせ27年ほど前のことだったので覚えてない。

しかも、50ずら下げた男の言う言葉としては適切なのかな?

そんなことを考えていた。


あいかわらず父親は微動だにしない。

加瀬恭子も同じく。

母親だけが、話すか、話すまいか?で旦那の顔を見ている。


沈黙は10秒でも、重苦しいものだ。

まるでシーンという文字がマンガのふきだしで

漂っていそうだなと思いながらオレは床の間を見ていた。


「小林さん・・・・」


オレは母の声で我に返った。


「今回のお話、誠にありがとうございます」


「私も離婚歴がございます。なので、あなたの葛藤はよくわかります。

    でも、あなたがこの子を大事に思ってくださってるから

         だから、それだけ苦しまれたんだと思っています」


オレは母の言葉にお礼を言ったつもりが声にならなかった。


「恭子は、長身がコンプレックスで苦しんでいたんです」


「それを救ってくださったのが、あなたのお言葉だったそうで」


「私は恭子から、初めての出会いのお話を聞いて

    ああ、その部長さん、独身だったらなぁ・・・と心から思いましたわ」


なんでもあっけらかんと言う人だ。

やっぱり加瀬恭子は、母親似だな。


それに反して、父親のほうは仏像のように動かない。

正直、オレはこういうタイプは苦手だ。

相手を慮るのも大変だし、読みが外れれば大変なことになる。


母親は概ね賛成。


どうなんだ?お父さん? 


まだ一言もない。


朴訥な人間が出す一言は重い。





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