再確認
『ご両親、オレを知ってるのかい?』
「ええ、公務員さんとお別れした時、母と話したんです」
「やっぱり親ですねぇ イイ勘してますよ。
誰か好きな人いるんでしょ?だから別れたんでしょって」
偉いもんだな。オレも親やって20年以上だから分かる。
娘が結婚に踏み切らなかったのは、気になる男がいるからと読んだんだ。
「全部じゃないけど、良二さんの事、話したの。
私をデカいと言わない、女として扱ってくれる人って」
『お母さん、なんて言ったんだい?』
「ダメなの?アタックしなよって」
『バレーじゃねえぞ。君のお母さん、気楽に言うんだなあ』
「実は。母は再婚なんです。離婚してお父さんと知り合ったから。
なので、母は良二さんがバツ1でも気にしないんです」
『え~!そうなんだ?じゃあ、オレダメじゃないのかな?』
「なにがダメなんですか?」
『バツ1の52だし、ダメってことはないんだ?』
「それ、良二さんが1人で言ってることだけど・・・」
『だよな・・・こだわりすぎかな』
今まで並べていた断り文句ってなんだったんだろう?
どうやら、オレの価値基準は偏見だったようだ。
そうだよね、再婚してる奴、けっこういるものな。
うちの元嫁だって再婚したかもしれないし・・・
『オレ資格あるのかい?』
「勝手にダメだって決めてただけでしょ?」
そう言われればそうだ。
オレは結婚適合者を自分の物差しで決めていた。
バツ1に結婚する資格がないわけがない。
年の差婚もあるよな。世間には。
黙り込んでいるオレに加瀬恭子は言った。
「私だって、良二さんのお父さんに断られるかも?」
『どうしてだい?』
「若すぎるとか、デカいとか・・・ですよ」
『絶対に断らないさ。というか断れないし』
「?」
『この間、死んだからね、オレは天涯孤独。気楽なもんさ』
「そうだったんですか。ごめんなさい」
『謝る必要はないさ。オレの年だもの。自然のことだよ』
「じゃあ、本当に反対する人、居ないですよ、ね」
『席が空きました、どうぞ感 ないか?』
「ええ」
『友達にオレ、紹介できるかい?』
「もちろん。言いふらしたいですけど?」
オレは不覚にも泣きそうになった。
こんなにオレを愛してくれている。
本当にいいのか?
『すぐ介護になるかもしれないぞ』
「オレの彼氏の悪口、止めてくれるかな?」
「バーイ(by)良二」
屈託なく笑う。
少しうつむいた瞬間、肩を少し超えた髪が揺れる。
チラとイヤリングが見えた。




