え~?
今日は確実に最後の話合いだ。
だから、早めに済ませて、帰ろうと思った。
おもむろに尋ねた。
『それはそうと、彼とは上手くいってるのかい?』
「・・・・」
『それとも、婚活で、イイ人見つかったか?』
加瀬恭子は池を見つめながら静かに言った。
「今日はその話で来たんです」
来たな、と思った。
でも彼女の口から結婚の2文字を聞くのがイヤで
オレは黙って池を眺めていた。
「以前、お話してた人、公務員の40歳。いたでしょ?」
『うん』
「結局、別れたんです」
『え~?』
思わず中腰になって驚いた。
なんでだよ?なにやってんだよ?
瞬時に言いようのない怒りがこみ上げる。
思わず彼女を睨みつけて呟いた。
『なにやってんだよ?イイ線まで行ってたんだろ?
別れたのか?なんだよもう~』
「懐かしい~」
『え?なにが?』
「部長に会えました。3部の時の!」
そう言って加瀬恭子は懐かしい目をした。
オイオイ、そこかよ?そんな話じゃないじゃん。
あきれてオレは怒りのやり場が無くなった。
彼女は困った顔をしたオレに笑いながらこう言った。
「私もまた独りになりました。という報告と
今後どうするか?の相談で今日来たんです」
「この間、スカイプで婚活しようって言ったでしょ?
実は、もうあの時、お別れしてたんですよ」
そうだったのか・・・・でも、どうして別れたんだろう?
オレは理由を聞きたかったが、自分からは言い出せなかった。
なので、条件よかったのに、オレが女なら・・・と繰り返し愚痴を言った。
「お別れはいつものパターンだったんですよ~」
『なんだい、いつものパターンって?』
「良二さんに全部言うの、恥ずかしいけど。いいや。
その代わり、前向いて、返事もしないで聞き流してくださいね」
彼とは結婚前提にお付き合いということで一応OKした。
プロポーズの返事はしていなかったが、付き合いが始まる。
何度かデートを重ねて、彼がキスを迫って来た。
正直、気が進まなかったが、しかたないと思った。
その時、彼が言った。
「少しちょっと、ねえ、加瀬さん?」
何事かわからなかった彼女は少しうろたえた。
その態度にイラつくように彼が言った。
「ちょい、かがむか、なんかしてよ。デカいんだからっ」
彼にすれば照れ隠しの冗談だったのだろう。
でも【デカい】は、お別れフラグだった。
「こいつもだー って思わず思いました、それで終わりです」
「独身同士、真剣に考えませんか?」
彼女は恥ずかしそうに言った。
『考えませんかって、前言ったじゃん、オレ、ひっかかってるって・・・』
『離婚して、ハイ、席が空きましたよ。的な話だよ、これは、どう考えても』
「私は全然気にしていないけどな・・・」
『君が気にしなくても、ご両親がこの話聞いたら、大反対だぞ』
「別に反対しなかったですけど?」
『!!!』
あまりの驚きに声が出なかったオレは
中腰のまま加瀬恭子を見つめた。




