ラストチャンス
毎日の生活の中で仕事だけが順調だった。
面白いものだ。
若い頃、苦労した仕事が段々良くなっていった。
大器晩成と言われて満足したこともあった。
結婚は周りで早いほうだったが不満は募るばかり。
ついにはよくある熟年離婚。
まあ、でも、不満を抱える生活から解放された。
これは大きい。家事は大変だけど、慣れてもきたし
ストレスが無いことで長生きできるような気もしている。
あとは・・・・
加瀬恭子の問題だ。
オレのせいで彼女の婚期を遅らせている事。
これがクリアできれば、オレはすべてにおいて解放される。
彼女からのメールを見るたびに同じことを思う。
ある程度ストレスがあったほうが精神的にはいいと言われている。
この悩みはオレの心にどれくらいの負荷をかけているんだろう?
仕事中はそれほどでもないが、いつも通り仕事が終わり、車に乗り込む。
行きつけのスーパーへ行き、夕食の段取りをするころ、仕事帰りのOLなど
背格好の似た女性を見るたびに、彼女を思い出す。
メールしてみようかな?
そんな事も思う。
情けない話だ。自分で決めて自分で揺れて。
こういう態度が彼女を惑わすことになるのかもしれない。
今日も面倒だ、弁当にしておこう。
いつも通り、20%引きのシールの弁当にする。
晩酌をしないオレは弁当と少しの食材を買いスーパーを出る。
マンションまではすぐだ。歩きながら思う。
今までの住まいは離婚で手放した。
実家は少し手直しして、住めるようになった。
あと1、2年かな?誰かに貸すか?
そのへんの相談は会社に頼もう。
住宅メーカーに勤めていてよかったと今更思う。
いっその事、実家を売ってこのへんでマンション買うかな?
そんなことを思いつつマンションに着いた。
もうオレの家だな・・・ここが。
そう思いながらポストを見る。
宅配チラシの中に封筒を見つけた。
加瀬恭子・・・・
宛名を見るだけでわかった。
忘れることができない彼女の字。
3部の頃を思い出してしまった。
オレはエレベーターの中で封筒を開けたい衝動にかられた。
早く部屋へ着け!開くのボタンを何度もたたく。
あわてて部屋のドアを開け、玄関で手紙を開く。
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良二さんお元気ですか?
メールも電話も忙しそうなので手紙にしました。
アナログもオシャレでしょ?
お仕事は順調みたいですね?いつ本社に戻られるのかしら?
小林部長が復帰されたら、私、また採用試験受けようっと。
どうか中途採用募集してくださいね!
あと、彼女見つかりましたか?
1番気になるところだったりして。
いきなりですが。
1度会えませんか?
1時間でいいんです。
お話したい。どこかで会えれば。
最後になっても構いません。
あなたに会いたい。
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たしか、お別れはないって約束したっけ。
そんなことを思い出した。
最後にするつもりかな?
これが彼女を諦める最後のチャンスだと思った。




