どうかお幸せに
オレのメールが気に入らなかったのか?
すぐに返信が来た。
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あまりにそっけない返信が気になります。
会ってお話してください。お願いします。
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その返信をオレはしなかった。
強引に彼女を突き離すことが1番だと思った。
きっと、天涯孤独になった。という意識が
冷酷な対応をさせたのだろう。
そのあと、加瀬恭子のメール攻撃はすごかった。
毎日毎日、メールが送られてくる。
ラインだと既読となるが、フリーメールはわからない。
彼女はメールを読んでいないのか?と思ったのだろう。
今度は携帯に何度も電話をしてきた。
かわいそうだが、オレは無視をした。
そろそろほんと、結婚してくれよ。
たぶん、彼と付き合って1年近いはずだ。
もうこのまま、オレとは切れてくれ。
オレはヤケクソでそう思ったのではない。
やはり離婚が大きく影響している。
いろんな思いが交錯した。
加瀬恭子と一緒になる為の離婚だったのではないと宣言したい。
けっして淋しさを埋めるために彼女を愛したわけではない。
バツ1男より、真面目な公務員と結婚したほうがいい。
年齢的に年が近いほうがいい。オレは要介護になるだろう年齢だ。
そして、もし結婚したとして、生まれた子供は孫の年齢。
年老いた父は子どもにはかわいそうだ。 オレなら生まれたことを恨む。
ほかにも理由はいくらでもある。
彼女の両親はオレと10歳ちょいしか変わらない。
娘の結婚相手は、オレからすれば、兄貴、姉の年齢だ。
自分が結婚相手に、相応しくないという理由を心の中で並べる。
堕ちてしまった感情を拾い上げることができない。
父親の死が重くのしかかるんだな。
母を懸命に愛した男の息子が最低の不倫男なんだ。
その思いもあって、自分を責めてしまう。
自責の念が加瀬恭子を遠ざける感情につながった。
彼女からは、たまにメールが来ていた。
オレは完全無視はできなかった。
話はしよう。との約束だったから。
本当にありきたりのメールをする。
彼女の質問には答えるが、感情は殺してメールをした。
彼女への想いを募らせないようにするための文章だった。
そんなやり取りの中、彼女は一向に、彼の話をしない。
気を遣っているのか?オレは気になっていた。
興味本位ではなく、ちゃんと付き合って
結婚に向けて進んでいるのだろうか?
相手の公務員は40だったな。
きっと慌ててるだろう。
オレの存在でこの話が頓挫しているのかもしれない。
自惚れでそんなことも思う。
どうかお幸せに。よく使われる言葉だ。
本当に心から願う。
加瀬恭子、結婚してくれ!
そうなれば、オレも解放される。
そんな気がした。




