ゲス野郎
松野と飲みに行くことになった。
3部の話を聞こうとしたが、彼にすれば
離婚の話が聞きたかったのだろう。
家がどうなったのか?何度も尋ねてきた。
しかたがなく離婚発表。
詳しく話はしなかったが、彼は驚いていた。
オレはあまりプライベートを語ることはなかったし
生活も困っていなかったから、離婚は本当に驚かれた。
オレは仕事の話に戻した。
ニュータウンのこの調子だと、あと2年くらいで戻れるかも。
大変だと思うが、みんなを引っ張って、がんばってくれ。
オレは3部に返り咲くつもりだ。それまでがんばれるか?
松野は泣きながらオレに言った。
辞めようと思いましたが、待ちますよ。
その言葉をみんなに伝えます。小林部長の日を待てと。
オレ達2人は泣きながら飲んだ。
帰り際、松野が駅まで送りに来た。
オレは改札で最後に言った。
『松野。いいか?さっき頑張れって言ったけどさ』
「はい」
『もう無理だと思ったら、辞めろ。自分を犠牲にはするなよ。
いいな?お前はオレのかわいい弟なんだからな』
松野はその言葉を聞いて泣き出した。
改札を抜け、オレが列車に乗っても、その場を動かず泣いていた。
オレは家に着くまでの間。
ずっと考えていた。
加瀬恭子はあのメール。どう思ったのだろう?
家が無くなったなんて。借金でもしたことにしておこうか?
そうすれば、借金男に愛想を尽かして、オレを忘れるだろう。
そんな事を思いながら家に帰る。
3日見ていないPCのメールを確認する。
加瀬恭子からメールが。
オレは驚きつつも、それを待っていた。
嬉しかった自分が居た。
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良二さんお久しぶりです。お元気ですか?
戻っておいでだったんですね?
松野課長にメール送信ミスですか?
でも嬉しかった。たとえミスでも。
私はもうメールもらえないって思っていましたから。
でも。どうしたんですか?
家が無くなったとか、他人が出るとか。
心配してはダメですか?聞いてはダメですか?
もう、良二さんとは縁が切れましたか?
私はどんな形でも永遠につながっていたいです。
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今、独身になって、この文章はキツイなあ・・・
オレが独身になったってわかったら彼女はどうするんだろう?
今の彼と別れるかな?
それこそ自惚れの何物でもないな。
何度も思う。
さ、席が空きましたよ。みたいな話は人として許されない。
オレは心底ゲスにはなりたくない。
彼女の幸せを祈り生きていこう。
ゲス野郎にも良心はあるさ。




