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がんばれよ!

松野との電話を切って、オレはすぐに検索した。


難破船。中森なんとかの歌なんだな?

古い歌だ。歌詞も検索した。



【たかが恋なんて忘れればいい

 泣きたいだけ泣いたら

 目の前に違う愛が見えるかもしれないと・・・】


オレは歌詞を噛みしめた。

どういうつもりの選曲だったんだろう?

元々歌ってたのかな?でも泣いてたなんて・・・


あの説得から1か月以上経った。

もちろん彼との付き合いは一切尋ねていない。

メールでもその後の進展をオレには教えてくれなかった。


退職するのかよ?結婚するのかな?

それでいいんだ。でも、泣いてたなんて?

彼女は社内ではお笑いキャラだった。

身体の大きさを自虐ネタでカバーしていた。

容姿と真逆のキャラが魅力でもあったはずだ。


難破船。オレは何度も動画サイトで歌を聞いた。


この歌が彼女の想いなら・・・

そう想像するのはオレの自惚れなのかもしれない。

ただ単にこの歌に感情移入しただけのこと。

この状況をどうすることもできないオレは

そう自分に言い聞かすしかなかった。


極端な話、3部が潰れても、それはしかたない。

でも、彼女は違う。勝手に惚れて、抱いてオレの物にした。

責任を取らなかったことを今更悔やんでもしかたないが。


3部。加瀬恭子。両方とも、眺めているだけ。

助ける術も力もオレにはなかった。


でも、本当に彼女は幸せになってほしい。


そう思いつつメールをした。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

松野から連絡があったよ。

3部、どうしようもない状況なんだな。

オレに一切教えなかったけど。

少し時間があれば、話聞かせてくれないか?

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



あの電話での説得以来、久しぶりのスカイプだった。

彼女はおかしな素振りも見せず、普通に話をした。

婚活に触れず、仕事の話だけだから彼女も気楽だった。


3部の事態は松野の報告通りだった。

経理のみんなも憔悴しきっていたらしい。

オフィスの空気にはもう耐えられない。

そんな話をしてくれた。


「良二さんの居た時とは全然違う。まるで別の会社みたい」


『どうだい?勤めるのイヤにならないか?』


オレはわざと呼び水のような問いかけをした。

松野から話を聞いている事を知らない彼女は言った。


「私ね・・・実は辞めるんです」


『え?いつ?』


オレは驚いた振りをして言葉を引き出そうとした。


「仕事はもちろんイヤじゃないんですけど。

        雰囲気が本当に辛いので、もう限界です」


限界か・・・松野と同じセリフだな。

本当に残念だが、辞める。辞めて実家に帰ろうかと思う。

そんな話は初耳だった。


「この前、私にアドバイスくださって

       考えたんです。ちゃんと未来を見据えないと。」


「なので、実家に帰って親とも相談して。答えを出さないと

               先方にも失礼ですから・・・」


公務員のプロポーズだな?

オレはそう思ったが聞けなかった。


結婚を受け止めたくない哀れな男は


がんばれよ!


とわざと彼女を励ました。






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