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2月26日

当日がやってきた。


オレの休日に合わせてもらった26日。

226事件。たしかクーデターだったな?

そういう事件にならないようにしなきゃ・・・


いろいろ考えながら家に戻る。

いつも通りのリビング。なぜか?妻の顔が優しく見えた。

妻はオレにコーヒーを入れようとしていたが断った。

早く終わらせたかったオレは開口一番こう言った。


『離婚の条件さ、財産分与とかいろいろあるけど。

     オレまず言うからさ、気に入らない部分言ってくれ』


そう言いつつ、ICレコーダーを取り出し、スイッチを入れる。

赤い小さなランプがなんとなく悲しく見えた。


オレの提示はこうだった。

基本、妻の要望を呑むようにしたい。

共有財産は折半。各々個人の財産、動産は自分のもの。

そんな感じの話をした。


オレは切れるならキレイにお別れしたかった。

跡形もなく、この26年間を精算したかった。


財産分与 子供の籍など1つ1つを確認しながら話す。

離婚理由は性格の不一致、価値観の相違。という事になる。

不倫が理由とならない事は本当にありがたかった。

おかげで、慰謝料の話はでなかった。

それこそ、妻も男が居たかもしれない。

でも今はもう、どうでもいい事だった。


この家はオレの名義だが、売却してその金額を折半する。

銀行口座にあった貯金は2人の物だからこれも折半。

ただしオレ個人の預金はオレの物。お前の個人口座は知らない。

子どもの姓は本人たちの選択でいい。小林家を継ぐ必要はない。


そんな話をした。条件としては悪くないだろう?

オレとしては不倫をしている慰謝料のつもりもあって

妻に多くの分配を考えたのだった。


もっとひどい状況を考えていた妻は泣いていた。

皮肉なものだ。オレは初めてこいつが感謝で泣く所を見たんだな。

そう思うとよけいに悲しくなった。


家、現金で総額約2000万ほどが妻の取り分になる。

その代わり、2度と会う事も無いし金のやり取りも無い。

完全に縁が切れるのだ。

まだ事がなってないのにオレはよかったと思った。

揉めずに話ができた。これほどうれしいことはなかった。

面白いもので、オレ達は久しぶりに仲睦まじく語りあった。


弁護士の段取りは妻に頼む。

ひょっとしたら、弁護士の用意はしていたかもな?

知らないのは、オレだけなのかもしれない。

まあ構わないさ、縁がきれいに切れるのなら。


オレは妻のPCに、ICレコーダーから音声をコピーした。

聞き直して、文句あったら言ってこい。そんなつもりだった。


でも、それこそ杞憂だった。

協議離婚は話し合いの通りで、無事に成立。


その後、すべての手続きが終わり

オレはその年の夏、晴れて独身に還った。


閑話休題


あとは加瀬恭子とのお別れだ。


離婚より遥かに辛い協議になるだろう。


正直、彼女に伝えたかった。

オレ、離婚したんだ。

君と再スタートを切りたい。


どれだけ身勝手なんだろう。


オレはそこまでクズじゃないさ。


クズじゃない。


そう言い聞かせて。


オレは生きていく。



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