2つの準備
離婚が現実になる。
喜んでいいのだろうか?
来月には具体的な話になるだろう。
協議離婚を必死に検索する。
あいつの事だ、弁護士を雇わずに話がしたいだろう。
子どもが成人していれば、親権の争議がなくなるんだ。
養育費は要らない。あとは慰謝料、財産分与だな。
オレはほとんど取られてもいいと思っていた。
金がどうこう、もう聞きたくない。
26年間。足りない、もっとあれば、ため息・・・・
いつも家庭内取り立て屋に文句を言われてたんだから。
この家やっぱり売ってもいいな。
表札を見た時、玄関で外そうか?と思ったのはデジャヴだな。
幸いオレには親父の家がある。売ってワンルームでも買おう。
独りになったあとの生活設計を考える。そんな正月休みになった。
休みが終わり、また仕事が始まる。
年明け早々、家を買う人は少ない。
ただ、去年、契約して、春の入居をめざす人々の
家を建築中なので、分譲地自体は活気づいていた。
こうして工事が盛んな所は人も集まる。
新春住宅フェアと銘打ったイベントも成功した。
オレのプライベートと反比例するように仕事は順調だった。
アッという間に2月になった。
話し合いは月末の26日ということになった。
よかった、12日ではなくて。
この日は加瀬恭子と少し早いバレンタインを過ごす約束だった。
どうしようか?
加瀬恭子に離婚の話、伝えるべきか?
26日にはほとんど答えが出るだろう。
協議離婚は双方が歩み寄れば早いと聞いている。
案外3月には晴れて離婚成立になるんじゃないか?
そうなる前に伝えるべきか?
別れたよ、ハイ、これからは堂々とつきあえるよ。
いや、違う。彼女と付き合うために別れるんじゃない。
彼女は今、婚活中だった。
このことは伏せておこう
彼女が結婚してからも言う必要はない。
幸せになってくれればいい。
オレは少しの期間、心の支えになれればいい。
そう思いつつ、夜、スカイプでいつもの笑顔に会う。
オレは彼女に、婚活の状況を尋ねた。
今、それほどでもないけど、1人の男と連絡を取り合っている。
年は40歳、未婚の公務員。真面目な男だけどつまらないらしい。
でも悪い人ではない。三男坊なので親の面倒は見なくていいらしい。
いい条件だ。オレは思った。
今度の12日、バレンタインデートは止めよう。
これをきっかけに、オレも離婚。彼女も、その公務員と付き合う。
お互い、スタートラインに立つ。ということでお別れだ。
まてまて。あと10日あるな。
今から中止はわざとらしい。
そうだ!親戚に葬式が出たことにしよう。
8日か9日に言えばいいな。
オレは離婚準備と共にお別れの準備もするつもりだった。




