メモ
朝になった。
妻は普通にしているが、オレは大体読めていた。
きっと奴は断る。まあオレ自体、そんな気もなかったが。
手握られただけで飛び上がるなんて、他人だものな・・・
やっぱりこいつ、男がいるのかなあ?
まあ居てもいいや。オレが不倫してるんだし。
恐ろしいもので、オレ自身、罪の意識はゼロだった。
不倫を肯定していた。妻の態度が言い訳だった。
昨日の提案を断られたら、どう話しよう?
理由のないセックス拒否が続いてレスの場合
確か、離婚の理由になることがあったはずだ。
オレ達終わりだな?と話を切り出すか?
そして離婚の協議に進むんだろうか?
数えきれない?マークが頭をよぎる。
オレは、夜まで出かけることにした。
『オレ、ちょっと出かけて来るよ』
「え?どこへ行くの?」
『夜までヒマだしさ。パチンコでも行く。昼は要らないよ』
そう言いながら、オレはメモとペンを取りメモをする。
妻はその光景を不思議そうに眺めながらカウンター越し。
時間にして、1分ほど。オレの作業は終わる。
「なに書いてるの?」
オレはそれに答えず、メモ書きを折りたたんだ。
妻の目を盗んで、その紙をマウスパッドの下に挟み込んで隠す。
さあ、お出かけするかな。オレが居ないほうが妻もいいだろう。
『じゃあ、夕飯には帰るよ』
街は年末であわただしい。我が家では正月の迎春準備はしない。
夫婦2人の生活になってからは、面倒だし、何もしない。
おせちも食べないし、普通に過ごすのが通年だ。
駅前を歩く。忙しそうな街並みを見る。
以前、待ち合わせをしたビデオ屋の前を通る。
ふと加瀬恭子を思い出す。会いたいな。
彼女は家族と楽しい正月を迎えるのだろう。
何の目的も無く夜を待つ。
街を彷徨うのは得意技だ。
5時すぎには日が落ちる。
さ、帰ろう。どんな顔でオレを待っているのか?
《小林》
この表札、すぐ外れるのかな?
何故か?そんな事を思いながら玄関に立つ。
無言でカギを差し込み、ドアを開ける。
リビングには妻が居た。
オレは何も言わず、いつもの座椅子ではなくテーブルに座る。
まだ食事の用意はできていない。
「あの・・・あなた」
「あの・・・私、今日、昼から身体の具合が悪くて・・・」
オレは妻の言葉を遮って言った。
『PCのマウスパッドの下にメモがあるんだよ。
朝、書いてたの見てただろう?取ってくれよ』
「なんで?自分で取ってよ。私具合が・・・」
へーまだ言うんだ?
そう思いながらメモを取りに行く。
妻に無言で渡す。一読して顔色が変わる。
メモにはこう書いてあった。
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女の子の日なら昨日言うはず。
朝一で断りは露骨すぎる。昼から体調不良が自然かな?
熱は計ればバレる。吐き気か腹痛、頭痛くらいになりそう。
フェラでも求められたらどうしよう?
絶対逃げなきゃ~(泣)
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