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別れの予感

「原田常務から電話があったのよ。帰ってるか?って」


原田のクソ野郎、家に電話したんだな?

妻にすれば何のことですか?となるだろう。

それで、オレに電話してきたのか。

なるほど、理由がわかれば、なんてことは無いな。


オレはこの会話を隠さず話そうと思った。

妻との不仲が本当だということを加瀬恭子に聞いてほしかった。

わざとスピーカーに切り替えてテーブルに置く。

加瀬恭子は怯えた表情で小さく座っていた。


『ああ、さっきまで飲んでたからな。で?なんだ?』


「あなた戻ってたの?何でなにも言わないのよ?」


『なんでお前に報告しなきゃならないんだ?』


「驚くじゃない?急に帰るなんて」


『急に帰る?オレ家に帰ってないだろう?』


「おかしいじゃない?帰るのに何も言わないなんて」


『あのさ?お宅、何言ってるわけ?

     《私に連絡も無く、こっそり帰って》 みたいに?』


『オレ、異動したの何月だ?オレからは用があって

     何度かかけたけどさ、お前から電話してきたの、初めてだよね?』


「・・・・・・・・・・」


『まともな夫婦なら、もっと連絡取るだろう?』


『帰ってほしいと思われてないから、オレは連絡しなかったのさ

            あの迷惑そうな声を聴くのがイヤだったんだよ』


『今どこ?だと? 何言ってんの?半年ぶりに?』


『どうして急にオレの消息をお尋ねになるんですか?

            入金の催促か?お問い合わせですか?』


「・・・・・・」



『オレの心配してないのに、電話なんか要らないんだよ』


「私は急にあなたが居るか?って言われて驚いたから」


オレは今回の凱旋帰国を説明する。

オレは仕事で戻った。常務と専務がオレを労って飲み会をセットした。

終わってオレは今、ホテルでのんびりくつろいでいる。明日朝、戻る。

オレは元気です。ちゃんと給料も振り込まれてますよね。

お金の件では、不自由や、ご迷惑は一切、掛かっていないと思います。

だからこそ、1度も連絡されなかった。


『いかが? 腑に落ちない部分があるなら、再度説明差し上げますが?』


「わかったわよ。常務さんからの電話で驚いただけよ。

         お仕事も順調なのね?よかったわ、安心したわ」


『順調ってわかるだろ?毎月、ちゃんと入金してんだし。 

               給料が滞ったら、連絡ください』


「私、そんな事言ってないわよ」


『言ってなくてもわかるんだよ』


「あなたがしんぱ」


『今日、初めて電話してきて、心配もクソもねえだろっ?!』


「・・・・・・・・・・・」


『お宅の腹ン中くらい読めるさ。そこまでバカじゃないよ。オレ』


「心配してるわよ・・・ほんとに」


『心配してくれてありがとう。ATM は元気に生きています。

             もし、なにか用事がある時はメールするよ』


「ええ、わかった・・・ごめんなさい」


『じゃあねー バイバイ~』


電話を閉じた。



バイバイ~かぁ・・・


これで


加瀬恭子ともお別れかな・・・・



 

        

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