恋人つなぎ
『おいおい、何だよ~』
オレは小走りで近づく彼女に声をかけた。
「驚いたでしょ?ごめんなさいね」
『駅に居るなら、初めのメールで教えろよ~
まさか?こんな待ち伏せ、嬉しすぎるよ』
「よかった、私、叱られるかと、ほんとは怖かったの」
「良二さん、帰ってくる日、教えてくださったでしょ?
あの時、あえて会わないって約束したじゃないですか?
「でも、今日だと思うと、なんだか会いたくなって
迷いつつメールしたんです。ごめんなさい」
彼女は仕事が終わり、独りで夕食をとり、ネカフェで待機していた。
オレにメールして、反応がなかったら帰ろうと思ったそうだ。
「やっぱり会えたのは、お守りのおかげかな?」
そう言って髪を上げ、イヤリングを見せる。
ああ、そういえば髪、伸ばしたんだ?
イヤリングを隠すためだという。
もし誰かに聞かれたら動揺するからだそうだ。
立ち話もそこそこにしないと、もう夜も遅い。
今までのように、躊躇しながら声をかける必要もない。
『お泊まり。いい?だいじょうぶかい?』
「ええ。明日もなにもないし・・・」
恥ずかしそうに笑う。
「でも、急に私が押しかけてもいいんですか?」
『メールした時から、そのつもりだったんだろ?』
「も~ せめて会いたいって思っただけだもん~」
そう言いつつ、オレにしがみつく。2カ月前の感触が蘇る。
ホテルの入る前、コンビニへ寄った。
明日の朝食を買うためだ。
モーニングブッフェに連れていけばいいのだが。
彼女もオレに合わせてパンでいいと言う。
飲み物とパン、スープとミニサラダなどを買う。
オレは彼女の目を盗んで岡本理研の小さな箱をカゴに。
レジで精算を終える。ホテルまでは7分ほどだ。
スターWホテル。
ドアマンが声をかける、おかえりなさいませ、小林さま。
隣の加瀬恭子は堂々としたものだ。笑顔ですこし会釈する。
慣れてきたのかな?いつものおどおどした感じが消えていた。
エレベーターで20Fまで。
うん、もうチェックは夕方に済ませてあるんだ。
それから原田たちに会ったから。部屋?いつもと同じだよ。
もともとダブルのシングルユースだから泊まれるさ。
オレ、会員だしさ。追加料金で大丈夫だよ。
スーッ。
説明が終わったと同時くらいにエレベーターが止まる。
ラウンジで1人宿泊を追加したいと説明。
コンシェルジュは、笑顔でオレからカードキーを受けとる。
ラウンジではナイトキャップの客がちらほら。
2人はコーヒーを飲みながらのんびり。
「小林さま、ご用意ができました」
新たなカードキー2枚を受けとる。
部屋は変わらず、21Fの 2122。
1F上でもエレベーターで上がる。
時間にして、30秒。
エレベーターの中で、恋人つなぎが終わる。




