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後ろの正面だあれ?

オレは慌てて返信する。


----------------------------------------

原田と藤木のお相手は終わったよ。

こんなことなら会いたかったなあ(涙)


今タクシーで駅前に向かってるんだ。

今日はWホテルで泊まるから。


家?火事で燃えちゃいました(笑)

オレも恭子ちゃんと距離が縮まったから嬉しいよ!


ではおやすみなさい!


-----------------------------------------------


返信メールはすぐだった。

今お独りですか?電話していいですか?

オレは彼女との会話を運転手に聞かれるのがイヤだった。

タクシーを降りたら電話するよとメールした。


西口に着く。

タクシー代を払う。チケットでなくてよかった。

チケットなら降車場を記録される。家と反対の駅前に行くのもおかしいし

まだ11時前なのだが、こんな時間に○○県行きの電車はない。


オレはわざと駅で降りて、ホテルまで歩くつもりだった。

そしてその道中、彼女に電話する。


『あーごめんごめん、今タクシー降りたよ』


そう言いつつ、のどが渇いた。自販機でコーヒーを買いベンチに座る。


「もう~ 家燃えてないでしょ~ めちゃめちゃ言うんだから~」


かわいいなあ。この声聞くだけでオレはメロメロだ。


彼女はオレが家に帰らない事に驚いたようだ。

まさか?ここまで夫婦関係がひどいとは思わなかったのだろう。

オレはせっかく単身赴任で幸せなのに、あいつの顔を見るのはイヤだ。

いつものホテルに入ることにしたのだ。ゆっくり過ごしたい。


「良二さん、今、駅前ですか?駅前のどこですか?」


『うん、wホテルにいくから。どうして?』


「ホテルは、あのスターWホテルですよね?」


『そうだよ、いつもの。なんだよ?あ!そうか?疑ってるのか?

                独りだよ~ ちきしょ~ 会いたいねえ?』


「会ってくれるのぉ?」


甘えたような言い方で尋ねる。当たり前だろう?

お泊りできるなら、追加料金いくらでも払う。


「今、本当に駅前ですか?」


『西出口のロータリーだよ。ほら、前、待ち合わせしたじゃん。

              宝くじ売り場の自販機のとこ』


「あ~やっぱり、あそこですね。はいはい」


『なにがハイハイだよ』


「どこでもドアでそこへ行っていいですか?」


『好きにしろよ。待ってるよ』


「そこから動いたらダメですよ」


『え?』


思わず立ち上がり缶を捨て歩道に出た。


「後ろの正面、だあれ?」


『え?』


「だから、後ろの正面だあれ」


何だよ後ろの正面って?

少しイラっとしつつ振り返る。


『え? ウソ!なんで居るんだよ?』


オレに返事を返さず、加瀬恭子は電話を切った。



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