表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/100

不安

オレは加瀬恭子の精神状態が心配だった。

あのメール、何度も読み返したが、文章が散漫すぎる。

理路整然とは言わないが、もう少しちゃんとした文を書く子だったのに。

淋しいという文字が気になった。 オレなら寂しいと打つ。


あわててネット検索する。


寂しい 客観的に静かな状態を見て、心が寂しい状態になる。

     荒れてしまった遊園地を表現するなら「寂しい」


淋しい 主観的にさびしい。自分が淋しい。泣くなど、より情緒的表現。

     独りぼっちの状況で、人恋しくなる状態「淋しい」


これ、わかっていて使い分けしているのかな?

淋しさも、また会いたいなあ くらいならいいんだけど・・・


彼女は大学卒業してから独り暮らしだと言っていた。

10年くらい独りなんだろうか?当然彼も居たと思うが

何年か?は独りだったんだな。


オレは妻への不満を、彼女で埋めたかったのだ。

彼女に替わる他の女が現れたら、そっちへ行くかもしれない。


彼女も独りの寂しさをオレで埋めてるのならいいんだけど。


オレは加瀬恭子と間に、会いたい の温度差が無い事を祈った。




10時すぎに呼び出し音が鳴った。


オレは3回、コールを聞いてクリックする。


「10時って言ったのに、遅れてごめんなさい~」


『いいんだよ、オレも今パジャマに着替えてゆっくりしたところさ』


「さっきはありがとう。見てください、似合うかな?」


『素敵だよ、かわいい』


彼女はイヤリングを着けた耳を見せながら言った。

さっきまでオレの腕の中に居た彼女がPCの向こうにいる。


何時間か前の思い出話を楽しく語り合う。

画面の向こうの彼女は本当に幸せそうだ。


オレも楽しかったのだが、話をしながら

ずっと彼女の未来を考えていた。


加瀬恭子は婚活ができるのだろうか?

いつまでオレの傍に居てくれるのだろう?

確かに、こんな逢瀬はときめくし、甘美な時だ。

でも、あと何年?こんなことが続く?


もし、彼女にこのまま彼ができなかったら?

35超えれば結婚はより難しくなるだろう。

年を取れば取るほど、自分が男を選ぶ権利は減っていくのだ。


オレと付き合う事が彼女のプラスには絶対にならない。

彼女の淋しさを埋める一時しのぎにはなるだろうが。


割り切った付き合いというのではなく

彼女の支えになる存在になりたいと思ったが

いざ、こうして付き合いが始まるとオレは不安になった。


速めに別れたほうがいいのかな?


結局、オレは怯えてるのかもしれない。

不倫の果てに、家族崩壊、離婚、慰謝料。

そして最後は一文無しになるオレ。


そんな最悪の事態を想像して、先に布石を打とうとしてる?

彼女も既婚者なら家庭というものが、わかっている。

でも、独身女性の不倫ってどういうものなんだろう?


それこそ、こうなる前にもっと考えておくことだった。

いや、こうして不倫をした時点で、オレはもう終わってるんだな。


楽しそうに語りかける加瀬恭子。


その笑顔とボーイッシュな髪型に似合うイヤリングを見て


オレは浮かれてはいない自分に気づき始めていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ