正直な感想
オレはどうすればいいんだ?
風俗嬢を抱いたことはあっても、恋愛はもう26年していない。
オレが彼女とつきあっても構わないんだろうか?
本当にこの子のプラスになるんだろうか?
オレはこれが最後だと思い、正直に今の心境を伝えた。
オレは妻への不満で君に逃げてるのかもしれない。
それでもいいのか?本当の愛じゃないかもしれない。
オレはいざとなったら家に逃げることができる。
君は帰る家庭がない。それでもいいのか?
彼女からは意外な答えが返ってきた。
「私も同じ感覚なんですよ」
『オレと?』
「ええ、彼ができない寂しさを、部長で埋めるんです。
彼ができちゃったら、さよなら~って逃げますよ」
『こんなじじいで埋められるのなら、ありがたいよ』
「彼になってもらえるなら、私ほんと、嬉しいです」
「部長に愛を頂いて、そのパワーでがんばって、彼氏探しますよ!」
「って、虫が良すぎますよね。これって・・・」
オレにとっても、こんな都合のいい話はなかった。
こういう話の持って行き方だと、不倫もしかたないかもと思えてしまう。
寂しい者同士がお互いの傷を舐め合い、がんばろうという事だ。
でも不倫はあくまでも不倫。
純愛だとか、しかたなく、と理由をつけても所詮は言い訳だ。
そうとはわかっているが。オレはこの話に乗りたかった。
『じゃあ、オレたちは離れても連絡とりあっていこう。
で、月に1、2回はこうしてデートしようか!』
「ええ、約束ですよ! 私は今から彼女ですからね!」
そう言うと、恥ずかしかったのか?顔が急に紅潮した。
「キャー 赤いですよね? 私、すごい調子乗って恥ずかしい~」
笑いながら照れ隠しで、オレの肩を叩く。
こういう所は本当に女の子だなあ。
まるで中高生じゃないか?よほど男と付き合ってないんだなあ。
失礼な事を考えながら、オレは時計を見た。
11:38 !
ここで1時間以上も話していたなんて、気づかなかった。
『加瀬くん、ヤバい、急行の時間だ』
「え?部長、覚えていてくださったんですか?」
『当たり前だろ。今から走ればなんとか間に合う、行こう!』
オレは彼女の右腕を取り、立つように促した。
彼女は携帯を取り出し、言う。
「あと5分では無理ですよ、それに私まだ少し酔ってるので・・・」
「少し時間はかかりますけど、普通で帰ります」
『加瀬くんちは、駅からどれくらい歩くんだ?』
「10分くらいですかね?」
『○○駅だったな。深夜は人通りもあまりないな』
『よし、タクシーで帰ろう。いくぞ』
「えーもったいないですよ、電車ありますから」
『オレの彼女になってくれたんだろ?言う事聞きなよ。
心配なんだ、歩かせたくない。言うこと聞いてくれ』
「なんか感激です~ 私心配してもらったことなんかないですもん~」
『あ~あ~ かわいそうに。これからうるさい爺さんに管理されるぞ』
「初体験ですから、管理されたいです」
笑いながらベンチを離れた。
駅のタクシー乗り場に向かう。
距離にして5、600m、時間にして7分くらいだったと思う。
オレたちは初めて腕を組んで歩いた。
やっぱり、この子、デカいな・・・




