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似たもの同士

オレは何度か離婚を考えたことがある。

ネットで離婚をした人の体験談を多く見てきた。


自分なりにシミュレーションをしてみた結果。

結局は、相手のせいでの離婚をしなければ損をする。


妻は損得勘定に長けている。

家事などは一切おろそかにしない。

私に非は無い。それが妻の最大の武器だ。

それでも離婚したいなら、持ち家と財産を頂きます。という事だ。

きっと、今後なにが起こっても妻は離婚しないだろう。

オレが死んでも保険が入るし、そこまでは居なきゃという感じなのだ。

結局、オレも生活の上で世話をしてもらうために暮らしていた。


そんな毎日から逃げたかったオレは不倫も夢みたことがある。

恋愛がしたい。愛されたいし、愛したい。

出会い系サイトを覗く事も何度かあった。

でも実際に行動を起こす勇気もなく、毎日が過ぎた。


そんな中、加瀬恭子に出会う。


オレが彼女に一方的に好きだ言ってしまった。

50の既婚者が、惚れても彼女にすれば何のメリットもない。

オレが異動するほうがこの子のためだ。

きっと神様がオレをこの子から引き離すために異動させるんだ。


沈黙の間、そんなことを考えていた。


加瀬恭子はおもむろに口を開いた。


「私、部長が好きです。でも結婚できないから何にもならないって

           でも離れたくないって、答えが出なくて迷うんです」


『今回の異動は神様の配慮だよ。君への思いを募らせても、ダメだから』


『さ、もう遅い、そろそろ帰るか』


そう言ってオレは立ち上がった。

その瞬間、加瀬恭子はオレの左腕を掴んだ。


「待ってください。こうしてお話できるの、最後なんでしょ」


泣きそうな声に引き戻されてスローモーションで座る。

オレは本当に意志が弱いなあ・・・・


「たしかに部長に愛していただいても、未来は無いかもです」


「でも・・・」


「やっぱり愛されたいんです。女ですもん、恋愛もしたい」


「結婚相手は探しますから、部長はこのまま傍に居てほしいんです」


『でも、今回異動するんだし、傍に居てって言われても無理だよ』


「ネットでいくらでも会えますよ。実際2時間もあれば会えるでしょ?

              こうして会うことは不可能なんですか?」


『そりゃそうしたいけどさ。単身先で君と連絡とって、デートしてたら

              世間では不倫ということになるから』


「私、かまいません」


『オレも別にかまわないというか・・・お願いしたいくらいなんだけど』


「正直ですよね、部長って」


加瀬恭子はクスっと笑った。


『真面目な話。君に不倫の片棒担がせるのがイヤなのさ。

      オレは自己責任だ。でも未婚の君を共犯者にはできないよ』


「私ね、こうして部長と会って、愛を頂いて。

       がんばろうって思えて。ほんとに支えてもらってるんです」


『オレが支えになるのかな?』


「私、部長に出会う前から、ずっと独りでした。

        彼も居なくて、本当に寂しかったんです」


「少しでも誰かと歩んだ時間が欲しい、独りはイヤです」



独りはイヤ。


そうだ、オレも独りはイヤだ。


オレ達は似たもの同士なのかもしれないな。







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