悪友推参
オレは毎日、同じ事ばかり考えていた。
だいたい、噂になるってことは進展してるからだ。
もし、彼女が即、キックしていたら、話はそこで消える。
撃沈したんだって~ と、おトキは言うはずだ。
付き合ってるかどうかはわからないけど、進行形だな。
でも、それでいいんだ。加瀬恭子に彼ができる。
幸せな結婚してくれ!あの夜そう言ったんだ。
オレは自分に言い聞かせる。
『なに勘違いしてんだよ?いつ?あの子がオレの女になった?
30の男と51のオヤジと勝負になるか?』
『だいたい、お前、嫁さんいるじゃん・・・・』
そうだ、いくらあがいても、オレは既婚者。
彼女が100歩譲って、オレの相手をしてくれても、所詮は不倫。
加瀬恭子の幸せを願うのなら、これでいいのだ。
でも。
ほんとに付き合ってるのか?知りたい!
そんなある日。
○○営業所の所長、谷元から電話があった。
彼はオレと同期入社の生き残りだ。
インテリだが元暴走族、ケンカも相当なものだったらしい。
背格好が似ているので、昔は兄弟と言われたが、奴は売れた。
持ち前のイケイケキャラで出世した。だが、その性格が災いし
課長時代に専務と大ケンカして、営業所へ飛ばされた。
その暴れん坊が異動で、営業4部に戻ってくるという。
奴が、お荷物と言われている4部を任されるのが気になったが
また一緒に遊べるのでうれしかった。
ある日の夕方、ノックもせず、ズカズカと入ってくる男。
来た!谷元利一だ。 名前からオレはリーチと呼んでいた。
「小林~ お前変わらないなあ。バカだからか?」
それが5年ぶりに会うオレとの挨拶かよ?まったく~
オフィス全員が驚いてフリーズしている。
加瀬恭子も不安げにこちらを見ていた。
『リーチ!あいかわらずだなあ』
リーチはオレと握手し松野の席に座った。
「お~ 松が課長かよ。5年でオレも浦島太郎だなあ」
イキがるのはキャラなのだが、初めて見た社員は怯えていた。
オレはおもしろかったが、オフィスの動揺が激しい。
『みんな、紹介するよ、○○営業所の谷元所長、オレの同期』
彼は松野の席で座ったまま、みんなに挨拶をした。
とにかく部長に返り咲く報告を聞く。
本人に言わせれば、冤罪の罪滅ぼしで復帰したんだとか。
お、加瀬恭子がお茶を持ってきた。
つまんない事言わなきゃいいんだけどな・・・
「お~ モデルみたいな子、居るじゃん?」
いきなりかよ・・・
「おい、小林、この子、お前の好みだろ?背高いしさ~」
『バーカ。なに言ってんだ?』
加瀬恭子はお盆を抱えてオロオロしている。
「お姉ちゃん、加瀬くんっていうの?素敵じゃん。
どう?部長に口説かれたりしてないか?」
「い、いえ。よくしていただいています」
彼女は困った様子でオレを見ながら返事している。
普通なら、すぐにリーチの話を遮るんだけど。
オレは彼女を見て別の事を考えていた。
彼ができたって本当なのか?
しかし、オレもしつこいなあ・・・・




