NPC-ノンプレイヤーキャラクター
妖精街上層第1区エルフ軍攻略拠点。
エルフ側が部隊はダークエルフが捨てていった魔導機械3体と
合流した人間の戦士がついていた。
フェアリスは言った。
「一気に攻め込もう。これだけ部隊が揃えば後は勢いでどうにでもなる」
デルバートは浮かない顔をしている。
シュライバは問う。
「どうしたんだ」
「神衛師団だ。やつらをどうにかしなければならん」
フェアリスは言う。
「だったらこうしよう。人間とエルフの混成部隊を三つに分ける。そして三方から一気に攻め落とす。そうすれば、その神衛師団とやらを一度に全員相手にする必要はなくなるだろ」
デルバートは未だ暗い表情が消えない。
「……そうだな。俺が率いる部隊が一つ。もう一つはローレイラが率いる。もう一つはシュライバ。お前に頼みたい」
「おいおい簡便してくれよ。そういうのは柄じゃないだろ」
シュライバはおどけて見せたが、デルバートの表情は真剣そのものだった。
「わかったよ。引き受けよう」
エルフ達は互いの家族と別れを交わす。きつく抱擁を交わし、別れの言葉を交わす。これが今生の別れとなる者もでるだろう。
シュライバはフェアリスに向け言った。
「こいつらは一体なんなんだ」
「NPCだ。と言っても説明が足りないだろうな。わからないよ、私にも。ただ……」
「ただ、なんだ?」
「いや、なんでもない。明日は厳しい戦いになる。しっかりと休んでおけ。もう何時間ログインしっぱなしなんだお前は」
「そう言えばそうだな。学校さぼっちまってるな。多分」
「ゆっくり休め。その間は私たちに任せろ」
シュライバは横になって瞼を閉じる。
フェアリスは、シュライバが眠ったのを確認すると彼の傍らに体育座をした。そして彼のその寝顔を眺めた。エルフの思考プログラムの問題を考え始めれば、それは同時にフェアリードールである自分という存在の定義に触れることにもつながり、そのことが怖くなって、それで言葉を飲み込んだ。
(私は一体何者なんだ)
彼女は虚空を仰いだ。
瞼を閉じて思考画面を開くとログアウトを選択する。
幻想の世界が終を告げ、現実という退屈な世界に戻ってきた。
外はもう紫の夕闇の中だった。




