表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/72

戦闘中毒‐バトルホリック

 彼女は飢えていた。心の渇きを満たすような、戦いに、戦場に、すなわちゲームに。

 現実世界は退屈だ。彼女の心を満足させるものは、そうない。

 日課である真剣による素振りをこなし肌に汗を浮かべ、満足そうにポニーテール振るいながら学生服を着替える。スカートやスカーフを丁寧に畳む。

 浴槽に水を貯める。薬局で手に入れた入浴剤とかいうやつを入れる。

 以前は戦場に身を置いていた。必要とあれば泥水をすすり、奇襲に怯えて眠り、生きるために殺戮を繰り返した。

 戦場にいる間は熱い風呂と、美味い飯が恋しくて仕方がなかった。役目を終え帰ってきてみると、世間は様変わりしていた。あらゆる物が新鮮で始めは面白かった。

 だがすぐに飽きてしまった。飯が美味いくらいで、どんな物も戦場で味わえるスリルに比べればどれも退屈だった。

 今では戦場に残してきた仲間たちのことが気掛かりだ。

 だが、あの男の言うことが正しければ、何れ大きな戦いが始まる。楽しみで仕方がない。

 今は待つとしよう。

 あの男に頼めば大概のものは手に入る。

 私が愛してやまない時価総額一千万はするという名刀、夜櫻ヨザクラをてにいれてきたし、隠れ家に道場のある家も手配した。

 胡散臭い男ではあるが今は利用させてもらう。

 浴槽には真っ白な泡が溢れていた。昨日深夜にやっていた古い映画に出てくる、女スパイがやっているのを見て、真似をしたくてたまらなくなり、あの男にやり方を聞いた。男はジャグジーバスとかいうのを設置するとか言っていたが、私は一刻も早くこれをやりたかったので、それは断った。

 お湯がたまったことを確認する。

(ふわふわじゃないか)

 火照った体を冷たいシャワーで濡らす。張りのある艶やかな肌を水が伝う。

 片足づつ浴槽につかる。

 タブレットであの男に調べさせた骨のありそうなプレイヤーのリストを眺めながらターゲットを定める。ポニーテールを揺らしながら嬉しそうに笑う自分の顔が鏡に映っていた。

 豪快に浴槽から出るとろくに体もふかずに、バスタオルを体に巻くと、まだ拭ききれていない濡れた足でリビングに行く。冷蔵庫から苺のショートケーキを取り出す。パクリと一口食べると、頬がとろけそうになった。頬にクリームがついたので舐めようとしたが届かなかった。


 そろそろお楽しみの狩りの時間だ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ