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頼み事を断りました

ちょっとシリアスっぽいです

訓練の終了した後、俺は国王の執務室にいた。


俺の他には、ルーデウス王、シャルロット王女、ダンク団長、筆頭宮廷魔導師セリア、貴族と思われる三人がいる。


「そちらの方々は?」


「君や他の二人の後見人となる者達だ。三人とも信頼できる者達であると断言しよう」


初対面の貴族達について尋ねると、ルーデウス王が答えた。


「私はモルト公爵家当主、ガイルという」


「儂はアール公爵家当主のギリスじゃ」


「ルイス侯爵家当主、ワルトだ」


ガイル公爵、ギリス公爵、ワルト侯爵が名乗ったので俺も挨拶をする。


「お初にお目に掛かります。これからご迷惑をお掛けになるかもしれませんが、どうかよろしくお願い申し上げます。詳しい自己紹介は、他の二人もいる場で宜しいでしょうか?ガイル卿、ワルト卿、ギリス卿」


「ほうほう。成る程成る程。これはまた、中々にけったいな小僧の様だ」


挨拶を聞いたギリス公爵が、俺を眺めながら呟いた。


「ダンクの小僧の話しを聴いた時は半信半疑だったが、確かに只者ではないのう」


「小僧はやめていただきたい、ギリス公爵。客人の前です」


貴族らしからぬ物言いに、団長が苦言を呈する。


「お主こそ、その口調をやめんか。不自然すぎて寒気がするわ。大体、公式の場でもないのじゃから、陛下はもとより小僧もくだらない事を気にする様な者じゃなかろう。むしろ、お主の口調に目を丸めておるではないか」


実際はセリアさんがいるから分からないが、雰囲気だけならこの場で最年長のギリス公爵が言う。


その姿は子供をからかう好々爺然としていた。


「一応言っておきますが、この場の最年長はギリス公爵ですよ」


背筋が寒くなる声でセリアさんに告げられた。振り向くと怖いので、聞こえなかった事にする。つーか、感良すぎだろ。


取り敢えず、本題に入る事にする。


「確認ですが、この場は私が何者なのかを話す場、ということで宜しいでしょうか?」


俺の言葉に全員が頷く。


「ダンク騎士団長から話しは大体聞いた。君は勇者達と同じ世界から召喚されたとは思えない程の能力を持っていると。それは本当の事なのだね?」


「本当で御座います。しかし、その前に陛下。

一つお願いが御座います」


「そう畏る必要はない。ギリスが言っていたようにこの場は公式の場ではないのだ。して、その願いとは?」


口調を崩して構わないそうだ。普通だったら遠慮するのだろうが、面倒なので乗っかることにした。


「では、お言葉に甘えさせていただきましょう。………願いって程の事ではないんですが、これから話す事は出来る限り他言無用にして欲しいんです」


あっさり口調を変えた事に面食いながらも、笑顔で頷くルーデウス王。


「それは当然だ。安心してくれ」


「有り難うございます。で、俺が何者なのかですが、簡単に言うと、俺はこの世界に召喚される前に、この世界とも俺の世界とも違う別の世界で暮らしてた時期があったんです」


全くの予想外の言葉に驚愕する一同。


「その世界でまあ色々ありまして、強さはその時の名残りですね」


「………俄かには信じられんな」


ルーデウス王の言う事は当然だ。普通はこんなの信じない。


「少し待って下さい。証拠って程じゃないですけど、証明出来そうなのを探すので」


そう言いながら俺は虚空に手を延ばす。すると、何も無い空間に亀裂が入り腕が飲み込まれていく。


「「「「「「「はい!?」」」」」」」


謎の光景に素っ頓狂な声を出す一同。


いち早く我に帰ったるデウス王が尋ねてくる。


「お、お主は、一体何をしているのだ?」


「魔法で異次元に放り込んである道具やら素材やらを探してるんです」


空間収納魔法【不思議な魔窟】。所謂、アイテムボックスだ。


「そんな魔法、聞いたこと有りません!!」


筆頭宮廷魔導師のセリアさんが叫ぶ。


「異世界の魔法ですから、セリアさんが知らなくてもしょうがないですよ」


そう言って、魔窟の物色を再開する。


「とは言ったものの、この世界の事をあまり知らないから何を見せたらいいんだろ?」


「その魔法だけで十分だと思うが、どんな物が入ってるのかは気になるな」


「色々ありますよ。………あ、コレでいいかな?」


魔窟の中から一つの宝石を取り出す。


「唯の宝石に見えるが?」


「えっと確か、色々な条件はあったけど、死者を生き返らせる事が出来る宝石だったと思います。名前は忘れましたが」


黄泉の〜、とかだった気がする。


「死者蘇生だと!?」


なんか、ルーデウス王が驚愕の声を上げた。他の人達も絶句していた。


「あれ?もしかしてこの世界だと死者蘇生とか出来ないの?」


もしかして、俺やっちゃった?


前の世界では貴重ではあったけど、それ程珍しい訳ではなかったんだけど。つーか、自分の魔法でも出来るし、宝石自体も作れるし。


「いえ、死者蘇生自体は記録に残っはいます。しかし、その全てが神の手による物です」


俺の疑問にセリアさんが答えてくれる。へえ、神様いるんだこの世界にも。


「えーと、つまり?」


「その宝石一つで戦争が起きかねません」


「………マジで?この程度でそれかよ」


「死者蘇生をこの程度って、小僧、お主どれほどの物を所持しているんじゃ?」


俺の台詞に反応するギリス公爵。


「聞きたいですか?」


「………いや、遠慮しておこう」


まあ、それが懸命だと思う。



他にも色々話していると、シャルロット王女が話し掛けてきた。


「あ、あの、ヒバリ様。少し宜しいでしょうか?」


「何ですか?」


「実は、ヒバリ様にお願いしたい事があるのです」


何を言いたいかは何と無く予想がつくが、取り敢えず聞いてみた。


「貴方に勇者様達に協力して欲しいのです。どうか、勇者様達と一緒に世界を救って下さい」


「嫌です」


予想通りだったので即答する。しかし、シャルロット王女は食い下がる。


「ヒバリ様が巻き込まれただけだというのは承知しています。ですが、どうかお願いします」


「だから嫌です」


「この世界が魔人達の手に落ちれば貴方だって無関係とはいかないかもしれないのですよ?」


徐々にヒートアップしていくシャルロット王女。


「だから?」


「っ!貴方程の力を持っていて何故ですか!?貴方が戦えば多くの人を助ける事が出来るかもしれないのに!」


「そこまでにしなさい。シャルロット」


ルーデウス王がシャルロット王女を窘める。


「ですがお父様!」


「シャルロット!」


尚食い下がるシャルロット王女をルーデウス王が怒鳴ろうとしたところを遮って、シャルロット王女に話し掛ける。


「シャルロット王女。確かに貴方の言っていることは正しい。俺が戦えば少なくない人間が救われて、勇者達の手助けも出来るでしょう」


ならば何故、そう言おうとしたシャルロット王女を遮って続ける。


「ですが、俺は勇者や英雄が嫌いです。いえ、違いますね。人類の為だ世界の為などと、そんな正義感やヒロイズムで行動する勇者や英雄が嫌いです」


「それの何処が悪いのですか!?」


「別に悪いとは言ってません。ただ、私はそんな輩が嫌いで、そんな理由で自分は行動したくないだけです」


「だったら、何故嫌いなのですか?」


「責任を考えてないからですよ」


意味がわからないのか、怪訝そうな顔をするシャルロット王女。


「勇者や英雄たりえる者達は、それに相応しい力を持っている。しかし、その力は必ず柵を生む。それを深く考えず世界の為だ人類の為だのと、そんな玉虫色で八方美人な対応しかしない輩は、責任の放棄している事に他ならない」


俺の言葉にたじろぐシャルロット王女。他の人達も、俺の雰囲気が変わった事に気付いた様だ。


「今は良い。魔人という共通の敵が存在しているのだから。では、魔人達が倒されたら勇者達はどうなる?どの国も必死になって勇者達を確保したがるでしょう」


力もあり名声もある。これ程国の利益になる存在はそういない。ならば手に入れたがるのが普通だ。


策謀、陰謀関係なく張り巡らせる。自国に引き入れる為に。敵国に渡さない為に。


「自分が動く理由を明確にせず、世界の為だ人類の為だと云う曖昧な理由で行動すれば、確実に何処かで軋轢を産む」


そんな理由で行動する奴は知らないのだ。自分の存在がどれ程の人を歪めるか。


「後先考えずに行動すれば待っているのは身の破滅だ。それも一人では無く、大衆を巻き込む破滅だ」


戦争が起きれば、戦地の人々は希望を抱く。また勇者様が助けてくれると。人類を救ってくれた勇者様なら、自分達の味方になってくれるだろうと。


しかし、片方に味方すれば敵から恨まれ、傍観すれば両方から恨まれる。


ー何故救ってくれないのか。


ー何故助けてくれないのか。


ー私達の味方ではなかったのかと。


自分の行動の理由を明確にしなければ、人々は勝手に希望を抱き、そして勝手に絶望する。


絶望の矛先は英雄に向かい、勇者の周りに向かう。


「だから俺は世界を救った英雄を嫌う。世界を救おうとする勇者を嫌う。彼等は勇者や英雄と言う名の、自覚無き厄災の種だから」


この言葉は桜木雲雀という少年の物では無い。この言葉はかつて異世界で人世を捨てた、人の身で有りながら人を辞めた存在の言葉だ。


「シャルロット王女、貴方は知らない。貴方は魔物がすべて生物の天敵と言ったが、それは間違いだ」


人間の天敵は、どんな時でも人間だ。


王女との会話がめっちゃ大変でした。

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