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模擬戦をしました

初めての戦闘描写と初の別キャラ視点です。

その一撃は周りの騎士達とは比べ物にならないくらいに、速く鋭かった。


手加減なんて一切ない、本気の斬撃。


上段から振り下ろされた剣を仕方なく受け流し、団長の体制を崩してから突きを放つが、団長はそのまま地面に転がることで突きを躱す。


すぐに体制を整えて、斬りかかってきた団長と打ち合いながら言葉を交わす。


「アレを躱すどころか反撃してくるとは、予想は正しかった様だな」


「確信している癖に良く言うよ。つーか、本気できただろアンタ!」


「胸貸してもらってんだから当たり前だ。むしろ、本気出さないと失礼だろ」


「貸した記憶なんてない!アンタが勝手に言ったんだろ!!」


「けち臭い事言うなよ。コレは模擬戦なんだからよ!」


袈裟懸け、逆袈裟からの回転斬り。高速で繰り出される連撃を打ち払いながら文句を言う。


「模擬戦じゃなくてコレはただの戦闘だ!!」


使っているのは訓練用に刃を潰した剣でも、高速で喰らえば怪我をするし、当たりどころが悪ければ死に到る。それを模擬戦とのたまうとは、流石は戦闘狂だ。


「どうせ死にゃしねんだから細かい事は気にすんな」


「アンタは気にしなくても、俺は気にすんだよ!!」


そう叫びながら、俺は思った。この勝負は負けると。


団長のステータスでは、おそらく俺を傷付ける事は出来ないだろう。だが、俺は違う。手加減を少しでも間違えれば、団長は確実に死ぬ。これはかなりのストレスだ。


さらに、団長の剣技は控えめに言っても俺と同等かそれ以上だ。そんな相手に、殺さないように身体能力を抑えて戦わないといけない。ましてや、俺は魔法使いであって剣士じゃない。白兵戦なんて専門外もいいところだ。


つまり、詰みだ。


「どうした!お前はこの程度か!?」


「やかましい!!魔法使いなんだから、最低限しか近接戦が出来なくて当たり前だろ!!」


無駄口を叩きながらも、次第に追い詰められていく。


そして、遂にその時がきた。


団長が俺の剣を掻い潜り、首に目掛けて剣を振るう。防御しようにも間に合わない。


命を刈り取らんと振るわれた斬撃は、寸でのところで停止した。


「………参りました。満足か?」


「ああ」


団長はそう言って、剣を下ろした。


「やっぱり強えな。アレで魔法使いとか嘘だろお前」


「本当ですよ。なんだったら、喰らってみますか?俺の魔法」


「勘弁してくれ。お前みたいな化物の魔法なんて、手加減されても喰らいたいなんて思えねえよ」


「その化物って辞めてくれません?失礼ですよ」


「お前が化物じゃないならなんだってんだ?」


「………団長。俺ってこの国だとだんな立場がルーデウス王から聴いてます?」


「………」


うん、この反応は知ってるな。


「とりあえず、後で報告して「さあ、他の奴等はどうなったかな?」おいコラ、誤魔化すな」


話しを逸らした団長をジト目で睨むと、冷や汗を流してたので、まあいいかと話題に乗っかる。


翔吾は剣を使って騎士の人と互角に打ち合い、雄一は剣を捨て素手で騎士を圧倒していた。


勇者達は既に終わったらしく、俺や雄一達を呆然と眺めていた。


「アレでただの一般人とか嘘だろ、絶対」


団長がそう呟いた。



模擬戦の結果は、梨花さん・詩織さん・花音さんが惨敗。京介が多少善戦したが敗北。翔吾は互角に打ち合いながらも隙をついた一撃で危なげなく勝利。雄一は素手でのインファイトで圧勝。俺は団長に敗北となった。


「俺は雲雀達が本当に日本出身か疑いたくなってきたんたが」


「失敬な。生まれも育ちも日本だわ。それに勝ったのは雄一と翔吾だけだぞ。なんで俺まで含まれてるんだ?」


「アンタも十分おかしいからよ!!」


「全く動きが見えませんでした」


「私達よりも全然強いわよ。貴方達」


梨花さん達からツッコミが入る。


「なんか自信が無くなってきたな」


少し落ち込んでいる京介を団長が慰める。


「そう落ち込むな。おそらく、あいつらはレベルがお前よりかなり高い。お前や三人が弱いって訳じゃない。単純なステータスの差だ。お前達もレベルが上がれば今より遥かに強くなるしな。今はまだ経験が足りないだけだ」


「本当ですか?」


「ああ。多分だが、あいつらとお前達は二倍ぐらいレベルの差がある。それに、異世界人は総じて成長率がかなり高いらしい。唯でさえステータスに差があるんだ。比べる方が間違いだよ」


「わかりました。だったら俺もレベルを上げて強くなります。雲雀達や、魔人や魔王に勝てるぐらい強く」


さらっと、俺達を魔人や魔王と同列視されてる気がする。


団長もそれに気付いたのか笑いながら言う。


「ククッ。おう、その粋だ。だが今日はしっかり休め。訓練は明日から開始するからな」


「「「はい!!」」」


そして、今日は終了となった。



<ダンクside>


「どうしたのダンク?少し顔色悪いわよ?」


あいつらとの訓練が終了し解散した後、同僚のセリアが尋ねてきた。


流石に長い付き合いだ。俺の顔色の変化に気付いていた様だ。


あいつらの前では平静を装っていたが、俺は内心では膝が震えそうになるの隠すのに必死だった。


「なあ、セリア。お前はあいつら、ヒバリ達をどう思う」


俺の問いに、少し考えた様子のセリア。


「そうね、最初召喚に巻き込まれたと聴いた時は同情したわ。あの子達の世界は平和だったらしいし。戦うことを知らない唯の子供には、この世界はとても生きづらいから。それが、あそこまで戦えたなんてね。流石に驚いたわ」


ヒバリ達は知らないだろうが、ユウイチとショウゴが戦ったのは、騎士団屈指の実力者だ。騎士は他国や魔物から守るのが役目である。当然、騎士になるためには実力が必要だ。ましてや王宮勤めの騎士達は、騎士の中でも上位の実力を持つ。その騎士団屈指の実力者相手に危なげなく勝利して見せたあの二人も、国内では屈指の実力者という事になる。


「貴方とマトモに打ち合っていたヒバリ君を見た時なんて目を疑ったわ」


俺は剣術スキルLV8を持っている。つまりヒバリは、最低でも剣術スキルLV6か7を持っている事になる。


「それで魔法使いとかおかしいだろう」


俺の呟いた言葉にセリアが反応する。


「どういう意味?」


「ヒバリが言ったんだよ。俺は剣士じゃなくて魔法使いだって」


その意味を理解して唖然とするセリア。


「どんな冗談よ、それ」


「あいつなんて言ったと思う。近接戦は最低限しか出来ない、だぜ?俺も耳を疑ったわ」


「貴方、よくそんな相手に喧嘩売ったね」


「売ってねえよ!?」


飛んでもない言い掛かりだ。そりゃ、俺も自分に戦闘狂の気があるのは自覚しているがほぼ初対面の、ましてや子供に喧嘩売る程落ちぶれてはいない。


しかし、セリアはそれを一蹴した。


「自覚無いの?模擬戦って言っといて、あんな殺す勢いでやるとか喧嘩売ってるのと同じよ」


「いや、それはヒバリが俺の全力でも傷付けられないって、直感で理解してたからでだな」


「………ちょっと待って。貴方の全力で傷付けられないってどういう意味?」


「おそらくだが、ヒバリのステータスは飛んでもない位に高い。実際、模擬戦の最中は俺を間違って殺さない様に細心の注意を払って手加減してたみたいだし」


「………どんだけぶっ飛んでんのよ。というより、だったら尚更アンタ何やってんのよ!?」


「しょうがないだろ?化物みたいに強い奴と戦えんだぞ!?つい本気になっちまっても仕方ないだろ!?」


「だったらアンタ想像してみなさい。圧倒的に身体能力に差があり、軽い攻撃ですら死ぬ様な相手と模擬戦をして、こっちは殺さない様に気を使ってるのを良いことに、調子に乗って攻撃される状況を」


「………それは、かなりイラつくな」


「アンタはそれをやったのよ」


ぐうの音も出なかった。


「確かに、調子に乗ったのは事実だ。おかげで凄い後悔したが」


「それが顔色が悪い理由?一体何したのよ?」


「いやな。あいつとの模擬戦の最後よ、あいつの首狙ったんだよ」


「それは知ってるわよ。見てたし」


「んでよ、どうせ傷付かないと思って止める気無かったんだよ」


「アンタ、それは騎士団長以前に人としてどうかと思うわよ」


「今思い出すと俺もそう思う。けど、そんぐらい興奮してたんだ。実際にやっても剣が壊れてたろうし。でも、出来なかった」


止める気が無かったのに、あいつに剣が当たる瞬間、身体が恐怖で動かなくなった。


「俺はあの時、自分の死を幻視した。一瞬の内に身体が消し飛ぶ光景を見たんだ」


時間が経った今でも冷や汗が止まらない。


「自業自得なのは分かってる。でも、俺は思えてならないんだ」


勇者と一緒に、魔人や魔王よりも遥かにヤバイ奴を呼んじまったじゃないかって。



その疑問に、セリアは答えられなかった。

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