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〜幕末へ〜  作者: エヌ
9/18

☆捌

潜入捜査に入るまでが長いです。

芸子名は友達と決めました。


  ** 捌 **



───────────


歓迎会から1ヶ月。5月の最後の日。


『桜全部散ったなぁ。あんなに綺麗だったのに…』


総「もうすぐ夏だからね。」


一緒に縁側に座っていた沖田さんが言う。


一「光…副長が呼んでいる…」


どこからかいつの間にかいた一が教えてくれる。


『土方さんが?何だろう?沖田さん失礼します。』


沖田さんに頭を下げ、土方さんの部屋に足早で向かう。


『光です。』


歳「入っていいぞ。」


スッ


障子を開け部屋に入ると丞もいた。


歳「早く座れ。」


『はい。』


歳「初仕事だ。今回は山崎と一緒だ。

仕事内容は、芸子に変装して長州の動きを探ること。一応、別室に永倉と原田を待機させとく。何かあったら叫べ、いいな。あとのことは山崎に聞け。それからこれをお前にやる。」


土方さんに渡されたのは、

紺の生地に梅の花が描かれている着物だった。


『綺麗…本当に貰ってもいいんですか?』


歳「お前にやるために用意したんだ。要らねぇとか言うなよ。」


『要らないなんて!凄く嬉しいです!!』


歳「//…そうかよ。あとは頼んだぞ山崎。」


丞「御意。光、部屋にこい。」


フッ


それだけ言うと丞は天井に消えた。


『オレも失礼します。』


スッ


土方さんの部屋を出て、丞の部屋に行く。

障子を開けると丞は既にいた。


丞「任務は明日からや。」


『明日はよろしく丞。』


丞「ああ。ほんなら明日のこと説明してやるわ。

まず隈らは姉妹設定や。名は偽名を使ぃ。

座敷に上がるときの名は

隈が[翠茜]

光が[水蓮]や。

情報が手に入り次第、任務は終了。

……そや、光なにか舞や歌できへんの?

一応芸子に変装するんやから。」


『わからない…舞は4、5歳のときに少しやっていただけだし。』


丞「ちょい舞って見せぇ。」


オレは立ち上がり思い出しながら舞う。


丞「…綺麗やないか。誰に教わったん?」


『…お母さん。』


丞「そうやったんか。」


丞は光の瞳が曇ったのに気づき、それ以上は言えなかった。


『……。』


丞「……。」


『丞…話は終わった?オレ仕事あんだけど…』


沈黙に耐えられなくなり、オレは口を開く。


丞「ああ、えぇで。初めての任務は疲れると思うで。今日は早めに寝ぇ。」


『わかった。それじゃあまたあとで。』



オレは部屋を出て、台所に向かい、源さんの昼餉作りを手伝う。


源「…そういえば、明日は屯所に居ないんだってね?」


『そうなんです!!明日は初めての監察方の任務なんです!!』


源「良かったじゃないか。だがくれぐれも気を付けるんだよ。」


『はい!!丞も一緒なんで大丈夫です。』


源「なら安心だね。それじゃ、そろそろ広間にお膳運ばないとね。」


笑顔で言う源さんに頷き、原田さんを呼びに行く。


『原田さん、手伝ってください♪』


廊下にいた原田さんを捕まえ、台所に引っ張っていく。


原「わかってるって。」


源「お願いしますね。」


原「おう!!」


原田さんはお膳を持つと、廊下と広間を走りながら往復する。


『ありがとうございます。明日は1人なので頑張ってください。』


原「は?」


『明日、オレは居ないんです。原田さんが手伝わないと、源さん1人ですよ?』


原「そうか!俺に任せとけ!!」


『はい♪』


歳「てめぇら揃ってんな。」


広間の戸を開け、土方さんと近藤さんが入ってくる。


騒がしかった広間は静寂に包まれる。


近「えー…明日は光さんが居ないので、皆で協力して源さんを手伝ってくれ。」


歳「あとで幹部と光は俺の部屋に集まれ…以上だ。」


土方さんの言葉を聞き、皆は食べ始める。



食べ終わった幹部達は、すぐに土方さんの部屋に向かう。

沖田さんは近藤さんに言われ、苦手な野菜を食べているため、遅くなりそうだ。


『沖田さん、先に行きます。』


一言声をかけると、顔を歪めながら沖田さんは頷く。それを確認し、土方さんの部屋に行く。



土方さんの部屋には、もう幹部達は揃っていた。沖田さんを除いて。


歳「総司はまだ食ってやがるのか。」


山「土方君、沖田君は苦手な野菜を食べてるんだ。待ちましょう。」


歳「…ああ。」




暫くして沖田さんは土方さんの部屋に来て、会議が始まる。


歳「明日から光と山崎に潜入捜査をさせる。

芸子として潜り込ませ、長州から情報を聞き出す。待機として、別室に永倉と原田だ。」


原・永「おう!!」


藤「オレは?左之さんとぱっつあんだけずるいよ。」


歳「お前は巡察だろうが。」


藤「そうだった。なぁ土方さん、非番のときに見に行くくらい良いよな?」


歳「ああ。」


藤「よっしゃあ!!」


『平助…見に来なくていいから。』


藤「何で?」


『取り敢えず、来なくていいから。』


藤「そんなぁ…」


あからさまに肩をおとす平助を見て、少し可哀想になる。


〔でも、芸子姿は似合わないから、見てほしくないんだよな…〕


『ごめんな平助。』


藤「気にするな。」


歳「そういうことだ。反対の奴はいるか?」


幹「「「「……。」」」」


歳「いねぇなら会議は終わりだ。」


幹部達は立ち上がり、各々の部屋に戻る。

オレも部屋に向かう。


部屋に入ると色とりどりの着物を丞が広げていた。


『どうしたのこれ?』


丞「これか?これは全部隈のや。明日の着物を選んどったんや。」


『これ全部…女装趣味?』


丞「そんなわけあるか!!変装ようや。」


『だよな。あーびっくりした。』


丞「光…知っとって言ったやろ。」


『なんのことだ?それより、着物の着方を教えてくれない?』


丞「着たこと無いんかい。しゃあない、教えてやるさかい。但し、明日の朝や。ついでに化粧もや。」


『ありがとな丞。オレは稽古に行ってくる。』


丞「隈は部屋の外にいるさかい。着替え終わったら呼びぃ。」


スッと立ち上がり、部屋を出る丞を確認し、胴着に着替える。


『丞、終わったから入って来て大丈夫だ。』


丞「稽古頑張りぃ。」


部屋を出るとき、丞が背後から声をかけてきた。

静かに障子を閉め、廊下を足早に歩き出す。


一「…稽古にいくのか?」


途中で一に会う。


『一も稽古か?なら、試合しないか?やったこと無いし。』


一「…いいだろう。」


『ねぇ…審判やってくれる、沖田さん。』


総「ばれましたか。いいですよ。」


3人で話ながら歩く。

すぐに道場は見えてきて、戸を開けると隊士達は稽古をしていた手を止める。


一「すまぬが…真ん中を開けてはくれぬか?」


一が言うと隊士達は一斉に壁側に寄る。


一「…始めるとしよう…総司。」


総「始め!!」


沖田さんの合図で床を蹴る。


タンッ

パシッ

ビシッ


一「…本気でこい…」


『そのつもりだ。』


タンッ

ダンッ


お互いに距離をおく。

最近習得した、三段突きの構えをとり、一に突っ込む。


タンッ


1、2、3…


一「三段突きは俺には…効かぬ!!」


三段突きは全てかわされてしまう。


一「次は俺から行くぞ…」


平手平打ちの構えをとり、オレを睨む一。

オレは竹刀を構え直し、一に意識を集中させる。


ダンッ


床を蹴る音。

オレは一の攻撃をぎりぎりで避け、床を蹴る。


バシッ

カラン


総「勝者光さん!!」


一「…フッ…総司とやったときより強くなっているな。」


『毎日稽古して、鍛えてるからだ。』


一「そうだな…」


総「光さん、そろそろ夕餉の支度始めては?

一君と試合始めてから、かなりたってますよ。」


『嘘!?そんなにやってた?急がないと。』


オレは急いで部屋に行き、着替えて台所に走る。


源「…急いで来てくれたんだね。髪がボサボサになってるよ。」


『すみません!!』


源「大丈夫だよ。光さん、味噌汁お願いできるかい?」


『はい!!』



夕餉作りを始めてから約2時間。隊士達全員分を作り終える。


源「あとは運ぶだけだね。光さん、隊士達を広間に集めてくれるかい?」


『行ってきます♪』


源さんの言葉に返事をし、まずは原田さんを源さんの所に行かせ、道場に行き大部屋に、幹部の部屋を順に周り最後に台所に戻る。


『源さん、手伝うことは?』


源「これ運んだら終わりだよ。先に広間に行って大丈夫だよ。」


『それでは先に行ってます。』


源「ああ。」


広間に行くと、珍しく土方さんはもい来ていた。


『珍しいですね。どうしたんですか土方さん。』


歳「たまには早く来ちゃあ、いけねぇのか。」


『いえ、そういうわけでは…』


歳「なら、いいじゃねえか。一々聞くんじゃねぇよ。」


『はい。』


返事をし、平助の横に座る。


藤「なぁ光。何で髪がボサボサなんだ?」


『ちょっと急いでたから。』


藤「ふーん。もしかして、夕餉作りに遅れたとか?」


『……』


総「その通りですよ。一君と試合してたからですけど。」


オレが答えない代わりに、沖田さんが笑顔で答える。


藤「そうなんだ。今度、オレとも試合してくれよな♪」


『試合はいつでもするよ。』


歳「てめぇら、少し静かにしやがれ。

明日の源さんの手伝いは表にし、壁に張った。夕餉の食べ終わった者から見ていけ。」



暫くたち、続々と隊士達は立ち上がり、壁に群がる。


隊1「俺は朝餉か。」


隊2「俺は庭掃除。」


隊3「オレは昼餉。」


隊士達は口々に言いながら、広間をあとにする。


藤「さてと、オレも見てくるかな。」


総「平助、ついでに僕のも見てきてください。」


苦手な野菜を箸で摘まみながら頼む沖田さん。


藤「わかった。」


平助は返事をし、見に行く。


藤「総司ぃ、お前の名前無かった。」


平助は戻ってくるなり言う。


歳「総司はサボる可能性が高いからな。はじめから入れてねぇんだよ。」


平助の言葉が聞こえたのか、土方さんが答える。


総「よくわかってるじゃないですか♪」


沖田さんは笑顔で土方さんを見て、当たり前のように口にする。


歳「稽古もサボる奴だからだ。」


総「そんなこと無いですよ。少なくとも、光さんが稽古しているときは、僕もやってますから。」


歳「本当か光?」


『確かにやってますね。そんなにサボってるんですか?』


歳「そうだな…3回のうち2回はサボってたな。」


『そうなんですか。駄目じゃないですか沖田さん。』


総「稽古する相手が弱すぎて暇なんですもん。」


『明日はオレが居ませんが、稽古はサボらないでくださいね。サボった場合、もう沖田さんとは試合をしません!!』


総「えー…」


『サボらなければ、問題ないはずです。

土方さん誰でもいいので、沖田さんが稽古するときに見ててもらうことは出来ますか?』


一「…俺が見ていよう。」


歳「頼んだぞ斎藤。」


一「御意。」


歳「俺は仕事に戻るとするか。」


広間にはもうほとんど人は残っていなかった。一も静かに立ち上がると広間を出ていき、土方さんも続く。残ったのはオレと…沖田さんだ。

オレは沖田さんを見てから片付けを始める。


総「…ご馳走さま…」


沖田さんの声が聞こえ、振り返る。

お膳は綺麗になっていた。


『沖田さん、あとで近藤さんに貰った金平糖一緒に食べませんか?』


総「食べます♪」


『部屋に持っていくので、片付けが終わるまで待っていてください。』


総「はい♪」


沖田さんが広間を出ていくのを見届けて、お膳を台所に運ぶ。


『次は洗い物だな。』


腕捲りをして洗い物に取り掛かる。


────30分後。

最後のお椀をふきおわり、お茶をいれて沖田さんの部屋に持っていく。


『沖田さん、光です。』


総「勝手に入って。」


中から沖田さんの声がし、障子を開ける。

何故か中は紙だらけになっている。


『これどうしたんですか?』


総「似顔絵を描いていたんです。でないと寝てしまいそうだったので。」


『すみません、遅くなって。』


総「あ、光さんも描きましたよ。どうですか?それから此方は近藤さんで土方さんで─…」


〔うっ…どれも一緒に見える。〕


『…あははは…金平糖食べませんか。』


苦笑しながら、懐にあった金平糖を沖田さんに渡す。


総「はい♪」


散らかっていた紙を1つにまとめ、机の上に置くと金平糖を食べ始める。


総「美味しいですね。」


『はい。』


総「光さん…明日から気を付けてくださいね。」


『わかってます。』


総「なら良かった。金平糖も食べ終わりましたので、僕は寝ますね。おやすみなさい。」


沖田さんの手にあった金平糖の袋は、空っぽになっていた。


『…食べるの早くないですか?』


総「そんなこと無いですよ。僕はもう寝るんですから出ていってください。それとも、一緒に寝たいんですか?」


『出ていきますよ。おやすみなさい沖田さん。』


湯飲みを片付けるため、台所に行ってから部屋に戻る。


『ふぅー…明日から潜入捜査かぁ…丞に言われたし、早めに寝よ。』


オレは素早くお風呂に入り、眠りにつく。



───────────


神「光さん光さん。お久しぶりです、神です。」


『神様、何か用?』


神「はい、潜入捜査をなさるんでしょう?気を付けてくださいね。」


『神様も心配してくれたんだ。大丈夫だ。丞も居ることだし。』


神「そうですか…」


『…?』


神「くれぐれも無茶はしないでくださいね。」


『わかった。ありがとな。』


神「それでは失礼します…」


スゥ─…


───────────


ぱちっ


『ん〜神様なんか言いたげだったなぁ…』


丞「起きてそうそう何やねん。」


『あれ丞?いつの間に。』


丞「光が寝たあとすぐに隈も寝たんや。さっき起きたばっかやけどな。」


『そうなんだ。』


丞「そんなんはどうでもええんや。はよぅ、顔洗ってきぃ。」


『そうだった。』


オレは井戸に行き、顔を洗い急いで部屋に戻る。


丞「まずは着物の着方や。」


丞は着物を着付けし始める。ゆっくりと着付けてくれるおかげで、覚えやすかった。


丞「ほな、次は化粧や。ついでに髪もいじるさかい。ここ座りぃ。」


丞の前に座る。

暫くの間、じっと座る。


丞「最後に簪さして…できたで。」


『ありがとな丞。』


丞「今日は1日中、その格好で過ごすんやで。」


『…マジで…?』


丞「本間や。我慢しぃ、任務が終わるまでなんやから。」


『うっ…わかった。』


丞「そういや、そろそろ朝餉の時間やで?」


『嘘!?急がないと怒られるじゃん!!』


急いで立ち上がり、広間に向かう。着物のせいで、いつもより歩くのが遅くなる。


シャラン


歩くたびに簪が音をたてる。

すれ違う隊士達は、こそこそと何かを言いながら横を通り過ぎる。

広間に行くと、既に皆揃っていた。


歳「…誰だよてめぇ。」


『は?』


周りを見渡すと、皆オレを見ている。

オレは自分を指さしてみる。


歳「お前以外に誰がいるんだよ。」


『…皆して何だよ…オレは光ですよ。』


隊・幹「「「「「…えっ─」」」」」


『似合わないのはわかってますよ。しょうがないじゃないですか…任務なんですから。』


平助の横に行き、座りながら言う。


永「光、綺麗だぞ!」


原「似合ってるって!な、平助!!」


藤「……//」


原「平助ぇおーい。」


永「平助の奴、固まってやがる。」


原田さんと永倉さんは笑い始める。オレは無視して隣にいる沖田さんに声をかける。


『沖田さん、風邪ですか?』


沖田さんは顔は紅くなっている。


歳「てめぇらとっとと食いやがれ!!」


土方さんの声に一瞬ピクリと隊士達の肩が上がり、食べ始める。そんな隊士達の顔も紅くなっていた。



──夕方


歳「へまはするなよ。」


『わかってますって。』


近「頼んだよ。」


『はい!!』


オレは皆に背を向け、歩き出す。

待っている丞の場所まで歩き、後ろを振り返って手を振る。土方さん以外は手を振りかえしてくれる。

丞に肩を叩かれ、歩みを進める。



丞「此処や。」


花街を進み一軒の遊郭で足を止める。


丞「今からは町娘になりきるんや。」


門の前に立ち、


丞「すんません…女将はん呼んで貰えまへんか?」


門番「はい//少し待っていてください。」


門番は足早に中に行き、すぐに女将はんを連れてくる。


丞「急ですんまへん。母が危篤どす。妹共に此処で暫く芸子として働きたいんやけど…」


女「あんたらみたいに綺麗な娘なら大歓迎だよ。」


丞「本間おおきに女将はん。」


女「月夜や。あんたらは?」


丞「うちは翠どす。」


『うちは菊乃どす。』


月「翠と菊乃やな。あんたら、座敷名は決まっとる?」



[此処からは丞→翠 光→菊乃で進めます。]



翠「翠茜どす。」


『水蓮どす。』


月「いい名やないか。今部屋に案内してやるよ。」


翠「『おおきに。」』


月夜さんに案内され、部屋に行く。


月「此処や。自由に使い。それから今日からきっちりと働いてもらうよ。」


翠「はい。」


月「あとで呼びに来るよ。支度しときな。」


月夜さんは部屋を出て行く。暫くして足音が聞こえなくなった。


『丞って「翠。」…翠って言葉使い上手いんだね。』


翠「だてに監察やってるわけ無いからな。それより、はよぅ支度せへんと。髪やるさかい、後ろ向きぃ菊乃。」


『ん、宜しく翠。』


翠は素早く髪型を変えていく。


翠「こんなもんでええか。」


『やっぱ凄いな。』


翠「当たりま…」


月「準備できたかい?」


翠「ええ。」


月「早速お客や。」


翠「わかりました。ほら、行くよ菊乃。」


『はい。』


月夜さんのあとについていき、一室の部屋の前で止まる。


月「此処の部屋や。相手は新選組の人達や。気いつけてな。」


翠「はい。」


月「それじゃ、頼んだよ。」


翠「はい。」


月夜さんが、去るのを待って座り、襖を開け声をかける。


翠「翠茜どす。」


『水蓮どす。』


永「お、きたか。光、こっちにこい。」


原「馬鹿か新八、光じゃなくて[水蓮]だろ。」


永「そうだった。」



[此処からは翠→翠茜 菊乃→水蓮でききます]



原「俺達はここにいるからよ、何かあったら叫べよ。まぁ、山崎も一緒なら大丈夫だろうが。」


『はい。』


永「折角だからなんかやれ。」


原「そうだな…頼むよ、水蓮。」


『では、舞を少々。』


スッと立ち上がり、翠茜の奏でる琴の音に合わせ舞う。


永・原「…//」


『終わりました。永倉さん、原田さん?』


2人に近づき、顔を覗きこむ。


永「…綺麗だったぜ!」


『ありがとうございます。』


微笑みながら言う。

永倉さんは顔を紅くする。


『大丈夫です「すんまへん、翠茜と水蓮をお借りしても宜しいでしょうか?」…』


月夜さんが入って来ながら言う。


原「ああ。」


『すんまへん、失礼します。』


翠「失礼します。」


うちと翠茜はを下げ、部屋をあとにする。



月「次のお客は浪士達や。」


「『はい」』


違う部屋に案内され、入る。


今日はそんな繰り返しで、何1つ情報は手に入らなかった。


───2日目


月「今日も頼むで。あんたら、結構人気あんよ。」


翠「そんなことありまへんよ。」


話ながら最初のお客の所に向かう。


月「最初のお客は長州のかた達や。」


うちは翠茜と顔を合わせ、頷きあう。


丞「任務早く終わりそうやな。」


ボソリと一瞬烝に戻り言う。


オレも一瞬戻り、


『そうだな。』


と、返事をする。


月「頼んだよ。」


肩を叩かれ、笑顔で返事をすると月夜さんは笑いながら、居なくなった。


挨拶をし、中に入ると…


〔何で高杉と吉田…それに多分…桂…〕


長州のお偉いさんばかりが揃っている。


晋「ん?君どこかで会った?」


じっと高杉の顔を見ていると、突然声をかけられる。


『いいえ、初めてどす。』


目をそらさず微笑みながら言うと、


晋「そうか。」


笑顔でかえされる。


稔「ねぇ…何かやってよ。」


翠茜が相手をして少し酔っている。


『では舞を…』


暫くの間、舞を続ける。


桂「……」


晋「綺麗だな。」


稔「晋作の場合、誰でも綺麗に見えるでしょ。」


そんな会話が聞こえる。舞を終え、


翠「すみまへん、お侍はんは何のお仕事をしてるさかい?」


翠茜が動き出す。


晋「…誰にも言わない?」


翠「 勿論どす。」


稔「教えるの晋作。」


晋「少しなら大丈夫だろ。」


稔「余計なことは言っちゃ駄目だよ。」


一言残すと、吉田は厠に席を立つ。

うちは、桂に酒を注ぎながら聞き耳をたてる。


晋「最近は枡屋に武器を集めてるかな。」


翠「そうなんどすか。」


桂「晋作!!」


晋「あ…」


翠「聞いてはいけないことやったんか…?」


少し瞳を潤ませながら、上目遣いで高杉に聞く翠茜。


晋「ご、ごめん!!でも今のは俺が悪かったから。聞かなかったことにしてくれ。」


翠「はい…うちが知ってるとやばいんやろ。なら、忘れるさかい。」


桂「そうしてくれると助かる。」


その時ちょうど吉田が戻ってくる。


稔「で…何話したの晋作?」


晋「幕府を倒すことだけだよ。」


稔「本当?桂。」


桂「本当だ。」


稔「ふーん…なら良かった。余計なことを話してたら、僕が斬らないといけなかったもん。」


笑いながら吉田は言い、その間高杉の顔はひきつった笑顔だ。


晋「なぁ、そろそろ帰らないか?」


桂「そうだな。稔麿行くぞ。」


稔「はいはい。あ、見送りはいいから。」


3人揃って部屋を出る。


翠「またおいでくださいまし。」


うちも慌てて頭を下げる。


月「帰られたみたいね。次のお客を頼むよ。」




────深夜



『ふー…やっと終わったぁ。』


丞「初めてにしては上出来やで。明日、屯所に帰るから支度しときぃ。」


『はーい。』


疲れながらも帰る支度をす る。支度を終え、


『おやすみ?丞…』


丞「おやすみ、光。」


丞の声がして、そのまま眠りにつく。



────────

────

───



月「本間急やね。」


翠「すんません…お世話になりました。」


月「気にしとんて。此方も助かったわ。元気でな。」


翠「はい。ありがとうございました。」


『ありがとうございました。月夜はんも元気で。』


うちもお礼を述べる。

そして屯所へと足を向ける。


後ろから


月「また来てや。大歓迎やから。」


と、月夜さんが言っているのが聞こえた。




屯所につくなり、部屋に行き、着替える。それから報告するため、土方さんの部屋に向かう。



丞「土方はん、丞や。」


歳「山崎か。入れ。」


部屋に入ると、土方さんはいつも通り仕事をしていた。


歳「長州の奴等は何を企んでいる?」


丞「…枡屋に武器を集めてるみたいやねん。高杉の口から聞いたから間違いはあらへんで。」


歳「そうか、この話は後で幹部を集めて行う。ご苦労だったな山崎…光。」


『今一瞬忘れてませんでした?』


歳「気のせいだろ。報告は終わったんだろ。とっとと出ていきやがれ。」


『わかってます。』


オレは土方さんの部屋を出る。



これで、初めての潜入捜査は成功で終わった…


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