☆弐
** 弐 **
オレはのぼせる前に、お風呂から上がった。
背中の真ん中まである髪を拭きながら、部屋に戻った。
部屋に入ると、オレはすぐにベッドに潜り込み、明かりを消して眠りについた。
次の日の朝
─午前4時頃─
いつもの時間に起きたオレは胴着に着替え、顔を洗いさっぱりした後、道場に来ていた。
壁に立て掛けてあった竹刀を一本手に取り、道場の中心に座り、竹刀を右側に置き精神統一をするため座禅を始めた。
1時間ほどすると、オレは竹刀を持ち素振りを始めた。
ビュン
竹刀が空気を切る音が心地よい。
ガラッ
暫くすると、道場の戸を開ける音がし、3馬鹿が入ってきた。
3馬鹿「「「光さん、おはようございます。」」」
『おはよう、3馬鹿。もう、ご飯の時間か?』
1「はい。」
『じゃぁ、行くか。』
3馬鹿「「「はい!」」」
オレは胴着のまま、食卓に向かった。
その後ろを、3馬鹿が歩いている。
3馬鹿は居候だ。
と、言っても今では家族同然になっているが。
食卓につき、父が来るのを待つわけなく、オレはご飯を食べ始めた。家事は当番で決めている。
3馬鹿は朝飯と昼飯、掃除や洗濯など料理以外全て父が、オレは学校があるため夕飯のみだ。
まぁ、休みの日や暇なときは、手伝うが。
オレはご飯を食べ終えると食器を片付け、制服に着替えるため、部屋へ戻った。
オレの制服は、学ランだ。
サラシを巻いたまま、体操服を着てその上から学ランを着る。
まぁ、女なのに学ランを着ていることは、気にしないでほしい。ただ、なんとなくだ。
学校に行く支度を終え、玄関に向かう。
玄関には、3馬鹿と父が立っていた。
『いってきます。』
父「いってらしゃい、光」
3馬鹿「「「いってらしゃい。」」」
いつものように、見送られ学校へと続く、桜並木の中を歩いた。桜の花びらが、ひらひらと舞い落ちる。
この時間は学生ばかりが、ここを歩いている。
?「光!」
後ろからいきなり声をかけられ、オレは振り返った。そこには、ふわふわなショートカットの髪型をした、背の低めな少女が立っていた。
『おはよう、千夜。』
千「おはよう。やっぱ、光は今日も学ランだね♪カッコいいからいいけど(笑)」
千夜は光に抱いた。
周りの視線が一気に二人に集まる。
周りからはパッと見、美男女が、抱き合っているように見えるのだ。
なんせ、光は男女どちらとも言えない、中性的な顔立ちで背は高く、髪は邪魔にならないよう縛ってある。ポニーテールだ。
それに今は、学ランを着ているのだから美男子に見られても無理はない。
『千夜、そろそろ学校に行かないと!』
千「はーい♪」
千夜は返事をし、光の手を掴み走り出した。
千「光は今日も朝練あるんでしょ?なら、急がなきゃ。」
結局、2人は学校まで手を繋いで走った。
校内に入ると、オレは千夜と別れ体育館に向かった。中に入ると、後輩達がオレを囲む。
後1「あのっ、稽古をつけてもらってもいいですか?」
後2「その後、私もいいですか?」
『いいよ、ただし終り10分前までで。』
後1「本当ですか!?ありがとうございます!」
『じゃぁ、ちょっと待ってて。着替えるから。』
オレは言いながら、更衣室に入った。学ランを脱ぎ、体操服を着たまま胴着を着る。
その間、後輩達の話し声が聞こえた。
後1「やっぱ光先輩、優しい♪」
後2「だね♪しかもカッコいい!」
後3「うん♪」
そんなことを話していた。
『お待たせ、稽古始めるよ!!』
後輩達「「「はい!!」」」
後輩達は順番に並び、オレと1対1で打ち合った。
『今日はここまで!!』
後輩達「「「ありがとうございました!!」」」
オレは朝練の時間が好きだ。
後輩達が日に日に成長しているのが、わかるからだ。
『…フッ。』
オレは自然に笑みが零れた。後輩達はそんなオレを見て、顔を赤らめている。
オレは頭の上に?をうかべ、
『大丈夫?風邪?』
と、言った。
そんな様子を体育館の入り口で見ている者がいる。
オレは視線に気づき、入り口を見た。
そこには千夜が立っていた。
『千夜?』
千「もうすぐ授業が始まるから呼びにきた。」
『そんな時間!?急がないと…君達も遅れないよう!!』
そう言い残し、オレは千夜と共に教室まで走った。
教室まで来ると、
千「光は鈍感だよね。」
そう言って千夜は席に行ってしまった。
オレは?を頭の上に席についた。
───────────
学校が終り、皆が部活へ行く中オレは帰宅するため、校門に向かっていた。
オレは一応、帰宅部だが剣道部の朝練だけはでている。
家につくと、夕飯を作りオレは部屋に行った。
〔そうだ、新選組について調べよう♪どうせ暇だし。〕
着替えが終り、オレは早速パソコンに向かった。
[新選組]
そう検索する。
『結構あるなぁ。』
オレは呟きながら、上から順に見ていく。
〔沖田総司は三段突きが斎藤一は平手平打ちが得意だったんだ。〕
考えながら調べていく。そしてある決心をした。
『よし!今日から三段突きと平手平打ちの練習しよう。もしかしたら、更に強くなれるかも知れないし!』
オレは夕飯を食べると胴着に着替え、いつもより早く道場にきた。
すぐさま竹刀を持ち、三段突きと平手平打ちの練習をする。
実際に見たことがないため、出来ているかわからないが。
父「今日は早いな。」
声がしたほうに振り替えると、父が道場に入ってくる姿が見えた。
『あ、うん。ちょっと技術を上げようと思って。』
父「今のままで十分じゃないか?」
『そうだけど…まぁ、決めたことだから。』
父「無理はするなよ。」
『わかってる。あっ、お父さん稽古付き合ってくれない?3馬鹿が来るまででいいからさ。』
父「…いいよ。なんの技を練習してるんだ?」
『三段突きと平手平打ち。』
オレが言うと、父は目を見開いた。
父「どこで習ったんだ?」
『習った訳じゃない。沖田総司と斎藤一の得意技。』
父「新選組か…まだ幕末に行きたいと思ってるのか?」
『うん。』
父「そうか。…光に良いことを教えよう。」
『えっ、何?』
父「家の近くに、林があるだろう。誰も近寄らない。」
『…。』
父「あそこの奥に神社がある。あそこは、昔から願いが叶うと言われてるんだ。試しに祈ってみたらどうだ?」
『それ、マジなの!?今から行ってくる!!』
オレは父の許可を得る前に道場を飛び出していた。
暗い夜道を、懐中電灯の灯りを頼りに走っていく。
林を抜けると、大きな神社が見えた。
『でかいなぁーこの神社か?』
オレは賽銭箱にあるだけの金を入れた。手を合わせ頭を下げ、
〔もし、タイムスリップが可能ならば、幕末へ飛ばして欲しい!!〕
願いを祈った。
オレは頭をあげ、暫く神社をじっと見ていた。
『よし!!』
気が済み、家に向かって歩いた。
家につくと、父が玄関に立っていた。
父「光?誰が今、行ってこいって言った?」
父は笑っているが言葉に怒りが含まれている。
〔面倒だなぁ…誤魔化そ。〕
『ごめんなさい。オレ、疲れたからお風呂入って寝るから。話はまた今度ってことで、おやすみお父さん。』
父「おやすみ光…って待ちなさい!」
オレは父の声が聞こえていない振りをして、その場から離れた。
お風呂にから出ると、部屋に戻り髪を拭くのも忘れ、ベッドに倒れ込んだ。そして眠りについた…
───────────
〔何処だ、此処?〕
?「此処は夢の中ですよ、光さん。」
〔夢?てか、どこから声がー〕
?「此処ですよ!!」
『えっ…うわっ!!』
ゆっくりと振り返ると、綺麗な桜模様の着物をきた女性がいた。
?「…クスクス…初めまして?私は神です。」
『えっ神様?』
神「はい。貴女が祈ったあの神社の神です。」
『マジですか…あっじゃぁ、オレの願いってか祈り?どっちでもいいけど叶えてくれるのか?』
神「はい。ですが少々準備が必要です。少しだけ待っていてください。」
『叶えてくれるなら文句は無い。』
神「そうですか…それでは準備ができしだい、幕末へ飛ばします。先に言っておきますが歴史を変えても大丈夫です。」
『それって…まぁいいや!!じゃぁ、歴史を変えるからヨロシク♪』
神「はい。それとこれを…。」
神がオレに小さなバッグを渡してきた。
神「それは貴女に必要なものです。説明はその中の紙を見てください。いつ飛ぶかはわからないので、持ち歩いて下さいね。」
『ああ、わかった。ありがとな。』
神「クスクス…それじゃぁ、また…」
そう言い残し、
スゥー
と神は消えた…
───────────
オレは目を開けた。
いつも通りの部屋の天井。
ただ1つ変わっていたのは、オレの手にある小さいバッグだった。
『マジだったんだ…』
オレは天井を眺めながら呟いた…