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〜幕末へ〜  作者: エヌ
16/18

☆拾伍

   * 拾伍 *



『ただいま土方さん。』


屯所につくなり、真っ先に土方さんの部屋に行く。


歳「ただいまってお前…顔赤いぞ?熱でもあんのか?」


『別に。今日はここで寝るからよろしく。』


歳「はあ?お前の部屋あるだろ。それに山崎に会ってやれよ。」


寂しがってたぞと、つけ加えオレを部屋から追い出そうとする。


『もう会ったし。』


丞の名を出されただけで島原でのことを思い出してしまう。


歳「……なんかあったのか?」


『………』


〔土方に相談してみようか?でもな…。〕


歳「言いたくねぇなら別に構『…聞いて』おう。」


オレは島原であったことを土方さんのに話す。


歳「…それって山崎はお前が好きってことだ。」


『…好き?オレなんかを?』


歳「そうだ。ま、俺にはわかんねえけどな。それに、お前は気づいてねえかも知れないが、総司も…。」


『総司も?』


歳「話の流れでわかるだろ。そんなに気になるなら本人に聞け。」


『いや、聞いたような気がする。その時はまさかと思ったけど。』


歳「それいつの話だよ。」


『今日。』


歳「はあ?」


『今日、甘味処で仕事しているときにきて、休憩中に総司をからかった?ら、「僕が好きなのは光さんです」って言ってた。』


歳「言ってたってお前なぁ…それ告白だ。」


『…マジで?』


歳「ああ。」


『つまり、オレは今日2人に告られたことになんの?』


歳「そうだな。お前、返事早めにしろよ?でないといつまでもお互いに気まずいままだからよ。そんなことで仕事に支障出されちゃあ困る。」


『返事か…。』


歳「…お節介かもしんねぇが今、自分が誰といて安心するか、いてほしいか考えてみな。」


『安心して、いてほしい……丞。』


歳「…案外あっさりでたじゃねえか。」


『でもどっちかで迷った。』


歳「フッ俺はどっちかなんて言ってねえよ。誰かって言ったんだ。」


『んな///』


オレは土方さんを睨む。


歳「そんな顔で睨まれても恐くねえよ。でもよかったじゃねえか。答えがでて。」


『うん。でも丞とは付き合わないよ。』


歳「…何でだ?」


『土方さんへの相談はここまで。オレはちょっと総司に会ってくる。』


オレは土方さんの部屋を出て、総司の部屋に向かう。


『総司いる?』


総「えっ光さん?!ちょっと待ってください!」


総司の声が聞こえ、そのあとすぐに障子が開いた。


総「そのあの///どうぞ。」


顔を赤くしながら部屋に招き入れてくれる。


やはり、あれは告白だったのだろう。


『ごめん。』


総「……僕は振られたんですね。」


真面目な顔で謝ると、総司は意外にも落ち着いていた。


総「…光さんが好きなのは山崎君?」


『……』


〔どうしてわかったんだ?!オレもさっき気づいたばっかなのに。〕


総「…僕はいつまでも光さんが好きだと思います。ですが、僕は貴女には幸せになってほしい。貴女が幸せになれるなら、僕はきっぱり諦めます。」


『…ごめん総司。オレは丞にこの気持ちを伝える気はないんだ。』


総「えっ?」


『兎に角、気まずいままは嫌だったからオレなりに考えて答えを出した。総司の気持ちには答えられないけど、これからも友達?仲間でいてくれるか?』


総「それは勿論です。でも、山崎君に伝えないって…」


『これは丞には内緒にしてくれ。』


総「…わかりました。」


『助かる。』


総司は少し悩んだあと渋々返事をした。


『あっ。』


総「どうかしました?」


『甘味、一から受け取った?』


総「はい。ありがとうございました。」


『ん。じゃあまた明日。おやすみなさい。』


総「おやすみなさい。」


オレは総司の部屋を出て、土方さんの部屋に戻る。


歳「随分早いじゃねえか。」


『総司に告白断りに行っただけだし。』


歳「…総司は大丈夫なのか?」


『ん、オレが幸せならいいってさ。…オレの幸せなんてこないのにな。』


歳「最後何て言った?聞こえなかったんだが。」


『何でもないよーただの独り言。』


歳「ならいいんだ。…何かあったらまた相談しろ。」


ふぃっとオレから顔を反らし、文机の書類に目をおとす土方さん。


『…何照れてんの?』


歳「別に照れてない。」


『ふーん…耳赤いけどな♪』


土方さんの傍に行き、耳元で話す。


歳「離れろ。」


『えー土方さんのこと好きなの"ゴトッカサカサカサ"…丞?』


オレが冗談で言っていた言葉を天井で聞いた者がいたようだ。

音がしてから気づいたが天井にいた気配は間違えなく丞のもの。


〔いつもならわかるのに気づけなかった。〕


歳「…追いかけなくていいのか?誤解されてんぞ。」


『追いかけてどうすんの?オレ、言ったじゃん。この気持ちを伝える気はないって。』


歳「……」


『それに、このままオレへの気持ちを忘れることができるかもしれない。』


歳「それじゃあなんだ?誤解されたままでいいってことか?あ"?」


『…いいんじゃね?』


歳「てめえふざけんなよ。山崎の奴の気持ちを嘘で踏みにじる気かよ。彼奴と付き合えなんて言わねえ。だけどよ、せめて正面から振ってやれよ。それが好意をよせてもらった相手への優しさってもんだろうが。」


『…あはは。さすが土方さん。バラガキ時代を伊達におくってないね…行ってくるよ。』


オレは土方さんの部屋を再び出る。


〔丞のいそうな場所…〕


オレは駆け出す。

丞は絶対あそこにいる。


オレが足を止めたのは壬生寺。

そして屋根の上に人影。


『丞。』


屋根にのぼり、背後から呼び掛ける。


「…ほっといてや。」


『…さっきの土方さ「言わなくてええ」ちゃんと聞いてよ。』


丞「告白しとったんやろ。聞いとったから知っとるわ。」


『誤解だよ。土方さんをからかってただけ。』


丞「…隈は?」


『ごめん丞。オレは丞とは付き合えないよ。』


丞「沖田はんか?」


『え?』


丞「せやから……沖田はんと付き合うんやないんか?」


『は?』


丞「違うん?隈が振られたんは沖田はんがいるからやと、思っとたんやけど。」


『総司とは友達だよ。丞の思ってることは勘違い。』


丞「なら隈はまだ諦めなくてええんやな。」


『いや、諦めてよ。』


丞「なんでや?想うのは隈の勝手やろ。」


『…そうだけど。』


丞「ならええやん。これからがんがん攻めるさかい。覚悟してや♪」


『…とりあえず、今日は土方さんのとこで寝るから。』


丞「なんでや!久しぶりなんやから隈の部屋で寝よ。」


『……オレにしたこと忘れたの?』


丞「忘れてへんっ。あんな柔らかいくち『それ以上口にすんな。したら殺す。』…忘れてへんやろ。」


『ならわかるだろ?オレはお前と寝てるときまで気を張らないといけないなんて御免だ。』


オレは屋根から飛び降りる。


『おやすみ丞。』


丞「まだ話は終わってやんで!」


『…あんましつこいともう口利かないぞ。』


丞「……」


黙った丞を確認して、オレは壬生寺を出ると真っ直ぐに土方さんの部屋に向かった。


歳「…山崎とは話できたのか?」


土方さんはまだ書き物をしていた。


『うん。諦めない言われた。』


歳「山崎らしいな。」


『どうしてオレなんでしょうね?』


歳「知らねえな。俺はお前は綺麗だと思うが、パッと見男にしか見えねえし。」


『ああ、それはここにいる皆そうだと思います。ほら、初めてオレがここに来たとき、女だと言ったら皆驚いたじゃないですか。それに、いまだにバレてないし。』


歳「そういやぁそうだな。」


『ま、話はとりあえず済んだんですが、ここで寝ることは変わらないので、部屋から布団持ってくる。』


オレは自室に向かう。


丞「光、ここで寝る気になったん?」


部屋に行くと既に丞は戻ってきており、キラキラした瞳で問われる。


『いや、布団とりきただけだから。』


丞「…そうなんや…」


『じゃ』


オレは落ち込んでいる丞を無視して、布団を抱えて、部屋を出た。



『それじゃあ土方さん。』


歳「なんだ?」


『オレも少し仕事手伝うので早めに寝てください。』


オレが布団を抱えて戻ってきて文机の上を見ると、全くと言っていいほど減らない書類の山。


オレは自ら手伝うことを申し出てみたのだ。


歳「そんじゃあ、そこらじゅうに落ちてる紙をいるのといらないのとわけといてくれ。」


『はーい。』


オレは言われた通りに紙をわけていく。


『…終わったよ。』


数分後にはわけ終わり土方さんに声をかけた。


歳「早いな。」


『他にすることは?』


歳「寝ろ。」


『…は?』


歳「お前、明日からまた仕事すんだろ?」


『まあ。』


歳「疲れてんだろ。だから早く寝ろ。」


『…土方さんの気遣いは嬉しいが、却下する。オレが人の部屋で部屋主よりも先に寝る図々しい奴にしたいわけなら別だけど?』


ほぼ息継ぎすることなく、言い切ってやる。


歳「…はあぁぁ…わかったわかった。俺も寝ればいいんだな?もう少し待ってろ。」


そう言って土方さんはオレの頭にポンポンと手をのせてから、仕事を再開する。


〔子供扱いされたのは気のせいか?〕


オレは思いながらも、土方さんが仕事が終わるまでボーっとしていたが、段々瞼が重くなり、そのまま意識を手放した…

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