☆拾壱
明里さんの話し方がメチャクチャです!
すみません
* 拾壱 *
池田屋事変の次の日。
オレは土方さんの部屋を訪れていた。
そこには幹部も揃っている。オレが最初に此処に来たときの人達だ。
歳「…で、なんでてめぇは池田屋にきた?」
『沖田さんが熱中症で倒れることを忘れてたからです。』
オレは考えていたことを、そのまま口にする。
歳「総司、今はもう大丈夫なんだな?」
総「見てわかりません?この通り、ぴんぴんしてますよ♪」
歳「…はぁ…次だ。お前は人を殺したのは2回目だと言った。いつだ?いつ殺した?」
『6歳の時です。
母を殺した男を殺したんです。』
総「光さんは母親がいないんですね…」
部屋の空気が重くなる。
『母がいないことには慣れたんで、そんなしんみりしないでくださいよ。
今だって、過去にいて父さえいないんですから。それに今は皆さんがオレの家族です!!』
近「嬉しいこと言ってくれるね。」
近藤さんが涙ぐむ。
山「おや、なんで泣くんですか近藤君。」
眼鏡をかけ直しながら、近藤さんに懐にあった手拭いを渡す、山南さん。
近「ありがとう山南さん。」
手拭いを受け取り、涙をふく近藤さんを暖かい眼差しで皆が見る。
近「すまん、話を戻してくれ歳。」
歳「ああ。光、薬のことを話しとけ。実際に治った奴がいるんだからよ。」
山南さんをちらっと見る土方さん。
山「やっぱり、気づいていましたか。
何故か昨日の深夜から、動くようになったんですよ。その少し前、腕が痛みましたが。
原因がわからなかったのは、気づかないうちに薬を飲まされていたからなんですね。」
『すみません、勝手なことをしてしまって。』
山「そんなことないですよ。これで私も、皆さんと戦うことができますから。」
山南さんは、にっこり笑う。
『山南さんに飲ませた薬は、その場で死ぬような傷以外は治すことが可能です。
ですが、酷い怪我ほど治るのを早めるので、3日ほど苦しむことになります。』
永「どんな怪我でもか。病は治せるのか?」
『病も治せるそうです。病の場合、例え死病と言われても治るそうです。』
原「便利だな!」
『…そうですね。だからといって、怪我をして、やたらと薬を飲むのはやめてくださいね…とくに3馬鹿は。』
平「何でオレ達をみんだよ!」
総「光さんは、貴方達を3馬鹿だと思ってるみたいですね。まぁ…僕も思ってますけど♪」
原「酷くねぇか?」
一「…本当のことだ。否定はできぬな。」
永「斎藤まで…」
3人は部屋の隅で体育座りを始める。
そして何故かキノコが生えてきた。
歳「てめぇら!俺の部屋でキノコを栽培するなあぁぁぁ!!」
土方さんが怒鳴る。
〔…こんな日常が続くようにしないとな…〕
オレは、3馬鹿が刀を抜いた土方さんに、追いかけられている姿を見て微笑む。
その様子を見ていた、山南と近藤が目を合わせ、微笑んでいたことを、光は知らないだろう。
池田屋事変から数日後。
会津藩に活躍を認められ、少しばかりお金を貰った。池田屋の打ち上げとして、試衛館にいた頃からの幹部全員で、島原に行くことになった。そして何故かオレもだ。
近「光さんも活躍したんだ。参加しないでどうするんだい。」
近藤さんに言われきたはいいが…
〔なんだこれ…〕
土方さんの元に遊女達は集まり、原田さんは酔って腹躍りを始めている。
そのまわりで、平助と永倉さんが呑みくらべをしている。
?「あのぅ…あんたさんは呑まへんの?」
1人の綺麗な遊女が徳利を持って近づいてきた。
『あ、オレは呑まないんです。』
山「明里、彼はいいんだよ。」
明「山南はん。」
明里さんは山南さんを見て、頬を染める。
〔明里…明里!〕
『明里さんは山南さんの恋仲ですね♪』
山「光さん…何もそんな大声で言わなくても…」
明「何でわかったんや?」
さらに頬を染め、聞いてくる。
『わかりやすいんですよ。多分、土方さんあたりは気づいて…ないな…』
土方さんの方を見ると、既に無言で近藤さんに、お酒をついでいる。
山「まぁ…私はばれても構いませんが。」
明「…そやな。これから女同士、仲ようしてな。名聞いてもええ?」
『…名は光です。オレが女だって何でわかったんです?今までばれなかったのに。』
明「女の勘や。」
『ん…─わかりやすくなったのか?今度から気をつければいいか。これから宜しゅう頼んます、明里はん。』
最後は芸子風に言ってみる。明里さんは笑いながら
明「こちらこそ宜しゅうな。」
と、言ってくれる。
明「…なぁなぁ、山南はんのこと教えてくれへん?」
いきなり小声で話し出す。
『オレより、明里さんのほうが山南さんのこと、知ってますよ。』
オレも小声で話す。
明「それがなぁ…山南はん、屯所でのことあんま話せへんのよ。」
『そうなんですか…ですが、本人に直接聞いたほうがいいですよ。明里さんが本当に知りたいなら、恋仲なんですから教えてくれますよ、きっと。』
明「…そやな。山南はんに直接聞いたほうがええな。それやったら、光はんの話してくれへん?初めて会うんやから。」
『いいですけど…』
明「そんなら、はよう話してや。」
総「僕も聞きたいです♪」
『あれ?沖田さん、一はどうしたんです?さっきまで、一緒に呑んでたよな。』
総「一君ならあそこにいますよ。」
沖田さんが指差すほうを見ると、平助達に絡まれていた。
平「ぎゃははは…な、左之さんの腹躍り、面白いだろ!!」
一「…ああ…そうだな…」
永「斎藤、呑んでるか!ほら、もっと呑め!!」
一「…ああ。」
そんな会話が聞こえてくる。
『一は大丈夫そうだな。』
総「僕も聞いてもいいですよね?」
『構いません。何が聞きたいですか?』
明「うちは、今までいた恋仲のこととかがいいんやけど。」
『すみません、恋仲はいたことないです。』
明「そうなんや。意外やなぁ。光はん、綺麗やからいたことあると、思うとったわ。」
『恋より、剣道のほうが大事でしたから。』
明「恋より、剣道なんやな。かわっとるなぁ光はんは。」
『よく言われました。』
もといた時代を思いだし、苦笑しながら言う。
総「僕は今、好きな人がいるか知りたいです!!」
『ん…─新選組の皆さんですかね。』
明「ふふ…そういう意味にとったんか。
沖田はんが言いたいのは、恋愛としてやで。
な、沖田はん。」
総「はい。」
『恋愛としてはいないです。』
総「そうなんですか♪」
『はい。他に聞きたいことありますか?』
明「うーん…うちは光はんが新選組にいるかを知りたいなぁ。」
『成り行きですかね。斎藤さんに捕まり、沖田さんに引きずられ、新選組屯所につき、隊士になりました。
隊士といっても、主にご飯作りが多いですけど。』
総「光さんのご飯美味しいんですよ。」
明「うちも今度食べたいなぁ。」
『普通ですよ。』
総「本当に美味しいですって!次の質問でーす♪光さんはどうしてそんなに強いんですか?」
『どうしてだ?ただ、普通に稽古してただけだけど。』
総「僕も稽古をさぼらずにやれば、光さんより強くなれますかね?」
明「沖田はんより、強いんか。女なのに凄いどすなぁ。」
『強いのに女も男も関係ないと思います。
女にも女の強さがありますから。』
明「…光はんは面白い子やなぁ。
うちの妹にならへん?」
『明里さんの妹ですか。明里さんみたいに綺麗な姉は、オレには勿体ないです。』
明「十分光はんも綺麗やて。な、沖田はん。」
総「っ//はい!!」
『お世辞はいいです。』
総「お世辞じゃないですよ。」
山「そろそろ、私も明里と話したいんだが。」
『すみません、山南さん。明里さんはお返しします。』
山南さんに言われ、長々と話していたことに気づく。
山「ありがとう。明里、私と話をしてくれるかい?」
明「もちろんええどす。」
山南さんは明里さんを連れて部屋を出ていく。
それから暫くたつと、
近「そろそろ帰るとしよう。」
近藤さんの言葉にそれぞれ立ち上がる。
が、土方さんや3馬鹿は寝てしまっている。
近「仕方ない、私が歳を運ぶからあとは誰か運んでくれ。」
一「仕方ない…俺と総司で左之を。光…平助を頼めるか?」
『ああ。永倉さんはどうすんだ?』
一「山崎…」
シュタ
丞「隈が運ぶんやな。」
『丞は宴に参加しなかったんだ。』
丞「隈は監察方やで。皆と一緒に騒いで、もしものことがあったらどないするねん。
これは光にも言えるんやで。一応、監察方なんやから。」
『そうだよな、ごめん。次からは気をつける。』
丞「…隈は先に屯所に戻るで。」
丞は永倉さんを担ぎ、部屋から出ていく。
一「光、行くぞ。」
一に言われ、急いで平助をおぶり、一の後についていく。
島原を出る前、明里さんに会った。
『山南さんはどうしたんです?』
明「うちが光はんの話ばかりしとったら、ぐれてしもうて。先に屯所に帰ってもうた。」
『オレの話ですか…山南さんもぐれることがあるんですね。』
そんな話をしている頃、先に屯所に帰った山南は、灯りをつけないで、真っ暗な自室で何かを作っていた。
山「フフ…できました…」
そんなことを言う山南の手には…何やら怪しい小瓶が光っていた…