☆拾
** 拾 **
丞「光、光起きぃ。
土方はんが呼んでるで?」
丞の声が聞こえると同時に、物凄く揺さぶられる。
『んー…わかった。行くよ…』
丞「ねむそうやなぁ。
隈、ちゃんと伝えたで。」
丞はそれだけ言うと、天井に行ってしまう。
〔そういえば…幹部も集めるんだっけ。
早くいかないと怒られそうだな…〕
オレは欠伸をしながら、近藤さんの部屋に向かい、
『入りましたぁ。』
障子を開けてから言うと、さっきと同じ場所に座る。
歳「開ける前に声をかけやがれ!!」
『もう済んだことじゃないですかぁ。いちいち言わないでくださいよ。眉間の皺増えますよ?』
歳「てめぇ…誰のせいだ!!」
近「まぁまぁ歳、これで全員揃ったぞ。」
『オレが最後ですか。』
歳「そうだ……話にはいるぞ。
長州が会合を行う場所がわかった。
可能性として池田屋と四国屋がうかんだ。動ける奴等を3つにわける。屯所の守備もあるからな。」
山「それでは、私は屯所に残ります。この腕では剣を持つのも、ままならないですか ら。」
山南さんが苦笑しながら言う。
〔あ…神様に貰った薬、忘れてた。〕
山南さんの怪我で思いだし、あとで土方さんに言うことが増えてしまう。
歳「夕餉のときに、誰がどこの場所か教える。出動は亥の刻だ。応援として、会津潘に知らせる。今のうちに準備しとけ。いいな!!」
幹「「「「はい!!」」」」
幹部達は解散する。
オレは残り、幹部達が居なくなるのを待ち、土方さんに話をきりだす。
『土方さん、話があります。』
歳「なんだよ、いきなり改まって?気色わりぃ。明日は槍でも降るのか?」
『気色悪いって…酷くないか?
…土方さん、今から真面目な話をします。
……多分、歴史を大きく変えることになります。』
歳「話せ。」
土方さんの眉間の皺が深くなる。
『…まず、山南さんの腕の怪我は治すことができます。』
歳「それは無理だろ。山南さん本人が
「治らない。」
って言ってんだからよ。」
『土方さん、少し待っててもらえますか?すぐ戻ります。』
オレは廊下を走り、部屋に戻る。
そして、神様から貰った薬を持ち、土方さんのもとへと急ぐ。
『土方さん、お待たせしました。』
歳「あぁ…で?」
『…これなら、山南さんの怪我を治せるんです。』
歳「何だ?その白い粒は。」
『これは錠薬です。粉薬を固めたものですかね。』
歳「未来の薬なのか?」
『違います。神様から貰った薬です。』
歳「神様から?」
『はい。これがあれば、即死するような傷以外は治せるそうです。
山南さんに飲ませる場合は、粉にして何かに混ぜる。そうしたほうがいいでしょう。
直接渡すのは問題がありますので。』
歳「そうか…薬はお前に任せる。」
『もともと、そのつもりです。
まだまだ、今回のことやこれからのことで、怪我人と死者がでるので。』
歳「……今、さらっと重大なこと言わなかったか?」
『あ、死者がでるってことですか?』
歳「そうだ。」
土方さんは一瞬、顔を歪ませたが、すぐに険しくなる。
『…その事ですが…今回も3人死者がでます。
教える条件として、その3人は、はずして屯所の警護にまわすことを、約束してください。』
歳「…わかった。誰だ?」
『安藤早太郎,奥沢栄助,新田革左衛門です。この内2人は大怪我をし、1ヶ月後亡くなってます。もう1人はその日に亡くなってます。』
歳「わかった。」
『それからもう1つ。今回のことは、
[池田屋事変]
と呼ばれるようになります。
場所は池田屋です!!2つにわければ、いいかと。』
歳「確かなんだな。」
『はい。』
歳「…よし、お前も一緒に決めやがれ。」
『オレがですか?』
歳「ああ。2つにわけんだろ。」
『はい。』
歳「今、決まってるのをとりあえず、書き出すぞ。」
土方さんは机に向かい、暫くして2枚の紙を渡してきた。
[屯所待機
山南さん,安藤,奥沢,新田,山野,尾形]
[池田屋
近藤さん,俺,総司,新八,平助,浅野,万太郎]
と、書かれている。
『これは決定ですか?』
歳「ああ、それ以外はお前が決めろ。」
『それじゃぁ…』
土方さんに筆を借り、付け足していく。
[屯所待機
山南さん,安藤,奥沢,新田,山野,尾形,蔵之助,柳田,雅次郎,弥四郎,源さん,谷さん,伊木,周平,木内,葛山,三品,篠塚,中村,原田さん,宿院,河合,酒井,松本,竹内,川島]
[池田屋
近藤さん,俺,総司,新八,平助,浅野,万太郎,丞,武田,一,林,蟻通]
『これでどうですか?』
土方さんに紙を渡す。
歳「やたら待機組が多くねぇか?」
『大丈夫です。
もともと、池田屋に乗り込んだのは、10人で四国屋に行ったのが、23人だったんです。待機は6人でした。』
歳「……四国屋だと判断したのは『土方さんです。』…やっぱりか。」
『これでいいですよね?早くしないと時間ありませんけど。』
歳「…これでいく。」
平「土方さん、夕餉できたよ。」
障子ごしに、平助の声が聞こえる。
歳「今、行く。」
『平助、一緒に行こう。』
平「何で光が土方さんの部屋にいるの?」
『用事があったから。それより…今日はありがとな。それから、荷物運ばせてごめん!!』
平「オレは気にしてないよ。」
『それじゃぁ、オレの気が済まない。今度、お礼に何かするよ。』
平「う〜ん…じゃあ、今度試合して!」
『よし、試合な。』
平「うん!」
歳「てめぇら、何時まで俺の部屋の前で話してやがる。夕餉食いに行くんだろうが。」
後ろを振り返ると、すぐ近くに土方さんがおり、呆れたような顔をしている。
平「そうだった。急ご、光!!」
廊下を走り出す平助の後を追い、オレも走る。
その後ろを、歩く土方さん。
手にはさっきの紙を持っている。
広間につき、オレはいつも通り平助の横に座る。
広間には、風邪を引いてない隊士と、幹部しかいない。
歳「遅くなった。」
近「気にすることはない。決まったのか?」
歳「あぁ…聞け!!」
土方さんが言うと、広間に緊張が走った。
歳「幹部達には伝えたが、今日長州の会合に乗り込む。
そこで、此処にいる者を2つにわけた。
今から名を呼ばれた者は、池田屋に出動する。
近藤さん,俺,総司,斎藤,新八,平助,武田,浅野,万太郎,林,蟻通……以上だ。
残りの者は屯所で待機だ。」
総「土方さん、何で2つ何ですか?」
歳「光だ。詳しいことは、後で光に聞け。」
総「わかりました。」
歳「……異論はないな。亥の刻に出動だ。
夕餉を食ったら、門に集合しろ。」
平「はい、質問!
光も待機なの?名前呼ばれなかったけど。」
歳「……待機だ。」
『…忘れてたろ?』
歳「迷っただけだ。」
『別に構わないですけど。』
歳「…後で幹部は俺の部屋に集まってくれ。」
幹部達は頷く。
そして、夕餉を食べ始める。
暫くして、各自で動き始める。オレは呼ばれてないが、土方さんの部屋に行く。
『あれ?皆早くない?』
部屋に入ると皆揃っていた。
歳「どうしてお前は、なにも言わずに入ってくるんだ!!」
『別にいいじゃないですか。』
歳「…はぁ…もういいや。で、お前は何しにきたんだ?」
『土方さんに伝えてなかったことがあったので。ちょっといいですか?』
歳「ああ…」
オレは土方さんを連れ出し、土方さんの部屋から離れる。だが、丞は天井からついてきた。
『丞いるだろ。降りてこい。』
シュタッ
『これで話しやすい。土方さん、奥沢が死んだ原因を話して無かったんだ。そのために、丞を入れたんだけど。』
丞「隈を入れたのは光やったんか。」
『ああ。』
歳「それで?」
『奥沢達は裏口を守っていたんだ。長州の奴等が逃げないように。
だけど…斬られて、奥沢はその場で死に、2人は重症を負う。
そこに丞を配置して、ほしいんだ。隊士だったから、力の差があったのかも知れないからな。』
歳「わかった…山崎、任せたぞ。」
丞「御意!」
『オレの話は以上だ。部屋に戻ってる。』
オレは土方さん達に背を向け、部屋に行く。
部屋に入ると、神様に貰った小さいバックを取り出す。
〔誰が待機なんかするか!!〕
そう、池田屋に乗り込むための準備だ。
これは誰にも気づかれないでやる必要がある。
皆が話しているときしか、ないってことだ。
時間がたち──亥の刻少し前
歳「てめぇら準備はいいか!!」
幹・隊「「「おう!」」」
歳「この事は会津藩には報せてねぇ。片付いたら報告する!活躍しろよ!」
皆いつもより生き生きしている。
オレは平助と永倉さんの元へと行く。
『平助、これ額に巻いてから鉢金つけて。』
平「わかった!!」
『よし、永倉さんは親指の付け根に注意してください。』
永「なんかわかんねぇけど、注意しとく。」
近「それじゃぁ、行ってくる!屯所は任せたぞ。」
山「はい。いってらっしゃい。」
笑顔で見送る山南さん。
『山南さん、一緒にお茶でもどうです?』
山「いいですよ。」
『それじゃ、お茶とお茶菓子持ってきます!!』
オレはまず部屋により、土方さんに用意して貰った、饅頭を持つ。
それから、神様に貰った薬を粉にした物も持つ。
一応、味見として1つ飲んでみたが、味はなかった。
それから台所に行き、お茶を入れ、薬を入れて混ぜる。
それを山南さんの部屋まで運んだ。
『失礼します!!』
山「光さん、さて早速食べようか。」
山南さんと少し話したあと、オレは席をたつ。
『山南さん、失礼します。』
山南さんの部屋を出て、急いで部屋に戻り、バックを持って屯所を出る。
池田屋の場所は前もって聞いていたため、すぐにわかった。
池田屋に近づくと、浅葱色の羽織をきた人達が見える。土方さん達だ。
まだ亥の刻前。
亥の刻ぴったりに乗り込むつもりだろう。
そして──亥の刻
近「新選組だ!!御用改めである!!」
近藤さんの声が聞こえた。
歳「刃向かうものは斬り捨てろ!!」
次に土方さんの声が聞こえる。
主「お客さん!新選組でぎゃあぁぁぁ!!」
総「邪魔だよ。」
近「よし、総司に続けぇぇ!!」
隊・幹「「「「はい!!」」」」
キンッ
キンッ
ブスッ
?「ぎゃあぁぁぁ…」
斬りあいが始まった。
オレは、全員正面の入り口から居なくなったのを確認し、中に入る。
中は血の匂いが充満している。
?「うおぉぉぉ!!」
キィン
グサッ
?「うっ…」
バタッ
歳「ちっ…てめぇ、ぼさっとしてんじゃねぇ!
死にてぇのか…何で此処にいる!?」
『土方さん、ありがとうございます。
それと、沖田さんはやっぱり2階ですか?』
キンッ
ドスッ
?「ぐっ…」
歳「…後で聞くからな。総司は2階にいる!!」
ギンッ
グサッ
?「く、そ…」
バタッ
斬りかかってくる敵を斬りながら、浪士の返り血を浴びた土方さんが教えてくれる。
『はい!!』
オレは返事をし、急いで2階にあがる。
キンッ
ギンッ
キンッ
あちこちで刀が交じりあう音。
そのたびに聞こえる、浪士の呻き声。
今のところ、此方に負傷者はいないようだ。
永「平助、危ねぇ!!」
永倉さんの声が聞こえ、一度足を止め振り返る。
キィン
ギンッ
?「くっ…」
シュッ
ドスッ
バタッ
平「大丈夫だ、ぱっつあん!!」
そんな声が聞こえ、安心して止めていた足を進める。
2階では、沖田さんと…吉田栄太郎が…いや、吉田稔麿が戦っている。
稔「何?そんなもんなの?」
総「まだ、だ!!」
その言葉ともに、吉田に突っ込んでいく沖田さん。
ギンッ!!
キィン
キンッ
キィン
ギンッ
暫く刀が交じりあう。
稔「…がっかりだね。もうちょっとやると思ったんだけどな。」
キンッ!!
総「くっ…ゴホッゲホッゲホッ!!」
沖田さんは吉田と距離をとり、咳き込む。
そして…─血を吐いた─
稔「…ふーん、本調子でないんだね。でも、こっちには好都合だね♪」
1歩、また1歩と沖田さんに近づいていく。
稔「これで終わりだね。」
吉田が刀を振り上げる。
オレは床を蹴り、吉田に向かって紅蘭を抜いた。
ギンッ
『ちっ…沖田さん、大丈夫ですか!?』
オレは吉田の前で、沖田さんを庇うように立っている。
総「ちょっと、咳き、込んだだけでゴホッゲホッ…それ、より…どうして光、さんが、ここに…いるゴホッですか?」
『詳しいことは後で話します。』
稔「ねぇ…話してる場合?」
ギンッ!!
キンッ
キンッ
総「光さん、僕が、戦い、ます!」
『駄目です!!』
総「どうして、ですか…僕は、僕はまだ、戦える!!」
『知ってますよ。でもっ!!今回はおとなしくしていてくださいっ!!』
キンッ
吉田の刀を払い除ける。
ギンッ
総「…わか、りました…光さん、負け、なゴホッゲホッゲホッ…」
『オレは負けません!!だから沖田さん、もうしゃべらないでください!』
オレは沖田さんに目だけをやる。
沖田さんが小さく頷いたのを確認し、吉田に向き直る。
キィン
ギンッ
稔「君もこんなものか…沖田より強いから期待してたんだけどな。」
〔オレは…負けない!沖田さんを守る!いや…新選組を守る!!〕
ギンッ
キィン
キィン
稔「くっ…さっきより、強くなってるっ!!」
ギンッ!!
『これで終わりです!!』
ギンッ
シュッ
ブスッ
稔「まさか、君に…殺されるとはね…」
カチャ
ゴトッ
吉田の手から刀が滑り落ちる。
オレの紅蘭は吉田の腹に刺さっていた。
オレは吉田の身体から紅蘭を引き抜く。
紅蘭を振り、血を払い、鞘に納める。
『沖田さん、立てますか?』
沖田さんに近づき、手を差しのべる。
総「…はい。っ!!…光さん、目が赤くなってます!」
『すぐ戻ります。』
総「そうですか。」
沖田さんはよろよろと立ち上がる。
ドタドタ
バタバタ
2階に向かってくる複数足音。
沖田さんが刀を構える。
歳「てめぇら大丈夫か!?」
総「…なんだ、土方さんか。」
構えていた刀を鞘に納めた。
土方さんの後ろには、近藤さん,永倉さん,平助がいる。
歳「…こいつは?」
床に倒れて死んでいる死体を、指差す土方さん。
『あ、それ吉田稔麿です。』
歳「こいつを殺したのは総司か?」
総「…僕ではありませんよ。光さんです。」
歳「光が…か?」
総「はい。」
永「お前、初めて人を殺したのに平気なのか?」
『…初めてじゃないですよ。今回で2回目です。』
近「どういうことなのかな?」
『後でまとめて話します。
とりあえず、此処を出ませんか。』
歳「…そうだな。とりあえず、夜が明けるまで此処の近辺で野宿するぞ。
闇討ちにあうかもしれないからな。」
近「ああ。此方の隊士は、ほとんど怪我はしていないようだった。
後は裏口を守っている山崎君だが…」
丞「隈は大丈夫やで。」
『あれ?丞、もう浪士はいないのか?』
丞「殺さず、何人か捕まえといたで。
浪士はもう残っとらん。」
歳「ご苦労だった。
山崎、お前は先に屯所に戻り、山南さんに現状を報告してくれ。
こいつのことも忘れるなよ。どうせ、何も言わずに出てきたに違いねぇからな。」
『すみません、お願いします。』
丞「任せときぃ。」
丞は窓から屋根に登り、暗闇に消えていった。
歳「よし、俺達も此処を出るぞ。」
土方さんが階段を降りていく。その後ろをついていく。
平「なぁ…光、目ぇ赤くなってる。大丈夫なの?」
隣にいた平助が話しかけてくる。
『まだ、赤いのか。
いつもより、本気だしたからか?』
平「…光?」
『大丈夫だ。もとの色に戻る。』
平「ならいいんだ!!」
平助は自分のことのように、嬉しそうに言う。
『心配してくれてありがとな!』
平「こっちこそありがとな!
光のお陰で額斬らなくて済んだからな。」
そう言いながら、汗で濡れている手拭いを、見せてきた。
平「これがなかったら、鉢金がずれて、額真っ二つだった。」
『そんなのは当たり前だ。
未来を知っているのに、教えないのは…新選組を見捨てるのと同じだ。』
平「教えなくたって、一緒に戦えば、見捨てたことにはならないよ!
ね、ぱっつあん、総司♪」
永「おう!!たまには良いこと言うじゃねぇか、平助!!」
総「たまには、ね。」
平「たまにはって…」
平助が肩を落とす。
『ありがとな、皆!!』
オレは笑顔でお礼を述べる。
平「っ//おう!!」
歳「てめぇら話してねぇで、とっと来やがれ!!」
いつのまにか距離が開いたのか、土方さん達は既に外にいた。
オレ達は顔を見合せ、笑いながら外に出る。
『あ…きた目的忘れてた。』
オレはバックをあさり、薬と水の入った竹筒を取りだし、沖田さんに渡す。
『沖田さん、これ飲んでください。
少し苦しくなるかもしれませんが。』
総「…それ薬だよね?
何で僕が飲まないといけないのかな?」
『…兎に角、飲んでください!口移しでも、飲ませますよ!』
総「っ//自分で飲みます!!」
『それじゃ、早く飲んでください。』
総「わかってますよ…これ苦いですか?」
『あ、味はないんです。』
総「ん…あ、本当に味ないや。」
ほっとしたような声を出す沖田さん。
平「へー…味のない薬なんてあるんだ♪」
『これは、普通の薬じゃないんだ。』
歳「…この辺りで、夜が明けるまで待つぞ。
交代で見張りをする。俺が最初だ。」
土方さんはそう言い、近くの木にもたれ掛かる。
総「僕達は休みましょう。交代ならきっと起こしにきてくれますよ。」
沖田さんはそのまま、地面に仰向けで寝転ぶ。
オレもその横に寝転んだ。
平助と永倉さんは、他の隊士達の所に行った。
総「…ねぇ光さん。君は僕の病を知っていますよね?この世で死病と言われてます。」
『……。』
総「…僕はいつまで剣を持ち、近藤さんのために戦えますか?」
『いつまでも、ですよ。…さっき飲ませた薬を飲み続けることが、条件ですけど。
薬を飲むたびに、苦しくなります…それでも治したいのなら、毎日薬を飲んでください。』
総「僕は…近藤さんと戦い、死にたいです!!
そのためならなんだってしますよ!」
『やっぱり、沖田さんらしいです。
薬はオレが毎日部屋に届けます。』
総「はい!!その薬は未来の物なんですか?」
『土方さんには言いましたが…これは神様に貰った物なんです。
大抵の怪我や病は治せるそうです。』
総「便利な物ですね♪」
『…はい♪』
そのあとも、未来のことを話続けた。
──夜が明け正午になる少し前。
歳「屯所に戻るぞ!」
土方さんの声に、皆屯所に向かい、歩き出す。
隊士達は皆、返り血を浴び、凄惨な姿だった。
屯所に帰るのに、堂々と道の真ん中を歩いていく。
町人は道の端による。
屯所に帰るまえに、奉行所により浪士を引き渡す。
屯所に着いたのは正午だった。
屯所の前で待機していた隊士達と幹部が、出迎えてくれる。
山「山崎君に聞きました。此方に負傷者はいないようでよかったですよ。
…光さん、勝手な行動は本来なら許しがたいことですが、今回だけは活躍したみたいなので、許します。
次はありませんよ。」
低い声で言う山南さん。それでも、笑顔だった。
『すみませんでした!!
それからありがとうございます。』
オレはペコリと頭を下げる。
総「よかったですね♪」
平「よかったな!」
永「よかったじゃねぇか!」
近「よかったね。」
それぞれ、声をかけてくれる。
土方さんを除いて。
『はい!!』
その場が賑やかになる。
山「…フフ…お疲れ様。
おかえりなさい。」
幹・隊「「「『ただいま!!」」」』
これで───池田屋事変は幕を閉じた────