9、名前
「私の名前って犬っぽいですよね。はぁ」
私、砂田中真論――マロンです。近所の犬の前と同じなんだけど。
「いいじゃん、犬かわいーし」
にがなが煙草をすぱすぱ吸いながら慰めてくれる。犬みたいな名前と言うことは否定しないんだね……。
「マロン、二〇一一年犬の名前ランキング、女の子部門六位だね」
寝ていたレンが起き上がりいつものように解説してくれる。いつも寝ているのに、いつ情報を摂取しているのだろう。
「やっぱり、私の名前は犬なんだ……」
「ちなみに、レンは二〇一一年犬の名前ランキング、男の子部門七位。ねむい、寝る」
レンが眠りについた。
「同士!」
よかった、犬の名前は一人じゃなかったんだ。
「私は自分の名前に誇りを持っているなのですよ」
部長が新聞を書く手を止め話に加わってくる。紙に自分の名前、新井文香、と書き井と香を塗りつぶす。
新■文■。
「新聞なのです!」
それは嬉しいことなの?まあ。新聞史上主義だからね。
「そういえば、にがなの名前。冠荼って珍しいよね」
普通読み方が分からないぞ。
「そうか?」
「むにゃ、むにゃ、荼――常用漢字にも人名漢字にも含まれていないので、名付けることは不可能。むぅ」
レンが寝ながら教えてくれた。
「……偽名ですか?」
「本名だと思うんだけどなー」