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我が家は魔王一家  作者: 西臣 如
第三章 復活
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第二十七話 父さんの判断

第三章ようやく開始です。


 長い眠りについている母と紫苑を置いて、リビングに戻った萌黄たちは状況を語る鬼灯の話に耳を傾けていた。

「それで一番驚いたのはだな、あれだ。陸棲ドラゴンのジェームズとウィリアムに再会したときだ。クーデター以来どうなったのか心配だったが元気そうで何よりだったな。主である私を丸呑みにしようとしたときは……」

「ジェームズとウィリアム? 奴らまだ生きてやがったのか、さっさと逝っちまえばいいのによ」

 エリザベスは鼻を鳴らして嘲笑している。陸棲ドラゴンのことについてはよくわからないが、萌黄は状況に置いていかれないように何とかしがみ付こうと口を挟んだ。

「エリザベス知ってるの? その、陸棲ドラゴンたちのこと」

「知ってるも何も、頭に焼き付いて離れねえよあんな奴ら! ああ、思い出しただけで寒気がするぜ。しばらく地下四階に同居されたことがあんだよ。あれもこれも地球上生物の中で一番の悪党であるこの鬼灯オニズキがな!」

「その呼び方をするとは口が引き裂かれたいようだな、宇宙上生物の中で一番の生意気であるエリザベス?」

 エリザベスの体を床から引きはがそうとする鬼灯と、隙あらば猫が秘める鋭い牙で鬼灯の腕にかみつこうとしているエリザベス。隣の部屋で二人がぐっすり眠っているというのに、主と白猫は争いのボルテージを下げようとはしない。いや、むしろ上がっている。萌黄はたまらず正座している足を叩いた。

「あーもう! 母さんの前でみっともないからやるなら外でやってくれる外で!」

 萌黄の侮蔑の眼差しに、途端に一人と一匹は凍りつく。こういうとき、母親である棗の血を引いていると実感できるのだ。静まりかえった寝室に反省の意味の溜息を返して、黙りこくった二人に向いた。

「私が聞きたいのはその石のことよ。魔神の水晶って言ったっけ? それどうするつもり?」

 黄金の間で拾ってきたという家宝、魔神の水晶。今もカーペットの上で不変の輝きを放っている。流れている光の砂が揺らいでいくさまは、まるで真夜中の空に浮かぶ天の川のようだ。ぼんやり眺めていると、エリザベスを床へ放った鬼灯が掬い上げるように持ち上げた。

「適当に割って皆が適当に持てばいいだろう」

「……一つ聞くけど、適当ってどの程度が適当かわかって言ってるのよね?」

「だから適当だと言っているだろう」

 萌黄の主張など聞く耳持たずに鬼灯は魔神の水晶をじっくり鑑賞している。

「だがなんだかもったいない気がするな。この水晶の希少度はウィリアムたちを軽く上回るぞ。現界の人間には理解のできない価値が存在するのだ」

「現界の人間に理解できないのは当たり前だろうがよ。魔王一族以外は触れるどころか寄せ付けない結界を放ってるなんて言ったって誰もわかりゃしねえんだかんな。何よりお前今さらふざけたこと言うなよな。これからの身の安全性を考えればどうでもいい話だろ。わかったらさっさと割れよ。自称最強の魔王様を名乗るんならこれを破壊すんのも一瞬だろ」

 エリザベスはいつになく鋭い眼差しで鬼灯に突っかかっている。この猫の言うことはもちろん正論である。当たり前なのだが、それでも鬼灯は勿体ぶりながら水晶を人差し指でつついた。ガラスを叩いたような音と、水が波を立てる音がわずかに鳴った。

 と同時に、魔神の水晶にひびが入った。と思えばそのひびは十字架を描くように広がり、水晶はスイカを割ったように四等分された。中に入っていた液体は空気に触れた瞬間即座に薄い膜を構成し、膜は次々と厚みを増してほんのり紅く染まり水晶の一部となっていく。生物の細胞再生を大きく拡大したようだ。

 まるで生きているみたい。

 その姿に心なしか感動していると、遮るように鬼灯が半月型の水晶をひとつ差し出した。

「これはお前が持っていろ。これがひとつあれば半径一メートルの範囲に誰も近寄れまい」

「あのさ、よくよく考えればそれって他のクラスメートもあたしに近寄れなくなるってことよね? それってすっごく困るんだけど……」

 手渡されて受け取っても、萌黄は渋った声しか返せない。

「心配は要らんぞ。それに弾き出されるのは魔界生まれの人間だけだ。現界の人間には何ら影響はない」

「そうなんだ、よかった」

「これから萌黄と紫苑、それに母さんに一つずつその水晶を持っていてもらう。あともう一つは、この家の玄関あたりに置いておく。誰か余計な人間が入り込まないようにな」

「お前はどうすんだよ」

 エリザベスの光る瞳を鬼灯はしばらく眺めていた。白く長い毛を纏う彼女の顔を、耳を、手足を、尻尾を撫で回すように見ている。萌黄から見た鬼灯の目は、変態のそれではなくてただ単に全身の様子を見ているといったようだった。

「へ、変な目で見るんじゃねえよ、スケベ野郎」

「エリザベス」

「な、何だよ」

「お前あと私の魔力をどれくらい預かっている? その様子だとまだ全部私に返していないだろう」

「……確かに、まだお前の魔力の四分の一はあたいが預かってるぜ。返せってか? 言っとくけどまだ返す気はないぜ。いや、もうお前に返す気はねえよ。あたいは今の生活が一番性にあってるんだ」

「いや、構わん。輝く魔水から魔力を吸収しておいたからな、四分の一欠けたところで私の力は相違ない。だがその代わり、お前には重大な責務を果たしてもらう。これからしばらく……この家を頼むぞ」



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