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盤上の春風~加古川、四人の歩み~  作者: 明石竜


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第六章 将棋と私たち

夏休みの終わり、みんなで、さくらの家に集まった。

今日は花火の日だ。

加古川では現在、大規模な花火大会は行われておらず、市内数か所で十五分ほどの花火が打ちあがる、小さな催しになっている。

だから河川敷に出るより、家から眺めるほうがゆっくり出来るのだと、さくらは言っていた。


それでも、せっかくの花火の日。

お祭り気分くらいは味わいたいよね、と陽菜が提案して、みんなで浴衣を着ることになった。

 浴衣姿の私たちは、二階のベランダに並ぶ。


「ちゃんと帯、結べてる?」

「大丈夫やって。さくらもかわええで」

「そっ、そうかなぁ?」

そんなやりとりをしながら、遠くの河川敷を見つめる。

遠く、加古川の河川敷のほうが、少しだけ明るい。

「始まるよ」

さくらが小さくつぶやいた。


次の瞬間、夜空に一輪、光が咲いた。


どん、と遅れて届く音。

川の向こうに広がる花火は、決して大きくはないけれど、どこか親しみのある輝きだった。

「なんか、ちょうどええな」

陽菜がにっこりと笑う。

人混みもなく、風に吹かれながら、

四人だけで同じ空を見上げる。

その静けさが、今の私たちにはぴったりだった。


「そういえば、わたしたちが将棋を始めてから、もう四ヶ月になるね」

「早いね。私、最初はルールも知らなかったのに」

「今でも下手だけどね」

 陽菜が笑うと、みんなも笑った。

「でも、強くなることが目的じゃないから、いいんだよね」

 理沙微笑みながら言う。

「そうそう。私たちは、楽しむために将棋を指してるんだから」

「将棋って不思議だよね。盤の上では相手と戦ってるけど、終わったら友達になれる」

 さくらの言葉に、みんなが静かに頷いた。

 絶え間なく上がり続ける花火。大輪の花が夜空に咲く。

「きれい……」

 みんなで並んで、花火を見上げた。

「なんか、将棋の駒みたい」

 陽菜が言った。

「花火が?」

「うん。打ち上げ花火は派手で目立つけど、一瞬で消える。でも、その一瞬がすごく美しい。将棋も、一局一局は終わっちゃうけど、その時間が大切なんだよね」

「詩的だね、陽菜」

 理沙が笑った。

「私、最近思うんだけど、将棋盤の上では、みんな平等なんだよね。駒の強さは決まってるけど、どう使うかは自分次第。人生みたい」

「確かに。わたしたちも、それぞれ得意なことは違うけど、みんな大切な仲間だもんね」

 さくらが言った。

「将棋を通じて、わたくしたち仲良くなれたね」

 理沙がそう言うと、陽菜が笑ってこう言う。

「これからも、ずっと一緒に将棋を楽しもうや」

「「「うん!」」」

 花火の音に負けないくらいの大きな声で、他のみんなは答えた。

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