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盤上の春風~加古川、四人の歩み~  作者: 明石竜


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第三章 ニッケパークタウンで過ごす休日

五月の連休明け、

「ねえねえ、今度の土曜日、みんなでニッケ行かない? たまには将棋以外の話もしたいし」

「いいね! あそこ、お店もたくさんあるし、フードコートも充実してるよね」

 陽菜の誘いに、さくらが嬉しそうに乗った。


 土曜日、加古川駅で待ち合わせた私たち四人は、徒歩でニッケパークタウンへ向かった。駅から歩いて七分ほどの距離だ。

「やっぱり近くて便利だよね」

 休日ということもあって、家族連れやカップルで賑わっていた。

「まずはお昼ご飯を食べよう。何にする?」

 私がこう提案すると、

「加古川といえば、かつめしでしょ!」

 陽菜は即、こう主張した。その言葉に、みんなが賛成した。フードコートへ向かい、四人でかつめしを注文する。

 運ばれてきたお皿には、ご飯の上にビーフカツ、そして甘辛いデミグラスソース。加古川のソウルフードだ。

みんなの分のかつめしがテーブルに揃うまでじっと待つ。

湯気の立つ皿を前にしても、誰も手を付けない。

待っている間、私はスマホを取り出した。

「ちょっと写真撮っていい?」

「わたしも撮る」

さくらも隣でスマホを構える。


つやつやしたデミグラスソース。

こんがり揚がったビーフカツ。

キャベツの白が少しだけ混じる、茶色い景色。


「はい、これ絶対うまいやつ」

 陽菜はすでにナイフとフォークを手に、戦闘態勢だ。

「まだやで」

 理沙が笑う。


みんなの分が揃うと、声を揃えて、

「いただきます!」


 真っ先に箸を伸ばしたのは、やっぱり陽菜だった。

「いただきます言うたで?」

そう言いながら、ナイフとフォークでカツを手際よく切り分ける。

たっぷりのソースを絡めて、ぱくり。

「んー! やっぱこれやわ! かつめしって、明石でもコンビニやスーパーで

たまに見かけるけど、本場はちゃうね♪」

陽菜は口いっぱいに頬張ったまま、親指を立てた。

三人が思わず笑う。

「はや」

「待つのは待つけど、食べるのは早いよね」

 さくらと私は思わず突っ込む。


「このソース、癖になるわね」

 理沙はソースで口元を汚さないように、ナプキンを添えながら上品に味わっている。

 食事をしながら、将棋の話になった。

「最近、私、歩の使い方が少しわかってきた気がする」

 私が言うと、陽菜が笑った。

「わかる! 最初は地味だと思ってたけど、歩って大事だよね」

「将棋って、駒の個性があって面白いよね。飛車や角みたいな派手なのも、歩みたいな地道なのも、みんな必要なんだって思う」

 理沙の言葉に、さくらが頷いた。

「わたしたち四人も、性格バラバラだけど、それがいいのかもね」

「そういえばさぁ」

 陽菜がジュースのストローをくるくる回しながら言った。

「加古川駅前に将棋盤つきのベンチあるやん? 駒持って行ったら、ほんまに指せるらしいで」

「ええ、知っていますわ。わたくし、一度見かけました」

 理沙は静かに頷く。

「観光用かと思っておりましたけれど、実際に対局している方もいらっしゃいました」


「……そんなにすごいことやったんや」

 私は少し照れくさくなる。地元すぎて、特別だと思ったこともなかった。

さくらが思い出したように続けた。

「このニッケのセンタープラザでも、たまに将棋のイベントやってるよ。プロ棋士がゲストで来ることもあるんやって」

「うち、それ行ってみたい!」

 加古川では、将棋は特別な趣味というより、街の風景の一部なのかもしれなかった。


 食後は、ショッピングセンター内を散策した。雑貨店を見たり、ファッションフロアで洋服を眺めたり。高校生にとって、ウィンドウショッピングも楽しい時間だ。

「将棋の本、見てみようよ!」

 陽菜の提案で、みんなで書店に入った。趣味の棚には、将棋の入門書がずらりと並んでいる。

「うわ、こんなにあるんだ」

「この『女子のための将棋入門』って本、わかりやすそう」

 理沙が手に取った本を、四人で覗き込んだ。イラストが可愛くて、説明も丁寧だ。

「買おうよ、部室に置いておこう」

 一冊の本を四人で購入して、カフェでケーキを食べながらページをめくった。

「へえ、囲いっていう守り方があるんだ」

「矢倉、美濃囲い……かっこいい名前」

 将棋の本を読んでいると、窓の外では夕日が傾き始めていた。

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