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優しさに触れて。

「やっほー空月。3日ぶり」

水やりをしているとツキがひょっこり顔を出してきた。

「ど、どうも」

「お、芽出てるんだね」

種を植えた場所からぴょこぴょこと芽が顔を出している。

「これ何育ててるの?」

「トマトです」

両親と共に育てたトマトを1部種を乾燥させ、それを撒いた。このトマトが育てば猫缶生活も終わるだろう。トマトを売ることができれば少しは楽になるはず。

「いいね。あ、そうだ。これ持ってきたんだけど食べる?」

彼女の手の中に小さなおにぎりがひとつ。

それを僕に差し出してくる。

「いいの?」

「うん。こんなちっちゃいのしか持ってこれなくてごめんね。」

「そんなこと言わないでよ、ありがとう!いただきます!」

僕は久々のお米の味を噛み締める。

本当に美味しい。美味しくて美味しくて、気づけば涙が溢れ出していた。両親と一緒に楽しく食事をした日々を思い出してしまった。

母さんの隣でいつもご飯の準備を手伝った。

畑で採れた野菜をサラダにして、味噌汁は暖かく優しい味、ご飯はお焦げがついてて美味しかった。

裕福とは言えぬ家だったかもしれない、今着ている父さんのお下がりの服はだぼだぼで、父さんはごめんななんて謝っていたけれどそんなこと気にせず、袖を巻くって一緒に畑仕事をした。

もう二度とあの頃には戻れない。その事実が苦しくて辛くて仕方がない。

ツキはそんな僕を優しく抱き寄せて頭を撫で始めた。

「大丈夫だよ。あたしは味方だから」

痣だらけの女の子。きっと僕なんかよりよっぽど苦しい日々を送っているに違いない。なのに、どうしてこんなにも優しくするのだろうか。

「美味しい、美味しいよ」

「よしよし、大丈夫大丈夫。」

ずっと優しく撫でてくれる。僕の姿を見ても恐れず、ひとりの人間として接してくれる。

「あたしがいるから大丈夫!ほら、元気だして」

「うん、ありがとう」

ツキがいてくれると、なんだか嬉しい。生きててもいいのかなって考える。醜い姿を晒しても大丈夫な相手。初めてだ、こんなことは。

「僕のこと、こわくないの?」

「なんで?怖くないよ。君は泣き虫でかわいいところあるし」

ツキはすぐにそんなことを言う。強いな、この子。

どれだけ痣だらけになっていても僕にそんな言葉をかけて、太陽のような笑顔をする。

「ありがとう、ツキ」





辺りが静まり返る暗い時間。

「おい、飯は?」

「今作ってる」

「早くしろよ」

「はい」

無心で包丁を握り肉を切る。

早く作らなければまた殴られる苦しい時間。

昼間の楽しい時間とは裏腹にあたしは感情を押し殺した。機嫌を損ねてはいけない。恐怖で震えそうになる手足を無理やり動かしてせっせと料理を完成させる。

(…ご飯、少しだけ増やしたけどバレないよね)

内心ヒヤヒヤしながらも、自分のため、あの子のために、生きるために増やした。大丈夫、大丈夫だと言い聞かせて。

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