光あれば闇もある
幸にも2階にいたことで、シオンが輝いていた事はほとんど見られていなかった。それより女神像が輝いた事で騒ぎになっていたのだ。
「シオン、すぐに移動するよ!」
「えっ、うん」
シオンは女神像が光っていた事や自分自身が光っていた事に気付いてなかったのだ。ジークに連れられて、騒ぎになっていた大聖堂を後にした。そして裏路地に逃げ込み一息ついた。
「いったい何があったの?」
「気付いてないのか?シオンと女神像が光ったんだよ」
!?
「ウソッ!私、光ってたの?」
「うん、だから慌てて連れ出したんだ。2階だったし、女神像にみんな意識がいってたから大丈夫だと思うけど、念のため顔は隠した方がいいかな?」
歩きながら服屋を探してフード付きのローブを買った。
「これですぐにはバレないと思うよ」
「ありがとう。でも身体が光っただけで大袈裟じゃない?」
何もわかっていないシオンにジークはまた頭が痛くなった。
「シオン、よく考えて見てくれ。女神像と一緒に光っている人物がいたらどう思う?」
「何か関係があると思うね」
「うん、そしてここは宗教国家だ。何か女神様の啓示かと思われるんだよ」
ふむふむ?
「女神様から直接、啓示またはお言葉を貰える者を人は『聖女』と呼ぶ」
ふむふむ。だから?
「聖女に認定されると教会に囲い込まれるんだ。言葉を悪く言うと軟禁だな。良い言葉で、教会が聖女を厳重に守ってくれる。どこにも行けなくなるから旅もここまでになってしまうよ」
!?
「それは困るよ!!!」
「だから顔を隠したんだ。OK?」
「はい!OKです!理解しました!」
シオンはビシッと敬礼して答えた。
「それじゃ街の観光を再開しようか」
「うん!」
シオンとジークは楽しい時間を過ごした。
「ねぇ、あの建物に行ってみよう!」
シオン達は図書館に入った。
この世界で図書館がある国は珍しい。識字率が低いのと貴族ぐらいしか本を読まないからだ。しかしこのオラクル聖王国は聖典を読む習慣があり、信徒は文字を勉強するので識字率が高い国なのだ。それに伴って、書物も発達した経緯がある。まだ庶民には高いので図書館で少しの入場料を払い、多くの書物を読むのである。
(この図書館は入館のお金を払えば閉館までずっといられるのである)
「凄いね!」
「ああ、ここまで多くの書物があるなんて圧倒されるな」
特に読みたい本がある訳ではないが、観光名所の一つとして色々と見て回った。
そして女神様についての書物を見つけて、軽く目を通した。
「へぇ~こんな感じで伝わっているんだ」
「さっきの神々しい光は本当に女神様の神託だったの?」
シオンは返答に困った。全てを話す訳にもいかず曖昧に頷いた。
「特に神託はなかったよ。ただ私の前世でトラブルがあって謝られただけ」
『前世って何!?』
ジークは首を傾げるばかりであった。
そしてその夜──
???
「昼間、女神像が輝いたと言うのは間違いないのだな?」
「はい。多くの信者や神官が目撃しております」
「それと、まだ未確認なのですが、女神像の他に10代の少女も輝いていたと情報があります。2階にいたので目撃者が少ないのですが・・」
!?
「それが本当なら使えるな」
「ええ、今の聖女は扱い難いですからな。清貧を尊ぶなどといってお布施を減らし、今までのお布施の使い道の調査まで始める始末だ」
「忌々しい」
部屋にいた多くの者が頷いた。
「しかし、新たな神託を受けた聖女が現れれば話は変わる。どうせ平民の小娘だ。甘い言葉で言いくるめて、少し贅沢をさせれば我々の思い通りに動いてくれるだろう」
「そうすれば、現在の聖女を偽物と断罪して追放できますな」
「そうだ。聖女本人が騙されていると思わなければ女神様も関与しないだろう」
「我々の贅沢な暮らしの為にせいぜい広告等として働いてもらうとしよう。おい!早急に神託の啓示を受けた少女を探し出すのだ!」
『はい。我々にお任せ下さい』
誰もいないが影から声が聞こえた。
「『影』よ、いつもの手はず通りに動くのだ」
『心得ております』
すると声は聞こえなくなった。
「これで問題はない」
「しかし『また』教皇様に知られるとまずいですな」
「案ずるな。教皇様ももうお年だ。ろくに動くことなどできんよ」
「それもそうですな」
不快な笑い声が響きわたるのだった。




